森がなんかおかしくなるって話です。
「いやー。それにしても皆、凄い変わりようだな」
シュナショック(リグルドショックの亜種)から復帰を果たした残りの
「それもこれも全て、リムル様が我らに名を与えてくださったおかげです」
俺を持ち上げる発言をしてくれたのは、紅蓮の炎のような髪色の美男子
大柄な体躯だったはずなのに、一回り小さい身長180cm程度になったが、その内に秘めた
が、それより気になるのが、その全体的な造形である。
シュナと同じ一対の角は黄色く染まり、体色の大半が赤か黄色か黒で占められた何とも攻撃的な印象を覚える魔人へと変貌していたのだ。
これは……アレだ。
現在のシュナを
兄妹揃って立派な翅を生やしている辺り、間違いない。
「リムル様に付けていただいた名前、とても気に入っています!」
オーガの女性は進化する前も美人さんだったのだが、進化したらより凄まじい美人さんになったのだ。
紫の
紫の瞳が真っ直ぐに俺を見つめている。
が、そんな彼女もまた、割と無視できない劇的な変貌を遂げていたのだ。
背中から真っ直ぐ伸びる二対の翅、黒と黄色入り混じる体色、そして何より、その瞳を保護するように生成されたゴーグル状の蟲の゙複眼……。
ぶっちゃけね、その法則性が見えてきたワケよ。
ゴジラ映画にも出てたよね。ヤゴの怪獣が。
それを進化させてトンボになったってか?
いや……こいつは〝
とはいえ身長は170cmくらいで、モデルの様にスラリとした美人さんでもあった。
俺の秘書になってほしい。心からそう思った。
「ホッホッ……名を与えられたおかげで、全盛期に立ち返ったようですぞ。今度は刀を取られるような不覚は取りますまい」
「あんま言うなって
俺の背後で穏やかに笑う
最初に会った時の肉体年齢を九十歳前後と仮定した場合、進化した現在の状態は六十歳前後と言ったところか。
そしてこの爺さんも例に漏れず、少なくない変貌を遂げていた。
曰く、長年愛用していた仕込み刀が肉体と一体化してしまったらしく、さながら
これはハクロウの意思で簡単に取り外しが出来るようだが、言ってしまえばそれくらいしか特筆すべき点が無い。
しかし、その身こなしは全くもって油断できない。
純粋な戦闘技術では、他の五人の追随を許さないだろう。
「〝
そう言って音もなく近付いてきたのは
ベニマルとは同年代で、浅黒い肌に青黒い髪、雰囲気の違う美丈夫で、190cmの長身だった。
青い瞳がよく似合っている……が、こいつの変貌が俺的には一番衝撃的だった。
額にいくつもの複眼を光らせ、その背中から
……うん、そういう蜘蛛の怪獣もいたよね。
っていうかウネウネ動かすんじゃない!気持ち悪いぞ!
「ん、
「あぁ。ヤツはカイジン殿の工房に入り浸ってて……」
「おぉ!お待たせして申し訳ないだよリムル様!」
逆にお前は何で変わってないんだクロベエ……?
皆、大なり小なり蟲っぽい意匠があるっつーのに、お前は全く変わらないなクロベエ。
そういう変わらないところが好きだぜクロベエ。
「仲良くしようなクロベエ!」
「んだ!」
……以上が、俺ことリムルが名付けた五人のオーガだ。
魔素をごっそり持っていかれたが、気絶するほどではなかったため良しとする。
……六人全員だったらヤバかったかもな。
そして問題の
「……兄貴分の幼馴染が出稼ぎに行っているのか。その後の足取りは掴めているのか?」
「いいえ。私どもはオークの軍勢に追われ、あに様に構う余裕すらありませんでしたから……」
「尊敬しているんだな。そのあに様を」
「はい!いずれハクロウを超える実力者になると皆から期待された、自慢のあに様です!」
シュナの名付けをしたのがレイタロウさんだったためか、その進化度合はハッキリ行って六人の中で随一である。
正直、ベニマルですら比較にならない。
《告。個体名シュナに
真理究明:対象の組成や原理を観察し瞬時に把握することが出来る。観察対象は物品や生物のみに留まらず、事象や概念にまで及ぶ。
一度でも観察対象として選んだ存在に対する解析は、完了することはあっても完結することはなく、常にこのスキルの所有者にとっての最適解を導き出すために休まず稼働し続ける。
無限並列思考:常に稼働し続ける『真理究明』を補佐し、所有者の負担感を軽減するために設けられた能力。
擬似的な思考回路を無数に生成し、肉体の外側にまで根を延ばすことが出来る。なお、その思考回路は他の生物に移植することが出来る。
創造者:魔素を媒介にあらゆる事象を創造することが出来る。なお、創造できる事象の再現度は、所有者のその事象に対する理解度に比例する。
天地改変:『真理究明』によって解析が完了した存在を根本から改変することが出来る。存在を無かったことにすることは出来ない》
……これだけでもチートが過ぎるってもんだ。
シュナ自身の戦闘能力はベニマルやハクロウと比べて高くはないものの、これら強力なスキルの存在によって後方支援をする際に本領を発揮できるかもしれない。
もしかしたら、この世界には無い地球産の物品すらも創り出してくれるかも……!
あぁ……夢が広がリング。
「皆、よろしくな!」
「よろしく頼むよ。皆」
「「「「「「 はっ!! 」」」」」」
「……それはそうとお前ら、服のサイズが合ってないな。着替えくらいならすぐ用意させるぞ?」
「「「「「「 ありがたき幸せ!! 」」」」」」
こうして俺達は、新たな仲間を得たのだった。
ちょっと強くなりすぎて恐怖したのは秘密である!
一方その頃、ジュラの大森林に起こった異変は、確実に侵蝕を続けていた。
その脅威と相対する日は、あと僅か……。
ジュラの大森林の中央に位置する湖シス。
そのシス湖の周辺に広がる湿地帯。
そこは
湖周辺に無数に存在する洞窟。それは天然の迷宮と化しており、来る者を惑わせる。
そうした地形の利に守られて、蜥蜴人族は湖の支配者として君臨していた。
「どいてくれ!……報告します!!」
「騒がしいな。どうしたというのだ?」
……だがその日、蜥蜴人族に凶報がもたらされた。
「シス湖南方にて
「……豚頭族だと?」
「それで数はどのくらいなのだ?」
蜥蜴人族の首領の傍らにて控えていた親衛隊長が、偵察に出た部隊員に対して更なる報告を催促した。
「………ッ」
「どうした?豚頭族の数はと聞いている!」
平原で戦った場合、数の少ないこちらの分は悪いだろう。
だがしかし、湿地帯は自分達の庭である。
罠を仕掛けて慎重に行動すれば、勝機は十分にあるのだ。
蜥蜴人族の戦士団、その数およそ一万。
部族の半数が戦士として参戦しての数字ではあるが、その能力は非常に高い。
種族特有の連携を見せ、一団で戦うその戦力は、人間の小国の戦力を軽く凌駕するのだ。
まして、自分達に有利な土地での戦い。
負けるはずがないと首領は確信していたが、反面、腑に落ちない点もあった。
豚頭族とは元来、弱者には強いが強者には歯向かわない種族なのだ。
蜥蜴人族は決して弱者ではない。
そうした疑問が小さな不安の種となり、心に突き刺さる。
豪胆な性格ではあるが慎重さも兼ね備えている。
……そうした用心深さを併せ持つからこそ、蜥蜴人族の群れを統率する立場に首領は君臨できたのだ。
そして、そんな首領の不安は的中した。
偵察に出た部隊の報告で、それは判明したのだ。
「そ、それが……豚頭族の軍勢、その数およそ二十万」
「馬鹿な!我々の二十倍もの軍勢だと!?」
「ワタシにも信じられませんでした!……ですから魔力感知と熱源感知で何度も確認したのですが、間違いありませんでした」
ありえん!……そう思いたかった。
確かにオークとは、性欲の強い、繁殖能力旺盛な種族ではある。
がしかし、二十万もの軍勢を用意できるとは思えない。
第一、その数の兵士を食わせる兵糧を一体どうやって調達できるというのだ?
勝手気ままで我侭なオーク共をどうやって一つに纏め上げるというのだ!
どんなに力ある個体でも、精々千を纏め上げるのが限界のはず。
首領である自分でさえ、総数二万の種族を纏め上げるのが精一杯なのだ。
よほど優秀な個体が多数発生し、それらが連携しているとでもいうのか?
だがそれでも、その優秀な者共を纏め上げる存在が必要となる……まさか!?
その考えに思い至り、愕然とする。
自分でその考えを否定したい。そう思って―――
「……
「「「「 ッ!!? 」」」」
「……二十万もの軍勢を纏め上げている豚頭族がいるのならば、伝説の
しかし、考えれば考えるほどその存在以外の理由が無いように思えた。
もしも豚頭帝が誕生したのだとすれば、地の利に秀でていても勝利は疑わしい。
普通に戦えば、負けることは必定である。
とにかく数が足りないのだ。
首領は考える。
どうすればこの窮地を脱することが出来るのか。
自分の考えが杞憂であればそれはそのほうが良い。
だが、決戦が始まる前に打てる手は全て打つべきである。
「息子よ!我が息子はおるか!!?」
援軍は頼むべきだろう。
そのための使者として、息子を呼ぶ。
「ここにおりますよ。……ですが親父殿、その呼び方は
息子、もといガビルの不遜な物言いに鼻を鳴らした首領。
すぐ調子に乗るのが玉に瑕だが、彼以上に適任もいなかったのだ。
「呼び方などどうでもよかろう。それよりお前にやってもらいたいことがある」
「……伺いましょう」
この人選が後の騒乱の火種となるのだが、蜥蜴人族に未来を覗き込む力などあるはずもなく、全ては
『(なるほど。『裁定者』を応用すれば、スキル越しに相手の思考と記憶、感覚を共有できるのか。これは中々革新的な諜報手段じゃないか?……にしても、だいぶ
……蜥蜴人族は知る由もなかった。
その場における会話の全てが、ゴブリンや牙狼、ドワーフ、そしてオーガといった強力な魔物すら統べてしまった覇王に見られてしまっていることに。
『(適当に回線を繋いだだけだったけど、この分ならオークにも接続できるかな?)』
全ては
覇王、もとい