決意表明をするって話です。
「
「まぁ簡単に言うと、化け物です」
おい、簡単すぎて分からねぇ。
それを言ったら、レイタロウさんもオークロードってことになっちまうだろ。
「ってことは、いま俺達の目の前にいるハクロウもオークロードか?」
「あぁ。アレも似たようなもんですね」
冗談半分にそんなことを抜かしたのはベニマル。
俺ことリムルは、
俺は興味本位で首を突っ込んでみたが……。
ハクロウは剣の達人だった。半端なく強い。
爺さんなのにあまりにも気迫が違った。
人間の姿に成れることだし、レイタロウさんに短期間ながら徒手格闘のイロハを叩き込まれた身の上だ。
『未来攻撃予測』も使えることだし、
……そう考えていた時期が、俺にもありました。
どこからでもかかってこいや!
……そう思って、ハクロウを見た。
ハクロウの姿が霞む。瞬間……。
脳天に気持ちのいい音が響いた。
痛くも無いしダメージも無い。
……だがその瞬間、俺の中にあった自惚れが見事に断ち切られてしまった。
『未来攻撃予測』をONにしていたにも関わらず、だ。
これが機先を制するということだと、ハクロウは言った。
例え未来を覗き見ていたとしても、確信と行動の間には僅かながらに空白が生じている。故に、相手の行動が始まる前に先んじて相手を斬ってしまえばいい。
理論上は光の速さにすらも対処できると付け加えた上で。
……これだけは言わせて?
スキル頼りな俺に、そんな芸当できるワケねぇ!
「ホッホッ、言ってくれますな。稽古がしたいと望まれたのはリムル様ですのに」
「お、俺、ちょっと休憩……」
「仕方ありませんのぅ。……おヌシらはまだ続けるぞ」
「「「「 えーッ!!? 」」」」
まさに鬼コーチ。
速さではなく技術。完全に
総合的な能力はたぶん俺のほうが上のはず。
が、なんつーことだ。手も足も出ない。
これが剣士か!そう納得できる強さだった。
進化する前のハクロウならいざ知らず、進化を果たした現在のハクロウを舐めてかかれば、おそらく俺のほうが負けるだろう。
舐めてかからずとも、下手すれば負ける。
というかそもそも、ハクロウが本気を出しているとも思えないのだ。
この爺さん……進化して若返って、更にヤバくなってしまったようだ。
「まぁそれは冗談ですが、オークロードというのは数百年に一度生まれるというオークの
「ホレホレ、打ち返してこんか」ブオンブオンッ!!
「無理ー!無理ッスー!!」
「うへぇ……」
「里を襲ったオークどもは仲間の死にまるで怯むことがなかった。あるいは……と思いまして」
「なるほど……」
「まぁまだ可能性の段階の、いえ、憶測の段階でしかありませんが」
ふーん、味方の感情すらも喰らうなんて、なんだか俺の『
「ゴブゾウー!しっかりするッスー!!」
「ほかに何かないのか?里が襲われた理由の心当たり」
「……そうですね」
「ゴブゾウの仇!隙ありッスー!!」
何か心当たりでもあったのか、ベニマルはポツリポツリとある話をしてくれた。
「関係あるか分かりませんが、襲撃の少し前にある魔人が里にやってきて〝名をやろう〟だとか言ってきたんです。俺を含め全員から突っぱねられて結局、悪態つきながら帰っていきましたがね」
「そいつから恨みを買っているかもしれないってことか」
「仕方ありませんよ。主に見合わなけりゃこっちだって御免だ。……そいつの名前なんだったかな?確かゲレ…ゲロ…」
「ゲルミュッドだ」
「そうそれ―――って、レイタロウ様!!?」
音もなく背後に近付いていたレイタロウさんに驚きを露わにするベニマル。
それはそうと、気になることがある。
「なんだ。もしかしてレイタロウさん、そのゲルミュッドってヤツを知ってるのか?」
「知ってるも何も、ドワーフの国に出向く時にリグルが教えてくれた名前じゃない……」
「えっ?……あっそうだった」
「ゴブリンのところにも出向いていたんですか?そのゲレ…ゲラ…」
「「 ゲルミュッド 」」
「そう、ゲルミュッドでした。……そいつ、随分と節操がないヤツのようですね」
「……そのゲルミュッドとオークの軍勢について、面白いことが分かったぞ」
ん、オークの軍勢についても?
一体なんじゃらホイ?
「詳しいことは中で話そうと思うが、そのゲルミュッドが名付けたオークがオークロードと成って二十万もの軍勢を率いていることが分かった」
「「 ッ!!? 」」
「そして驚くべきことに、ゲルミュッドを使って裏で糸を引いていた黒幕は、十大魔王が一人クレイマンだった」
「「 ッ!!? 」」
「これはジュラの大森林に住まう全ての種族の生存を賭けた一大事だ。それこそ、オークロードが可愛く感じるほどの天災が立て続けにやってくると思ってくれ」
……マジで?
俺達にはどうやら、当分平穏が訪れないらしい。
どうも、俺はレイタロウと言います。
あーだこーだ言う前に、俺の
『裁定者』……究極能力以下の全てのスキルを管理・監督する絶対権を有し、所有者の意のままに下賜・簒奪・使用することが出来る。そして、これに抵抗することは不可能であり、そもそも抵抗の意思を持つことすら無い。
物凄いチートだと我ながら思う。
そしてこの能力は、ある程度使いこなすことでスキルを通じて相手の思考や記憶、感覚を一方的に乗っ取ることが出来るのだ!
相手は乗っ取られていることに気付かず、また俺のほうから乗っ取りを中断した後も気付くことはない。まさに理想的な諜報能力と言える。
距離の制限は無きに等しく、俺が認識した相手であれば無制限に乗っ取ることが出来るワケだ。
……流石に究極能力を乗っ取ることは出来なかった(リムルさんやシュナで検証済み)けどねぇ。
究極能力持ちでも、それ以外にユニークスキルとかを持っていればそのユニークスキルを乗っ取ることは出来るんだけどねぇ……。
「なんて……ことだ……ッ」
ベニマルが机に突っ伏す。
その表情は生憎窺えなかったが、どうしようもない絶望的な状況を知り、どうしたものかと考えを巡らせているようにも見える。
「レイタロウ様、それは真に御座いますか……?」
俺の隣に座っていたシュナが、縋るように俺を見つめながら尋ねてくる。
俺の二の腕に両腕を回し、もうなんて言うかピッタリとくっついて離れないでござる。
それはそうと、現在の状況を説明しないとねぇ。
俺は主たるメンバー(リムルさん、リグルド、ランガ、カイジンさん、シズさん、ベニマル、シュナ、シオン、ソウエイ、ハクロウ、クロベエ等)をかき集め、ようやく出来上がった立派なログハウスの中で驚くべき事実を打ち明けていた。
「
「魔王誕生計画ぅ?……そんなことをして一体何の得があるんだよ?そのクレイマンってヤツも魔王なら、ライバルが増えるようなことは避けたいんじゃないのか?」
リムルさんが、ある意味もっともな疑問を呈する。
「それを話す前にまず、魔王という存在について軽くおさらいしておこうと思う」
ゲルミュッドを介して魔王クレイマンの存在を知り、そのクレイマンの記憶を通じて得た魔王に関する知識を簡潔に話していく。
「まず魔王とは、特定の個人を指す名称ではなく、強大な力を宿した魔人十名
「ほうほう」
「そんなある意味、究極の個人主義者達が集っているもんだからルールもまた存在する。魔王間でその可否を決める時、提案した魔王のほかに最低二名以上の魔王の賛同が必要になるというのが最たるものだな」
「……あっそうか。『魔王誕生計画』っていうのは、魔王にまで育て上げたっていう恩を売って、自分の意見に帯同してくれるヤツを増やすための計画ってことか!」
「いわゆる組織票だね。魔王同士の取り決め合いは文字通り世界規模とも言える。そこで政治的な優位性を確保したい思惑があるんだろう」
「なんてこった。ここでそんな恐ろしい思惑が蠢いていたなんて……!」
カイジンさんが深刻そうに頭を抱える。
オークロードの脅威だけでも十分すぎるのに、そこに魔王の思惑が絡まっていたとなれば、誰だって頭を抱える。
「……結論から言って、オークロードとそれが率いるオークの軍勢は俺一人で余裕で殲滅できる」
「っ、本当ですかレイタロウ様!?」
「だが、オークロードを倒した場合、この計画を推し進めていた魔王クレイマンに間違いなく敵視されることになるだろう。自分に賛同する魔王の誕生を妨害した、自分に賛同しない勢力。……排除しようと思うのは当然の心理だ」
「目先の脅威を倒したと思ったら、後方に控えていた魔王に目をつけられる、か。……酷え冗談だ」
「ならばレイタロウ様、そのクレイマンとやらも倒してしまいましょう!レイタロウ様とリムル様の御力をもってすれば容易いはずです!!」
「シオン君。そんな考えなしに実力行使をしたら、下手しなくてもこの町が戦場になるよ?せっかくいい感じに出来上がってきたこの町を戦火に巻き込むことは出来ません」
「うっ、リムル様……」
「魔王クレイマンだけじゃない。この『魔王誕生計画』には様々な勢力の煩雑とした思惑が交錯しているんだ。仮にそいつらを一斉に敵に回した場合、俺達は無事でもこの生まれたての町のほうが耐えきれない」
たまたまリザードマンに回線が繋がり、そこでオークロードのことを知った俺は即座にオークロードのスキルを乗っ取り、その思考と記憶を読み取ってゲルミュッドに行き着いた。
そのゲルミュッドの記憶から魔王クレイマンが関与していることを知り、即座にクレイマンのスキルを乗っ取り、その思考と記憶を読み取って
……そうこうしているうちに、色んなことが分かった。
「……魔王クレイマンとそれが所属する中庸道化連、そのクレイマンを密かに洗脳している東の帝国のタツヤ・コンドウ、西方諸国を影で操るロッゾ一族、暇潰しで参加した最古の魔王ミリム・ナーヴァ……」
「も、もはや全くワケが分かりませぬが、一つ選択を間違えればこの町どころか森そのものが無くなりかねないことは分かりました……!」
ワケが分からないなりに返事をしてくれるだけリグルドは偉いよホント。
シオンなんて頭からプスプスと煙を出してるよぉ。
「レイタロウ様。よろしいでしょうか」
『魔王誕生計画』を巡る一連の因縁をようやく飲み込めたのか、ベニマルが挙手をして意見具申をしてきた。
俺としても、どんな意見でもいいから誰かの考えを聞きたかったために発言を許可する。
「レイタロウ様の能力によって、我々を取り巻く状況がどれほど逼迫しているのかを理解することが出来ました」
余談だが、俺が見聞きしてきた一連の話は、俺が『気』を液晶画面風に展開し、そこに記憶の映像を流すことでより分かりやすくなるように配慮・工夫してお届けしている。
このくらいはお茶の子さいさいってもんさぁ。
「ですが、
「……オークロードから話を発展させすぎたのは認める。今は確かに、オークの軍勢の今後の処遇について話し合うべきだったな」
「申し訳ありません。出過ぎた真似をいたしました」
「……まだまだ何か言いたげだな。許す。話せ」
「それではお言葉に甘えて。……レイタロウ様は、オークどもをいかがなされるおつもりですか?」
……まぁそうだよね。ここはやっぱり一番偉い俺の意見を聞きたいよね皆。
絶対文句言われるよなぁ……。
「……迫りくる
「「「「 ッ……!! 」」」」
「であるならば、ここは敢えて君達の罵倒を甘んじて受け入れるべきと考えている。それほどまでに俺の理想とする決着は果てしなく、君達に求める働きは至難を極めるものだからだ!」
「も、もしや、オーク達をせん……」
シュナが、何とも憂いを帯びた表情で俺を見つめてくる。
……そうじゃない。そんなんじゃないのよぉ。
「
「めつ―――えっ!!?」
「「「「 え"っ!!? 」」」」
「そもそも
「レ、レイタロウ様!?ちょっとお待ちを……!」
「飢える
「オ、オークどもを纏めて助けると……?」
「く、国……レイタロウ様は国を……!?」
……ふぅ、いかんいかん。
でもね、これは俺の中じゃ決定事項なの。
「異論は認める。俺のやり方についていけない者はこの町を去ることも許す。俺を信じると決めた者のみ、俺の後をついてくることを認めよう。……そうだ、最後にこれは言っておかないとな」
オークとの戦いは勝って当然の戦いなワケよ。
勝つ以外に道のない戦いと言うべきか。
だからこれは、決意表明。
「……俺は魔王になる」
「「「「 ………( ゚д゚) 」」」」
〝真なる魔王〟だなんて言われるくらいなんだし、これくらいは名乗っておかないと締まりがないよね。
つーことで、レイタロウさんが魔王の座争奪戦へダイナミックエントリーを果たしましたとさ。