まずは同盟を結ぼうって話です。
挿絵あります。
「(レイタロウ様達が出立されてはや
徐々に出来上がっていく町の様子を見回りながら、リグルドはかれこれ一時間もそんな心配を重ねていた。
主であるレイタロウや名付け親のリムルの凄さは理解しているつもりであったが、相手はかの
そんなことを考えていると、例え小一時間でもリグルドにとっては永遠に近い時間に感じてしまうのだ。
「元気そうだな。リグルド」
「リムル様――――――ッ!!?」
が、それは無用な心配であった。
件のリムルが、割とアッサリ帰還を果たしたからである。
「いつ戻られたのです!?」
「たった今影移動でな」
「レイタロウ様は?ほかの者達は?」
「無事だよ。オークロードを無害化したから―――」
「なんと!ではすぐに宴の準備を!!」
この小一時間の間に起こった出来事に目眩を覚えながらも、リグルドの頭の中は宴会の準備でいっぱいであった。
「落ち着けって。宴は一週間後でいい。心配してると思って来たけど、すぐ戻らなきゃならないんだ」
「なんと!!」
「シュナやクロベエ、カイジン達にも伝えておいてくれ。これからドッと忙しくなるからな。覚悟しておけよ?」
「ははっ!……しかし少しくらい休まれてからでもよろしいのでは?」
「俺だってそう言ったんだけどな。レイタロウさんが聞かないんだよ。ここからが正念場だって……」
明日開かれる会議に思いを馳せ、リムルは溜息をついた。
……そう、前世の頃から苦手としていた仕事。
<<< 当日 >>>
トレイニーさんの鶴の一声によって開かれた話し合いの場には、この森の色んな部族の代表者達が勢揃いしていた。
俺ことレイタロウを筆頭に、リムルさんに
リムルさんはシオンの膝の上にちょこんと座っていた。
ガビルの俺を見る目がキラキラ光ってるけど……何で?
森の管理者たる
ガビルに連れてこられた
そして、ゲルドを筆頭とした
『
まぁ誰も死なせやしないけどねぇ。
「それでは、これより会議を執り行う。このたび議長となったレイタロウという者だ。森の管理者たるトレイニーさんに推薦されたため議事を進行させてもらうが、この決定に不服のある者は立ってその意を示してもらいたい」
立つ人は……いないと。
「……よろしい。それではこれより会議を始めさせてもらうが、その前にこれだけは名言しておかねばならん」
皆が真剣に聞き入ってくれている。
この前提条件が、一番大事なところだからねぇ。
「俺は、此度の戦の敗残兵であるオークを罪に問うつもりは微塵もない」
「「「 っ!!? 」」」
「被害に遭った者達からしたら納得のいく話ではないだろうが、聞いてほしい。彼らオークが武力蜂起に至った原因と現在の状況を話す」
俺は、オーク達の国を襲った大飢饉の真相をぶち撒けた。
オービック王国内に
その予兆を察知していた傀儡国ジスターヴに放置された結果、一方的に暴れた蟲魔族が作物等を食い尽くし、オービックを不毛の地へ変えてしまったこと。
要するに、傀儡国を収めるクレイマンの怠慢がオービックを追い詰め、しかもその不手際をゲルミュッドが企てた『魔王誕生計画』の基盤に逆用されていたこと。
ゲルミュッドほか様々な人物の記憶を読み取って判明したことだと説明し、それとなく周囲の反応を窺った。
「っ〜〜〜、っ〜〜〜!!」
一番分かりやすい反応を示したのはゲルドだった。
自分達が追い詰められていた原因、そしてゲルミュッドとの運命の出会いすら、そもそもが怠慢を発端とするふざけたものであったと知り、血管をビキビキと浮き上がらせ、顔を真っ赤にしながらも会議の進行を妨げないよう必死で怒りを押し殺していた。
「「「「 ……… 」」」」
ベニマル達は、表面上は冷静そうに佇んでいた。
だが、ゲルド以上にヤベー殺気を漂わせており、シオンに至ってはリムルさんのスライムボディーをスリムボディーにするほどに強く締め上げていた。
てか、全員目がガンギマってて怖いよぉ!!
「なるほど大飢饉。……それに『魔王誕生計画』とは」
「そうだ。だからと言って侵略行為が許されないのは当然だが、逼迫した状況から分かる通り、彼らに賠償できるだけの蓄えは無い。……というのは建前だ」
「……本音のほうをお伺いしても?」
リザードマンの首領にはあらかじめ言っておいてはあるが、この場で意思統一を図る意味での再度の質問だろう。
俺はキッパリと答える。
「オークの罪は俺が全て奪い去った。オークを罵倒したくば俺を罵倒し、オークに石を投げたくば俺に石を投げるがいい」
「お、お待ちいただきたい!」
そこに待ったをかける者が現れた。
ゲルドの右隣に座る黒ローブに身を包んだオークだ。
「いくらなんでもそれでは道理が……!」
「道理?……そんなつまらんものに振り回されるつもりはない。俺がオークを欲しいと思ったからそうした。言っておくがこれはお願いじゃない。確定事項である」
「なっ、なっ……!」
悪いけど、異論なんて挟ませないよ?
君達には労働力を提供するという選択肢しか与えない。
そして、そのための道筋はちゃ〜んと用意してある。
「……もとより、この戦の勝者はレイタロウ様です。あなた様の決定に異を唱えたりはしませぬが……どうしてもお聞きしたいことが御座います」
「話してくれ。首領」
「オークの罪を問わぬということは、生き残った彼ら全てをこの森にて受け入れるおつもりですか?」
ネタバレすると、リザードマンの首領とは交渉を経てちゃっかり主従関係を結んでおり、率先して質問をしてもらう役回りを演じてもらっている。
議事をスムーズに進める上で、こういう役回りはとても重要なのだ。
「確かに、
諸々の事情とは、オーガ等の抵抗や共食いによってその命を散らした者を指す。
ちなみに、そのうちの約半数以上は女子供や老人といった戦えない者で構成されており、彼らの逼迫ぶりを改めて思い知らされることとなったのは記憶に新しい。
「……そこでだ、ここジュラの大森林に住まう各種族間で大同盟を結ぶことを提案する」
「「「「 っ!!? 」」」」
「オーク達にはひとまず各地に散ってもらうが、その土地土地で労働力を提供し、見返りとして食糧や住む場所を提供してもらう。建築等の技術支援は俺の町の職人に依頼するが、オーク達にはそれら技術の習得を義務化させる。行く行くはモノにした技術をもって自分達の町を作るというのも良いかもしれん。各地に散った仲間達とも一緒に住めるようになるだろう。……最終的には多種族共生を謳う国を興すつもりだが、スタートラインとして大同盟が適切だろうと判断した」
「わ、我々がその同盟に参加してもよろしいのでしょうか……?」
「無論ちゃんと働けよ?……サボることは許さん」
「「「「 もちろん……もちろんです! 」」」」
……おっとそうだった。
食糧事情についても、ちゃんと説明しておかないとなぁ。
「食糧自体は
「はっ」
「君の
「……かしこまりました」
現在のゲルドは、
そのゲルドは、皆に顔を向けて説明を行っていく。
「……『
「優れた魔素効率……」
「このスキルによって、オレは情報子という魔素や霊子よりも小さな物質を自在に操作することが出来る。……が、今はあまり関係ない話だな。要は魔素の消耗を極限まで抑えて飢えや空腹を感じにくくするというものだ」
「……貴殿の庇護下に同胞が収まっていると言ったが、彼らはいま飢えや空腹を感じていないというのか?」
「オレの魔素を群れ全体に行き渡らせているが、ごく僅かな糧を得て、心から満たされている状態だ。実際にそれだけで健康的に生きられているのだから凄まじいと言わざるを得ない」
ある意味、『飢餓者』の対極に位置する能力と言える。
外部から力を取り込んで群れ全体に還元・強化するのが『飢餓者』なら、群れ全体で生み出せる僅かな力を循環させ、身内間だけで完結させるのが『豊穣之王』と言える。
もっと分かりやすく言えば、物質的な豊かを追い求めていたのが『飢餓者』で、精神的な豊かさで満ち足りているのが『豊穣之王』ということ。
「ゲルド。仮にその『豊穣之王』でオーク全体を養うとして、一体どれだけ保たせることが可能だ?」
「オレが……いえ、私が生きている間は半永久的に」
「よろしい。……では、自給自足が出来るまではドライアドからの配給と君のスキルでオークを飢えさせないようにするのだ。くれぐれも先走った真似はするなよ。君はもはやオークの〝希望の光〟だからな」
「っ、はっ……!」
今までの壮絶な人生を物語るような、そんな厳かさが含まれた礼とともに片膝をつき、
漂わせる雰囲気に自殺願望のようなものは無かった、と思いたい。
「ベニマル」
「はっ」
「話は聞いていたな?……早速だが、近くに控えさせていた
「了解いたしました」
普段俺の影の中に潜んでいるランガ(父)
体も鈍っているだろうし、都合良く発生した運搬作業はちょうど良かったかもしれんな。
「クゥゥゥン……我はレイタロウ様のお傍におります」
などと言って影の中に引っ込んでいったランガ(父)
……たまには散歩に連れて行くかなぁ。
「……であるならば、我らも異論はありません。是非協力させていただきたい」
そう言って、いの一番に頭を垂れたのはリザードマンの首領とその配下達。
「我らも、より一層の忠誠をお誓いいたします」
ベニマルを筆頭に、蟲鬼族の面々もまた頭を垂れる。
「わ、われらも、ぜひとも同盟に!」
「おねがいいたします!」
一度は迎合することを断った
「……よろしいでしょう。では森の管理者として、私トレイニーが宣誓します。レイタロウ様をジュラの大森林の新たなる盟主として認め、その名の下に〝ジュラの森大同盟〟は成立いたしました!!」
……トレイニーさんすら頭を垂れだし、この場で頭を上げているのは俺くらいしかいなくなっていた。
これこそ、王だけが目に出来る光景……。
今更逃げ出すようなことはしない。てか出来ない。
例え地獄に落ちても、悔いの無い選択であったと思ってもらうために、常に最善とは何かを考え続けなければ。
「頼んだぞ諸君。……後ほど
「へぇ。十九万人……十九万人ッ!!?」
精々頑張ってくれたまえ。ハッハッハ。
これにて会議は閉幕!
一件落着だぁ!!
リムルさん「やってられねぇスト起こすぞ!!」
レイタロウさん「シオンの手料理をぉ、リムルさんの胃袋の中にぃ……」
リムルさん「名付け最高!名付け最高!レイタロウさんも名付け最高と叫びなさい!」