戦後処理マジ大変って話です。
リムルさん主体で話が進みます。
大同盟が成立したその日。
それはジュラの大森林に住まう魔物達にとって忘れることの出来ない記念すべき日となった。
一人一人に〝名〟が授けられることになったのだから。
なんてな。ド畜生め。
カッコよく言っても誰が名前を付けると思ってるんだよ。
……そうだよ
十九万って、おま、無茶ぶりもいいところだろ!
この前
十九万のオークに名前を付けてる間に、俺が精神的に死んでしまうわ!
今回は見送ろうかとも思ったのだが……レイタロウさんからあることを指摘されたのだ。
『
曰く、自分に回すべき最低限度の
『
しかし、あの時とはまるで状況が異なっており、ここでゲルドに倒れてもらっては非常に困るのだ。
もし仮にゲルドが息絶えてしまった場合、当然『豊穣之王』の効果も途切れ、オーク達は再び飢えに苦しむことになる。力の弱い者から真っ先に死ぬかもしれん。
そこで
そもそも、本来Dランクのオーク達がC+ランクに近い魔素量を有するほどに強化されていたのは、
そして非常に幸運なことに、『飢餓者』によって一時的に増していた
であるならば、その魔素が失われる前に俺が捕食し、同等量を与えればいい。
与えるというのは、つまりは名付けだ。
これなら疲労なく名付けを行うことが可能となり、結果ゲルド一人にかかる負担も大きく緩和されるはずだ。
……そうして、俺にかかる負担は激増した。
もしストを起こしたらシオンの手料理を振る舞うと脅され諭され、現在に至っている。
「リムル様。次は湖の部族の女性ッス」
「ぉぅ……湖-1F、湖-2F、湖-3F―――」
こうなってくると、アルファベットを持ち出しても無理。
大種族ごとに区分けしたりセカンドネームを入れたりしても、管理が面倒になる。
残された道として、究極にして至高、無限の可能性を秘めた、最強シリーズを用いる必要がある。
そう……
国民総背番号とか言うけど、ぶっちゃけ管理する側からすれば数字は最高に便利なのだ。
軍事行動で整列くらいは流石に出来る。
そうして、オーク達を並ばせた。
勝手に名前を付けると嫌がるのでは?
……そう思いはしたが、これはゲルドの負担を大きく減らすための緊急的な処置であり、そのゲルドがいなくなれば統制も取れない食べるだけの集団が十九万匹も残ることとなる。
これは増えすぎなのだ。
Dランクなんてぶっちゃけ脅威ではないけれど、この辺一帯を荒らし回るには十分すぎる。
それでは良質な労働力として期待も出来ないし、同盟を結んだ意味が無い。
また、進化したら魔物としての格が上がり、反比例して繁殖率が落ちるのは
つーワケで、勝者の権利を行使させてもらうことにした。
大氏族に山、谷、丘、洞、海、川、湖、森、草、砂……という具合に名前を授ける。
山の氏族なら山-1Mが名前となる。
女性なら山-1Fとなるのだ。そこからの派生は任せた。
……ぶっちゃけ管理するのが面倒なだけなのだけど。
子供は山-1-1Mとでも派生していけばいいさ。
適当にミドルネームやアルファベットに対応するような言葉を入れるのもいいだろうし、その辺りは自分達で考えさせよう。
名付けの更新という素晴らしき裏技もあることだし、デカい功績を上げた者には改めて別の名前を授ければいい。
というワケで、俺はオーク達から魔素を喰らい、それと引き換えに名前を授けていった。
氏族ごとに並ばせて男女別に整列しているため、結構サクサクと名前を付けることが出来たけど、時間は掛かるしメンタルが擦り切れる。
しかし今回は、名前にいちいち悩まずにサクっと言うだけで終わる。
並んだ順番で名前も決まっているようなモノ。
そこに親子がいようが、そんなことは知らん。
今後、自分達で納得してくれればそれでいい。
そんな感じでザクっと名前を付けていった。
記帳は各氏族の代表に任せた。
生憎紙が無いので、間違いないかの確認だけだけど。
実際には心配することも無く、名付けられた本人が忘れることは無いのだ。
人間と異なり、魂へ刻まれた名前はお互いに分かるモノらしい。
こうして、延々と名前を付ける地獄が始まった。
一人あたり五秒以内に収まるように。
それでも多少のロスは生じるので、結局名付けを終わらせるのに、十日ほどかけることとなった。
無論、俺が休む間もなく名前を付けている間、ベニマル達は遊んでいたワケでは無い。
……つか遊んでたら一生恨む。
レイタロウさんの命令で、食糧の運搬をするためである。
配給される食糧だけで本当に十九万を賄えるのか?という不安はあったが、そこはレイタロウさんの判断を信じるしかない。
少なくとも一年分はあったほうがいいのだが……。
なお、運搬については心配していない。
戦争において最も頭を悩ませるのが
前線で戦う兵隊を飢えさせることは、即ち自国の敗北を意味するからだ。
魔物とはいえ、十九万人分の食糧を運搬するのは大変である。
ところが、ランガがいつの間にか
ランク的には一個体でBランク。十分上位の魔物である。
最大数は百のままだが、
そして特筆すべき点として、全ての個体が『影移動』を使いこなすことが可能なのだ。
ソウエイやランガのように、瞬間移動と見間違うほど早く移動することは出来ないようだが、それでも音速で移動するより早く目的地へ行ける。
影移動だと、何の障害もなく直線で目的地まで移動できるのだ。
点と点を結ぶ最短距離を、通常速度の三倍で移動できると思えばいい。とにかく物凄く早い。
筋力もそこそこあるスターウルフに、トレントの集落で食糧を渡してもらい運搬させる。
馬車で運搬するなら、遠回りしての移動となるため二ヶ月以上はかかるであろう距離を一日で往復可能なのだ。
ただし、騎手であるゴブリンは一緒に移動できない様子。
今後の鍛錬次第では分からないが、可能ならば出来るようになってもらいたいものだ。
一緒に行けないゴブリン達は、俺の手伝いでオークの整列を手伝わせている。
こうして運搬の問題は片付いた。
そして、心配していた食糧備蓄の問題だが……。
トレントとは、そもそも水と光と空気と魔素で生きている魔物である。
自らの魔素の余りを実に籠めて実らせるのだが、それを食べるモノは居ない。
聖域内でしか移動できない種族であるため、実った果実を集めて保管しているだけなのだという。
果実は魔法植物であり、光に当てていれば乾燥し腐る心配は無い。
ちなみに後で知ったのだが、その状態になったモノは
出回ることは殆どなく、高額な嗜好品なのだとか。
高額な理由は濃厚な
もう一つの理由は、人と交流の殆どないトレントの特産品であり、管理するドライアドが困った人に気紛れでプレゼントしないと出回らないのが大きな理由なのだ。
そのことを知った時、オークにタダ同然であげたことを若干後悔した。……まぁ仕方ないんだけどね。
こうして、トレントの代表であるドライアドのトレイニーさんの提案により、食糧問題も片付いた。
「リムル様。次で最後の集団ッス」
「何人くらい?」
「約二千人ッス」
「りょ〜かい」
十日後。クタクタになりつつ、俺は成し遂げた。
頭の中を数字が駆け巡っている。……しんど。
しかしだ。俺はやり遂げたという満足感に包まれていた。
十九万だぜ?数えるだけでもうんざりするってもんだよ。
そして、その頃には食糧の分配も終わっていた。
一人に五十粒ずつ。
無くすと飢えることになるのは理解しているのだろう。
皆真剣に受け取っていた。
名付けを終えて、
今回の名付けで俺の魔力は殆ど使っていないはずだが、またしてもデジャブを感じる造形へと変貌してしまった。
……が、幸いと言うべきか被支配関係には無い。
彼らが純粋に自分達の意思で同盟に参加し、協力してくれるのを望むばかりである。
比較的知能が上昇し、得た特質もそのまま残っている。
どのような環境にも適応できる、非常に逞しい種族へ進化したと言えるだろう。
彼らは俺に礼を言い、各地に散って行くことになる。
それに付き添うように、
落ち着く先を確認し、テントの支援等を行う予定なのだ。
そして技術指導を行い、各集落を作っていくことになる。
先は長いが、彼らもいずれはそこに根を下ろし、暮らし向きも向上することだろう。
こうしてガイガンオーク達はそれぞれ旅立って行った。
「お願いがございます。我らは
ところが、残ったヤツもいる。
ゲルドに率いられた
確かに、労働力が欲しいのは事実だ。
まぁいいか。気軽に受け入れることにする。
それはそうと、もう二千人が多いのか少ないのか分からなくなってきたなぁ……。
とはいえ、彼らに地形シリーズの数字を割り振るワケにはいかない。どうしたものか……。
黄いオーラだから色分けで数字を振ることにした。
ざっと鑑定で
そして、俺の指示通りに並ばせた。
俺の『大賢者』の解析鑑定も、見ただけである程度の判別がつくようになったのである。
これが、後の
男女の区別無く数字を割り振った。
戦士に男女の区別など無いのだ。
工作用の労働力は各集落が落ち着いてから派遣してもらうことになるので、現状はコイツらに働き手になってもらわないとダメだけどね。
そして、
特に黒いローブを纏ったこのオーク……コイツはゲルドの側近にして実の息子であったはずだ。
なら、名前は決まっている。
「お前には、ゲルドの右腕として引き続き働いてもらう。一度は
「……その名を賜ることの重み、しかと受け止めました。我が忠誠をレイタロウ様に!」
「期待しているぞゲルド二世」
「ははっ!」
その瞬間、ゲルド二世の体が黄色い
同時に奪われる大量の魔素。
やべっ……やっぱりこうなるのか。
「リムル様?……リムル様!?」
例の如く、俺は
そして翌日。
やはりというか何というか、予感は的中していた。
各方面に散った者達より上位に進化したのだ。
なんだかとても強力な兵を手に入れたようなものだ。
さて、本命のゲルド二世だが……。
……うん、そんな予感はしていたよ。
ユニークスキル『美食者』も獲得していた。
ほかの
やはり、番号ではなく名前のほうが良いのだろうか?
同族に死体を食わせたりする能力は流石に失われていた。
……その必要が無くなったからだろう。
スキルは、望む者の心に影響を受ける。
飢餓で狂わなかったらこうであったのであろう、理性と威厳を兼ね備えた魔物である。
こんな立派な連中が、今後レイタロウさんにこき使われ続けるというのか?反乱は起きたりしないのか?
……ふとそう思ったが、気にしないことにした。
そのうち独立するなら、それはそれで良いだろう。
ゲルドも二世も、そんな気はサラサラないって様子だったけれども。
とまぁこうして、壮絶な名付けという名の
ゲルミュッドのヤツがレイタロウさんに浴びせたあの技、もしかしたら俺にも当たっていたかもしれん。
……実は恐ろしいヤツだったのかも。
そんなことを冗談めかしく思ったりした。
レイタロウさんに、俺の町に来いと半ば脅される形で。
大丈夫だろうかと少し心配になった。
凄みをきかせた、とびっきりのゴジラスマイルを向けられて、よく失禁する程度で済んだと思うよ。
まぁこれで、今まで迎合しなかったゴブリン達も町に集まってくることだろう。
過剰に手を差し伸べたりする必要は無い。
……ただ、レイタロウさんの考え次第で容易く覆ることも忘れないようにせねば。
ということで、俺達も帰るとするか!
一通りの引継ぎを終えて、リザードマンの首領に挨拶をすると、俺達は出発した。
実際には二週間も経っていないが、後半は長く戦っていた気がする。
俺だけはマジで戦っていたようなものだけどね。
何はともあれ、森の騒乱はこうして終息したのである。
次回、ガビルが覚醒する……!?