野郎三人が顔を突き合わせて話すって話です。
『……では、改めて名乗ろうか。我が名は暴風竜ヴェルドラ。個にして完全なる者であり、この世に四体しか存在しない竜種が一体である。クァ―――ハハハハッ!!』
「……ご丁寧にどうも」
『まさか向こうはドラゴンだったなんて……!』
……俺もびっくらポンだよ悟さん。
ウォータージェットよろしくどっかにすっ飛んでいったかと思えば、なんでいかにも封印されてそうなドラゴンと出くわしているのかねぇ?
俺みたいな小心者は、立ってるだけで心臓がバクついちゃうよホントにぃ……。
『(怖え……レイタロウさんが想像の数百倍怖えよぉ!)』
『(な、なんか、この物凄く五月蝿い音が響くたびに我の魂魄が萎縮しておる気がするのだがぁ!?)』
それでも現地人、もとい現地
……なんか引かれてる気もするけど。
そうして、ヴェルドラさんと話し合いをするうちに、色々なことが判明した。
まずヴェルドラさん自身は、意外なくらいに話し好きで親切であるということ。
そんな彼の口から聞き捨てならない言葉が乱立された。
この世界には人ではない存在、
人間に味方するエルフやホビット、ドワーフと言った妖精族などは大雑把に亜人として認識され、魔人に味方する亜人は魔物と認識されているんだって。
生殖能力を持つ魔物の代表が、この亜人。
ヴェルドラさんにとってはゴミにも等しい存在とのこと。
次に魔人。
魔人とは、魔素から生まれた者や魔物の突然変異種、動物や魔獣から進化した連中の総称なんだって。
知性を有し、生殖能力を有するのが特徴。
……もっとも、人のそれとは大きく異なる者もいるって。
中には上位魔人クラスの突然変異体もいる、最も乱雑で多種多様な連中とのこと。
最後に、巨人族や吸血鬼族、悪魔族と言った長命の上位魔人族だ。
この連中も生殖能力を有しているのだが滅多に行わない。
圧倒的な魔力に、劣化することのない肉体。
戦争などで種族の数が減少した等、余程の理由があれば別だが、子孫を残す必要がないんだと。
ヴェルドラさんをして流石に強いと言わしめ、実際に幾度か戦ったことがあるものの、数で来られると攻めきれなかったものだと昔を懐かしむように語ってくれたが、最後の喧嘩相手には丁度良い!で全部台無しになっちゃった気がする。
総じて魔族と呼ばれている。
知性があり、生殖能力を有して、人類に敵対する者=魔族ということだ。
そして当のヴェルドラさんだが……彼には生殖能力が無いというか必要ないらしい。
上述した通り、個にして完全なる者だからか、そもそも寿命や肉体が存在せず、魔素の塊である彼は意思が潰えない限り不滅なのだそう。
『……さて、我のことは大体話してやったぞ。今度はお前達の話を聞かせろ』
あー、そうくる?
いやまぁ……どうしたもんかねぇ?
ここは正直に話すべき、かな?
悟さんに目配せする。……あれは、頷いているな多分。
俺は心を決めると、これまでの出来事をヴェルドラさんにつらつらと語りだした。
キュートなスライムこと俺は、レイタロウさんの話を一通り聞いて、ある一つの感想を抱いていた。
それは―――〝マジヤバくね?〟だ。
『ヒーロー、怪人、地球……どれも我にとっては聞き慣れん言葉だな』
「……まぁそうでしょうね。この世界と俺の暮らしていた世界は明らかに違いますし」
レイタロウさんの暮らしていた世界は、怪人災害と呼ばれる天災がひっきりなしに勃発する世紀末な世界観らしく、そんな怪人災害に対処するための存在、つまりプロヒーローが日夜現場で戦い続けることで人類の平和を守っているとのこと。
怪人……この世界における魔物とほぼ同類の存在で、主に悪癖の偏重やコンプレックスの肥大化等が原因で、ついさっきまで普通の人間だったヤツが異形の化け物に変貌を遂げるなんてことがままあるとのこと。
驚きなのが、そこに魔素や魔力と言った異能の力は必ずしも介在しておらず、それこそ何の力も持たない一般人が心の持ちよう次第で脅威的な化け物に成り果ててしまう、そんな地雷原だらけの世界が実在する点であった。
『その……レイタロウさん。聞きづらいんだけど……』
「悟さん。言わんとしていることは分かるが、その上で断言する。……俺は怪人であると同時にヒーローなんだ」
ヒーロー……怪人と対を成すように存在する超人達で、怪人の脅威に立ち向かい、時には一般人を守ることを旨とする正義の味方とのこと。
レイタロウさん曰く、怪人とヒーローは表裏一体であり、自らの力に溺れて怪人化した存在を怪人、人としての心を保ったまま怪人化した存在をヒーローと大雑把に区別するらしい。
……仮○ライダーみたいなもんか?
そう考えると、あのゴツゴツ凶悪怪獣ボディーも、どこかヒロイックに見えてくるから不思議だ。
「まっ俺がヒーローであることを証明する物は何もないけどね。俺がもし身も心も怪人だったなら、今頃この洞窟を木っ端微塵に吹き飛ばして外の世界に出ているだろうさ」
『……じゃあさじゃあさ、レイタロウさんから見て、俺はどんな感じ?』
「うぅん、怪人と呼ぶには
『アハハー。だよねー』
『……おい、お前達だけで会話するでない』
あ、ヴェルドラさんが拗ねた。
「あぁいやいや、無視してたワケじゃないですよ?……要はこの世界に転移してきたってだけの話ですから」
『俺はどっちかって言うと転生かな?』
『……ふむ。そこのスライムは転生者だったか。お前、物凄く稀な生まれ方をしたな』
『え、稀な生まれ方?……っていうか、転生者だなんて、疑ったり驚いたりしないんですか?』
なんだこの反応。
転生者って珍しくないのか?
生まれ方のほうが珍しいみたいな言い方だぞ?
『ふん。転生者はたまに生まれてくることがある。意思が強いと魂に記憶が刻まれるのだろう。中には前世とやらを完全に覚えている者もいるようだが、珍しい存在ではない。ただし、異世界からの転生者は少々珍しいな。まして、普通は人に生まれるものだ。魔物ならまだしも、魔素から生まれて来るなど、我は聞いた覚えが無い。世界渡りに耐えられる強い魂を持つ者はただでさえ少ない。まして、転生先が魔物では安定して定着せず、魂が消滅するのだ。お前は特殊だよ』
『そうなんスか?自覚はないんですがね。……で、異世界からの転生者やら転移者って居ることは居るんですね』
『うむ。こちら側から異世界へ行く方法は我の知る範囲だといまだ成功事例がない。しかし、異世界からこちら側へ時たま
なるほどな。異世界ってのが俺のいた地球かどうかは判らないけど、会ってみるのもアリかもしれない。
もしかしたら同郷の日本人もいるかもしれないし。
何の目的も持たないのだから、一つくらい持つのもいいだろう。
『なるほど!……では、異世界人とやらに会いに行ってきます。もしかしたら同郷かもしれないし!』
『……そうか、行ってしまうのか』
うわっ、露骨に寂しそう。
そんなヴェルドラさんを気遣うようにレイタロウさんが声をかけた。
「ヴェルドラさんは、動けないでいるんですか?」
『うむ。三百年前に勇者に封印されて以来このままよ』
「勇者……いるんだ。その勇者って強かったんですか?」
『あぁ強かったぞ。見た目は可憐な少女といった感じだが、ユニークスキル『絶対切断』と『無限牢獄』を駆使して我を封印せしめたのだ。……やや小柄でほっそりしていて、白い肌に黒銀の髪を纏めていて、真紅の小さな唇が特徴的で……』
「ガッツリ見てるなおい。……もしかして見惚れるあまり封印されたんじゃ?」
『ばっ……そんなワケなかろう!(汗)』
もう分かっちゃったね俺。
こいつ多分、人が好きなんだ。
口では雑魚だのゴミだの言いながら、襲ってきた者を殺したことはないみたいだ。……逆鱗に触れない限り。
まぁ他人の気持ちが分からないのに竜の気持ちなんて到底分かりようもない。
……でも、こいつは悪い竜ではないんだろうと思う。
だって、気に入ったし。
もう怖いとは思わなかった。
だから―――
『よし!じゃあ自分……いや、俺と友達にならないか?』
……ちょっと、いや、かなり恥ずかしい。
今の俺は、顔真っ赤だな。
『なっ……ス、スライムの分際で、この暴風竜ヴェルドラとトモダチだと!?』
『い、嫌ならいいんだけど……』
『馬鹿お前!誰も嫌だなどと言っておらぬだろうが!!』
「……ふっ、素直じゃないねぇ」
『え、そう?じゃあ……どうする?』
『……そうじゃなあ。……どうしてもと言うなら……考えてやっても……』
なんとなく、こっちをチラチラ見てくる感じ。
可愛い女の子ならいいが、邪悪な見た目のドラゴンにされても嬉しくはない。……面白いけど。
『どうしても、だ。決定な!……嫌なら絶交。二度と来ない!』
『ちょっ……し、仕方ないな!我が友達になってやるわ! 感謝せよ!』
……ふっ、この竜も素直じゃないわ。
まっ俺も素直じゃないから、おあいこだな。
『おう、よろしくな!』
「ついでに俺も友達ってことでよろしくね」
『よろしくの!……そうじゃスライム。お前に名前をやろう。お前も我に名前を付けよ!』
『は?何でだ?突然何を?』
『同格ということを魂に刻むのだ。人間でいうファミリーネームみたいなものだ。我がお前に付ける名は加護になる。お前はまだ名無しだが、これでネームドモンスターを名乗れるぞ!』
むむ。……つまり、俺がファミリーネーム(=この竜との共通の名前)を考えろってか。
センスないんだけどなぁ……。
「あっと、ちなみに俺は……?」
『お前はスライムと違って転移してきた異世界人だろう。元いた世界で名乗っていた名前がしかと魂に刻まれておる。名付けの必要はあるまい』
「なるほどねぇ……」
う〜ん、暴風だから〝テンペスト〟とかでいい……かな?
駄目だよな。
簡単に響きがいいから、暴風=嵐 とか、安直すぎるか。
『決まりだな!素晴らしい響きだ!!』
気に入ったのかよ!
『今日から我はヴェルドラ=テンペストだ!そしてお前には……リムルの名を授ける。リムル=テンペストを名乗るがよい!!』
「……リムルさん、中々良い響きじゃない」
その名前は、俺の魂に刻まれた。
見た目にも、能力にも変化はない。
だが、魂の奥深くで、何かが変化した。
それはまた、ヴェルドラにも言えることなのだ。
こうして俺達は、友達(というよりは、より深く〝魂友〟とも呼ぶべき関係)になった。
ステータス
名前:リムル=テンペスト
種族:スライム
加護:暴風の紋章
称号:なし
魔法:なし
技能:ユニークスキル『大賢者』
ユニークスキル『捕食者』
スライム固有スキル『溶解、吸収、自己再生』
スキル『水圧推進』
エクストラスキル『魔力感知』
耐性:熱変動耐性ex
物理攻撃耐性
痛覚無効
電流耐性
麻痺耐性
ステータス
名前:レイタロウ
種族:怪獣王
加護:星の紋章
称号:〝最高〟の英雄
魔法:■■■流気功術
技能:
固有スキル『適応進化』
耐性:全耐性ex
可愛らしいスライムからリムル=テンペストに進化した!
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