転移したらスライムと一緒だった件:REY   作:びよんど

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霊験あらたかな結界を張るって話です。


四方の王の陣

 

 

「……では、これよりドワルゴンと、ジュラ・スターモンズ連邦国における協定の証として、両国の代表による調印を行います」

 

 

結婚式の後の調印式は、いたって厳かに執り行われることとなった。

 

とはいえ難しく考えることもなく、酒の席で約束したことをそのまま文字として記し、そこにガゼル王と俺ことレイタロウの名前を書き記していけばいいだけだ。

 

一応簡単に目を通し、念のため『智慧之王(ラファエル)』先生の検閲も経た上で署名し、そのまま魔法によってパーッと各国へと知れ渡っていった。魔法スゲー。

 

……そう、俺達の国の名前が初めて世に知られたのだ。

 

ちなみに、この国の中央に位置する町の名前は中央都市リムルとした。

 

当のリムルさんはメチャクチャ恥ずかしがっていたが、俺も含めた全員によって押し切らせてもらった。

 

やったね、この国に自分の名前が刻まれたよ!

 

 

 

 

 

「……してレイタロウよ。ジェーンから聞いたが、この国をスッポリ覆えるほどの大結界を張ろうとしておるらしいな?」

 

「そうとも。……せっかくだから見てもらおうと今日まで持ち越していたが、見ていくか?」

 

「わざわざ俺が来るまで待っていたとはな。これは一度でも目にしなければ失礼と言うものよ!」

 

 

そう言って豪快に笑うガゼル王ほか配下の人達を連れて、俺はこの町の中心に当たる広場へと足を運んだ。

 

ありのままの自然が円形に残された広場で、普段は町の住人達の憩いの場所となっているところである。

 

 

「お待ちしておりました。レイタロウ様」

 

「準備は整ってございます」

 

「我輩達はいつでも舞い踊れますぞ!」

 

 

一足先に広場で準備するように命じておいたシュナゲルド、そしてガビルが出迎えてくれた。

 

その周囲には、巫女装束に身を包んだ約五十名ほどのゴブリナ達と、斎服(さいふく)に身を包んだ同じく五十名ほどの亥眼機兵(ガイガンミレース)達、そして民族衣装に身を包んだ魔翼竜人(ラドニュート)が控えている。

 

魔翼竜人ってのは、ガビルが引き連れてきた蜥蜴人族(リザードマン)にリムルさんが名付けを行い、進化を果たした連中である。

 

なんというか、ガビルと違ってマグマに弱そうな感じがするが、あくまで俺の偏見に過ぎない。

 

 

「この場にいる者以外の配置は済んだか?」

 

「万事、滞りなく完了いたしました」

 

「よろしい。では早速始めよう。……リムルさん」

 

「ホイホイ」

 

 

俺と横並びに歩いていたリムルさんに声をかけ、指定の位置につくよう顎で指図する。

 

リムルさんは何か文句を言うでもなく、あらかじめ決められた位置へと急ぎ足で向かって行った。

 

指定の位置とは、つまるところ広場の東側だ。

 

シュナは西側、ゲルドは北側、ガビルは南側。

 

この広場を四方から囲い込むように指定の位置に散っていった。

 

 

「……まさかお前達に結界を張る技術があろうとはな」

 

「全部盗み見たものだ」

 

「……はっ?」

 

「だから、これから張る結界の技術やノウハウは()()()()の結界を見て盗んだものなんだよ」

 

「ちょ、ちょっと待て……見て盗んだだと?」

 

「当然、それはドワルゴンからじゃない。西方に位置する魔物を敵視する宗教国家の守護結界を参考にさせてもらったのさ」

 

 

答えは皆お分かりの通り、ルベリオスである。

 

ドワルゴンとの関係が拗れず、なおかつ参考たりうる結界ノウハウを蓄積させた国となるとそこくらいしかなかったというのもあるが、そこを拠点としていたのが〝真なる魔王〟だったからというのも理由として挙げられる。

 

先達にあたる魔王の(おうち)を守る結界だ。

 

……その完成度はハッキリ言ってずば抜けていた。

 

だからこそ、それを参考にして俺が更なるアレンジを加えたのが、これから張る結界である。

 

 

「……お前はもう少し腹芸を覚えろ。驚くどころの騒ぎではないぞ」

 

「ハッハッハ、実際に現地に行ったワケじゃない。いわゆるスキルの応用さ」

 

「……聞かなかった、俺は聞かなかったぞ」

 

「さ、俺達は中央に向かうとしよう」

 

 

聞か猿のポーズで耳を塞ぐガゼル王を催促し、広場の中心へと歩を進めた。

 

 

 

 

 

《告。個体名リムル=テンペスト及び個体名レイタロウ・スターモンズの元に、系譜に連なる魔物達からの大量の貢物(スキル)が届いております。取捨選択して『能力改変』を行いますか?》

「いい感じに統廃合してくれれば、後は先生の好きにして構わないよ」

《了。貢物(スキル)の統廃合を試行中……》

 

『おーいリムルさーん。順調かー?』

 

「お、レイタロウさん。……今のところはな」

 

 

それは良かった。

 

配下の魔物達が心を一つにして差し出しているスキルを統廃合している『智慧之王(ラファエル)』先生の声色は、心なしか弾んで聞こえた気がした。

 

 

『にしても、まさかガゼル王のスキルを模倣(コピー)しておきたいなんて言うなんて、先生も大概強欲だよねぇ』

 

《否。個体名ガゼル・ドワルゴのスキル『独裁者(ウエニタツモノ)』の効果は、応用すれば人の心のみならず力の流れすら読み抜くことが可能であるため、そのスキルを個体名レイタロウ・スターモンズ越しに複写し、今回の結界展開に利用する手段を提案したまでです。決して強欲から来る選択ではありません》

 

『……ま、それが成功確率を100%に押し上げるっていうのなら、バレない範囲でならやってくれてもいいけどさ、間違っても簒奪しないようにね?』

 

《……解。弁えております》

 

 

力の流れまで読み抜けるというのなら、それは確かに今回の結界展開を成功させる上で必要不可欠なモノだ。

 

なにぶん繊細な魔素(エネルギー)コントロールを必要とする作業だからねぇ。失敗したら目も当てられん。

 

 

『さぁて、そろそろ始めるかぁ……あ、そうだ』

 

「どしたん?」

 

『リムルさん。『智慧之王(ラファエル)』先生に〝名付け〟はした?』

 

「なんなの(ヤブ)から棒に」

《問。脈絡がなさすぎます。説明を求めます》

 

『いや何、念には念をと思ってね。……名前を与えることで少しでも能力を高めてもらおうかなーっと思ってさ』

 

 

ま、その場の思いつきなんだけどね。

 

よくよく考えれば先生、名前無かったじゃんってさ。

 

 

「そうだな……いつも俺達に色々教えてくれるから、教える、おしえる、お、シエルなんてどうだ?」

《!!!!!!!!》

 

 

瞬間、先生の狂ったような激しい意思を感じた。

 

同時に、奔流となって様々な情報が俺達の中に溢れ出す。

 

 

《告。究極能力(アルティメットスキル)智慧之王(ラファエル)』より神智核(マナス):シエルが誕生しました。

 この宣告は、神智核(マナス):シエルにより秘匿されました 》

 

 

どうやら俺は、とんでもないことをリムルさんに提案してしまったようである。

 

自分のスキルに名前を付けるような変態など古今東西俺とリムルさんくらいしかいないだろう。

 

 

《ワタシ、私は、シエル。神智核(マナス)であり、能力を統合する者。

 〝魔王の右腕〟リムルの魂にて、主の補助(サポート)を行う者です。御主人様(マスター)、改めて宜しくお願いします!!》

 

 

わぁ。『智慧之王(ラファエル)』先生、もといシエル先生の情緒が一気に豊かになったゾイ。

 

心なしか、リムルさんの演算速度その他諸々の性能も向上したような気がするぉ。

 

なんてことない思いつきから、ビックリ仰天な結果になったもんだ。

 

 

「よろしくな、シエル……?」

《はい!よろしくお願いしますリムル様(マスター)!》

 

『シエル先生。今後ともよろしくねぇ』

 

ビクッ!!《は、はい。よろしくお願いいたします》

 

 

あれ、俺もしかして、怖がられてる?

 

 

 

 

 

ま、まぁ、シエル先生はそれでもやってくれる御方だから全然マシだよね。

 

ちょっと怖がられたり引かれたりしたくらいで泣くほど、俺の心は弱くないからね!ねっ!

 

 

「何故そんな今にも泣きそうな顔をしておる?」

 

「……何でもない。そろそろ始めよう」

 

 

センチメンタルな心を抱えながらも、俺は精神を統一し、その他一切の邪念を振り払った。

 

 

ドッ ドッ ドッ ドッ ドッ ドッ ドッ

 

 

円陣に当たる中央広場の中心に立つ。

 

四方を飾るシンボルには、四名の真なる魔王。

 

そして俺は目を閉じ、呪文を唱えた。

 

 

ドッ ドッ ドッ ドッ ドッ ドッ ドッ

 

 

ヨド ヘー ヴァウ ヘー アドナイ ツァバォト エーヘーイエー アーグラー

 

「む、何を行ってお―――ッ!!?」

 

 

俺の足元より突然現れた五芒星(シンボル)は、目を潰さんばかりの白光を放ちながら凄まじい勢いで規模を拡大させていき、やがてこの町をスッポリ覆うほどにまで成長していった。

 

次いで、聖なる四王を体現した四人の真なる魔王をイメージする。

 

 

ドッ ドッ ドッ ドッ ドッ ドッ ドッ

 

 

「虚空より陸海空火の透明なる四人の王をここへ呼ばん。この陣にて我らを保護し、暖め、守り、防御したる火を灯し次第」

 

「なっ、なっ……!?」

 

「どうしたのだジェーン!分かるのか!?」

 

「まさか……そんな……!?」

 

「答えよジェーン!」

 

「か、()()()()()()()()()()()()()()()()()のかい!?」

 

「な、に……!」

 

 

ドッ ドッ ドッ ドッ ドッ ドッ ドッ

 

 

東の方角を向く。

 

智慧之王(ラファエル)』先生からシエル先生になった彼女の助けを借り、リムルさんは現在、魂の系譜に連なる配下の魔物達のスキルを神速で統廃合していき、儀式に向けての最適化を図っていた。

 

……ついでにリムルさんのスキルも統廃合されていた。

 

 

「幸いなれ東の王。その御霊は山より立ち昇る微風にして。黄金色の衣は輝ける太陽の如し」

 

 

ドッ ドッ ドッ ドッ ドッ ドッ ドッ

 

 

西の方角を向く。

 

いつもの巫女服に身を包んだシュナが、その(はね)を目いっぱいに広げ、究極能力(アルティメットスキル)巨蟲之王(モスラ)』によって事象の解析を劇的に推し進めていく。

 

傍らに控えているトレイニーさん含めたゴブリナ巫女達もまた、シュナの助けとなるべく『無限並列思考』によってその負担を肩代わりしていた。

 

 

「幸いなれ西の王。その御名は波の下にて(たわむ)るる水の精をも震わさん」

 

 

ドッ ドッ ドッ ドッ ドッ ドッ ドッ

 

 

南の方角を向く。

 

本来ならそこは、炎の上位精霊に転生したシズさんのポジションであったのだが、同じく炎をその身に宿すガビルが真なる魔王となったことで、その補佐に回ってもらうことにした。

 

民族衣装を着こなしてシッチャカメッチャカに踊り狂っているだけだが、まぁ大丈夫だろ。多分。

 

 

「幸いなれ南の王。永遠の炎より輝かしきは汝の威厳」

 

 

ドッ ドッ ドッ ドッ ドッ ドッ ドッ

 

 

最後に、北の方角を向く。

 

さながらガ○ガンを彷彿とさせる生体ゴーグルを発現させてその場から動かずにいるゲルド達。

 

ゲルドには、最も重要な仕事を与えている。

 

この大結界を張る儀式にかかる消費魔素(エネルギー)を効率化させ、その効果を少しでも引き出すというものだ。

 

シュナの支援を受けることで亥眼機兵(ガイガンミレース)達の思考領域も借り、更なる深淵に挑んでいる真っ最中であろう。

 

 

「幸いなれ北の王。なんとなれば、大地のすべての生きもの、汝の支配をいと喜びたるが故」

 

 

ドッ ドッ ドッ ドッ ドッ ドッ ドッ

 

 

その瞬間、四方を司る王達はその成長限界を突破した。

……そんな気がした。

 

さぁて、そろそろ締めだな。

 

 

「ありとある災い、我に近づかざるべし。我いずこにおれど、真なる四王に守護されたればなり」

 

 

魂の系譜に連なる配下の魔物達の()()()()に、大結界を維持するための〝結界魂石〟が打ち込まれる。

 

そして、外界にも劇的な変化が訪れていた。

 

この町を円状にスッポリと覆う極彩色のオーロラが発生し、それはあっという間に空に溶けて消えてしまったが。

 

断っておくが、無くなったワケではない。

 

……むしろこれは成功だ。完全なる成功である。

 

 

ドッ ドッ ドッ ドッ ドッ ドッ ドッ

 

 

アテー マルクト ヴェ・ゲブラー ヴェ・ゲドゥラー レ・オラーム……

 

 

これにより、儀式は相成った。

 

もう中心にいる必要もないため、さっさとガゼル王の傍にまで近付いていく。

 

 

「レ、レイタロウよ。……お前達は一体何を成した?」

 

「大結界を張った。……だけじゃ不足かな?」

 

「当たり前であろう!」

 

「……そうだな、簡潔に言えばこの結界は、内と外を分断する従来の結界ではない。出入り自体は自由だ」

 

「……はっ?」

 

 

そんなの、結界を張った意味が無いじゃないかって顔をしてるね。

 

勿論、それだけじゃないッスよ?

 

 

「この結界は共助と調和を司る特別製の結界だ。来る者を拒まず、去る者は追わない。この国に馴染もうと努力する者は、外部からの来訪者であろうとも受け入れられる。まさに我が国の国是を表した結界と言える」

 

「し、しかし、それでは結界の意味が無いに等しいではないか」

 

「……この結界は、住民の感情に反応して内部の概念や事象、運命が都合良く作り変えられる機能が備わっている。この意味が分かるかガゼル王よ?」

 

「「「「 っ〜〜〜!!? 」」」」

 

「……万一、この国の住民から不興を買うことがあれば、我らは無事では済まないと?」

 

「程度による。……もし、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、夥しい量の血が流れることになろう」

 

 

当然、相手側のね。

 

 

「とはいえ、ようやく基礎となる第一段階が完了したところだがね。これからドンドン第二第三の結界を張っていこうと思っているところだ。ハッハッハ」

 

「……やれやれ、同盟を結んだのは正解だったようだな」

 

 

これでひとまずは安心だなぁ。

 

ベースはあくまでルベリオス製だけど、結界を維持する結界魂石は配下の魔物達の魂と名前に打ち込まれている。

 

その配下達に改めてこの町を中心に活動してね?と申し付けておけば、結界の維持は万全となるだろう。

 

これで気兼ねなく、外国に赴けるというものだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……でもまさか、ここに天災級(カタストロフ)の魔王が急接近しているとは、この時は思いもしなかったけどねぇ。

 




マリアベルセル……失礼、ベル○ルクが元ネタです。

次回、あの暴君がやってくる!?
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