最古の魔王が来るって話です。
ドワーフの国の王ガゼル・ドワルゴを結婚式に招き、それと同時に国の守りを司る特別製の結界を構築してからはや一ヶ月が経過した。
今のところ結界の維持には何ら支障はなく、結界の維持に必要な
やぁどうも、俺はレイタロウ。
ジュラ・スターモンズ連邦国(以下魔国連邦と略する)国王にして〝魔王を名乗る者〟でもある男だよ。
「いらっしゃいませレイタロウ様!」
「ご苦労さん。三色団子三つね」
「はい!少々お待ちください!」
色々と言いたいことはあるけども、まぁまずは最近開店した〝三色だんご屋〟で団子を堪能しながら話そう。
「お茶でございます!どうぞ!」
「おぉ。ありがとう」
店を切り盛りするシー○ーズに似たゴブリナが差し出したお茶を受け取り、ズズズッと啜る。
店内を見渡すと、開店したばかりだと言うのに客がそこそこ入っており、人気であることがよく分かる。
……そう、この一ヶ月の間に、こちらに友好的なドワーフや魔物がひっきりなしに魔国連邦を訪れるようになり、ここ最近は毎日のように千客万来なのだ。
街道の敷設と並行して、こういった露店を数多く商業区にオープンさせたワケだが、正直見通しが甘かったと言わざるを得ない。
ジュラの大森林の交易路としてのポテンシャルは俺の想像を遥かに超えて高かったワケだ。
……この分なら、娯楽目的の施設を検討してみても良いかもしれないな。
「お、レイタロウさん。奇遇だな〜」
「リムルさん、シオン。……お団子が目当てかな?」
スライムボディーのリムルさんと、そんなリムルさんを持ちながらシオンが入店してきた。
「お待たせしました!三色団子でございます!」
「ありがとう。……同じの四つ追加できるか?」
「かしこまりました!」
そうして追加注文を終え、リムルさんとシオンに隣に来るよう手招きする。
「隣、失礼いたします!」
「よいしょっと……悪いねレイタロウさん。気を遣わしちゃって」
「それは別に構わんさ。君らも町の見回り?」
「そうで御座います!リムル様の御威光を改めて町中に知らしめることで治安の維持を図っているのですよ!」
「……ま、それはあくまでついでさ。町の外はソウエイ達が警戒してるから大丈夫だろうし、町の中はそれ以上に安全だし。それより何よりこの人混みの多さだよ!」
「分かる?……やっぱ、もう少し商業区のバリエーションを豊富にしたほうが良いよねぇ?」
「そもそもだよ、俺達ってそこら辺は完全に素人じゃん?やっぱりさ、信用できる外部の
「魔物の俺達を裏切らない有能な商人、かぁ……」
リムルさんと三色だんご屋で熱い議論を交わす。
さっきリムルさんは町の中は安全と言っていたが、それは俺も同意するところである。
何せ、共助と調和を司ると銘打った結界だ。
俺はそれを〝四方の王の陣〟と名付けたが、その本質は敵の侵入を拒む城塞などではなく、先程も言ったように共助と調和を保つ究極の
まずそもそもの大前提として、この〝四方の王の陣〟は結界によって内と外が分断されていない。つまりは
そんな結界は結界じゃないとおっしゃるそこのあなた!
……まさにその通りで御座います。
加えて、結界の維持に用いている結界魂石は配下の魔物達の魂と名前に打ち込まれており、物理的に破壊することはほぼ不可能。
つまり、この世界由来の結界よりも尚更破壊しにくい結界ということだ。
その効果の是非については、
一つ言えることがあるとすれば、こちらに反抗的な魔物や人は、今のところは確認されていないということだけ。
……が、
「っ、リムルさん!」
「分かってる!……これはヤバい!!」
アレは確実にヤバい。
三色だんご屋から外へと出た俺とリムルさんは、結界の
途中でリムルさんを追い抜いて独走しちゃったけど、待ってもいられないため仕方なく一人で征く。
そして、ものの数秒で結界の縁に到達した。
上空を見上げる。刹那の衝撃音。
爆煙を撒き散らし、大地を抉りながら着地した
その顔に、不敵な笑みを浮かべながら。
……思っていたより遅い到着じゃないの。
「初めまして。ワタシは魔王ミリム・ナーヴァだぞ!」
そんな美少女の口から飛び出した言葉が、まさかまさかの〝魔王〟……いやまぁ知ってはいたけどね。
「お前がこの町で一番強そうだったから、挨拶に来てやったのだ!」
「……クレイマンじゃなくて君が来るとはねぇ」
「わっはっはっは!あれはまさしく痛快な宣戦布告であったぞ!クレイマンに明確な殺意と侮辱を向けることで、ほかの魔王達の横槍を未然に防ごうとする思惑が見え見えであったがな!」
「アララ……バレちゃった?」
「残念であったな!ワタシの
ズイっと俺と相対するように近付き、上目遣いに俺を見上げるミリム。
……やー、これは何もかもバレちゃってるなぁ。
「クレイマンやカリオン、フレイの
「……君はなるべく乗っ取らないようにしたヨ?」
「やはりそうだったのだな!道理で第三者の視線を感じたと思ったのだ!」
「……怒らないのかい?」
「怒る?……それよりも俄然お前に興味が湧いたのだ!」
確かに、ミリムからは怒りの感情は窺えない。
……代わりに、とんでもなく恐ろしい形相になったけど。
「クレイマンの『魔王誕生計画』を台無しにし、オークロードすら配下にしてこんな面白そうな町を作り上げたこともそうだが、こうやって間近に見てもお前の
「なるほどねぇ」
「ならばと思い、お前に貸しをつくることを決めたのだ。ワタシの言いたいことは分かるな?」
「クレイマンを孤立無援に追い込んでくれたアレね。俺を意識してああ言ってくれたのなら、確かにこれは貸しに違いない。……で、俺は何をすれば借りを返せるのかな?」
はぐらかす……ような真似はしない。
こんなところで暴れられたら町が吹っ飛びかねないし。
俺のその言葉を待っていたと言わんばかりに、ビシッと人差し指をこちらに向けてドヤ顔を決め込んだミリム。
「ワタシと一対一で勝負するのだ!……えーと」
「……あぁごめんね。俺はレイタロウって言うよ」
「そうそれ!……レイタロウよ。クレイマンを倒し、その魔王の座を簒奪せんとするお前の野心には目を見張るものがある。だがしか〜し!この世界はお前の思い通りに動くとは限らないのだ!」
「もっともだ」
「うむ!物分かりが良くてよろしい!そこでッ!魔王としては最古参に当たるこのワタシが、魔王の真の強さと恐ろしさを叩き込んでやるのだ!光栄に思うが良い!」
「うん、いいよ」
「ほ、本当か!?」
「一対一で勝負するまではね。……で、その後は?」
「その後?」
「
あ、空気が変わった。
思いもしなかったことを指摘されたことが、そんなに意外だったのかな?
「……お前、ワタシに勝つつもりか?」
「勿論。こちとら魔王を許しもなく名乗っているからね。凄惨な死か、それとも巨大な栄光かの究極の二択を迫られ続けているワケよ。ここで勝てなきゃ俺は、ただの屍だ」
「……本気で魔王になるつもりなのだな」
「そうとも。だからもし俺が勝ったら君には俺の賛同者になってもらいたいが、どうだ?」
「……良かろう!ワタシが勝ったらお前を配下とする!」
お優しいことだな。
こっちは全てを差し出せと言われても受け入れるつもりだったのに……。
「決まりだな。……だが、今日戦うのは待ってもらえるか?」
「ん、何故だ?」
「そりゃあ、かの魔王ミリム・ナーヴァとの雌雄を決する戦いだからな。見届け人というか観客は一人でも多いほうがいいだろう?」
「おお!それは確かに一理ある!」
「それに、君には是非ともこの国を楽しんでもらいたいからねぇ」
「よ、良いのか!?」
「
「分かったのだ!お前の国の民を傷付けないと誓おう!」
良かった良かった。
ま、
……それを見越した上で言ってるのかもな。
「おーいレイタロウさーん!速すぎだってもー!」
「レイタロウ様ぁ!ご無事ですかぁ!!?」
「おぉ。二人とも遅かったじゃない」
「っ、離れてくださいレイタロウ様!その者は―――」
こらこら、お客さんに刃を向けるんじゃありません。
っていうか斬りかかるんじゃありませんシオン。
「やぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!?」
「おお。やるなレイタロウ」
どういたしまして。
まぁ俺のやったことなんて、シオンの大剣を指でつまむくらいのもんさぁ。
速さがあっても工夫が足りてない一撃なんて余裕余裕。
「な、何をなさるのですかレイタロウ様!?」
「いやいや、君こそ何をしてるんだい。……彼女は俺が直々に招いたお客さんだよ?」
「そうなのだ!」
「えぇ!?」
「そうだよ。だからベニマルもソウエイもランガも殺気立つな。頼むから」
「「「 ……かしこまりました 」」」
悪いね、俺のためを思って武器を抜いてくれたことはよーく分かってるよぉ。
でもさ、ここで戦ったら町にまで被害が及ぶじゃん?
俺的にはそれがよろしくないんだよねぇ。
「……ところでレイタロウさん。その娘は一体どなた?」
「あぁそうだった。彼女は魔王ミリム。最強最古の魔王にして、
「…………………………お前」
「え、何、何?」
俺が紹介する間に、リムルさんに近付いて凝視していたミリム。
最初は疑問符を張り付けていたその表情も、徐々に興味に移り変わり、やがて喜色が浮かび上がってきていた。
……そんな気がした。
そして、開口一番。
「お前も魔王を目指しているのか!?」
「うぇ!?」
「ということはつまり、レイタロウも
「え、いや、あの、何の話ぃ……?」
「決めたのだ!ワタシもこの国に住むぞ!」
「「「「 ……えぇぇぇぇぇ!!? 」」」」
えぇぇぇぇぇ!!?
なんで急にそんな話になるのぉぉぉ!!?
「レイタロウと比べて
「彼はリムルさんだよ」
「そうそれ!……リムルよ。お前も魔王を目指すのなら手加減はしないのだ!ワタシの手でビシバシ―――」
「あぁ俺、魔王目指す気ないんで」
「そんなぁ!?」
ミリムの嘆きが一帯に木霊した。
そういう面倒事というか、魔王になる役目は俺が一手に引き受けているから、まぁしょうがないよねぇ……。
魔王相対編。
またの名を、レイタロウvsミリム編とも言う。
そして、観客はどんどんと集まってきますよ……。