リムルの中にヴェルドラさんが入るって話です。
加筆・修正しました。
『……で、行く前に一応聞いておくけど、その封印って解けないの?』
『我の力では解けぬな。勇者と同格のユニークスキル持ちなら、あるいは可能性があるかもしれぬが……』
『ヴェルドラはユニークスキル、持ってないのか?』
『持っている。が、封印された時点で、全て使えないな。かろうじて、念話が出来るのみだ……』
本来、勇者のユニークスキル『無限牢獄』は、対象を永遠の時間、無限の虚数空間に封じ込めるスキルであり、現実世界への干渉を許すほど甘い能力ではないのだ。
この場合、念話だけしか出来ないという考え方のほうがおかしい。
時間とともに封印が弱まることもないのだ。
現実世界を認識し、念話だけでも干渉可能なヴェルドラのほうが異常なのだが……無論
『よし。友達を放っておくワケにもいかないし、一回アレを試してみるか……』
そう言って、俺はヴェルドラに触れた。
そして―――
《ユニークスキル『捕食者』にて、ユニークスキル『無限牢獄』を捕食します……失敗しました 》
……流石に、勇者の封印は格が違った。
眩い閃光を発し、ユニークスキルの干渉が行われたのだが、一瞬で跳ね返されてしまった。
僅かな綻びを作ったようだが、それだけだ。
直ぐにでも修復されてしまうだろう。
そもそも同じユニークスキルならなんとかなるか?という発想だけでなんとかなったら苦労はない。
どうにかできないか?
どうすれば……。
《解。ユニークスキル『無限牢獄』の一部解析が終了しました。脱出方法を提示致します。
肉体を伴う脱出は不可能です。物理的ダメージによる牢獄の破壊の可能性は0%です。
虚数空間の解除による脱出は解析出来ません。
同様の状況=『無限牢獄』に囚われ、内部から解析を行う必要があります。故に、現在は行使不可能です。
意思体のみの脱出の可能性は1%です。
外部に自らの依代を用意し、そこに移行を行う場合、成功率は3%です。
なお、このプロセスは〝転生〟に相当します。依代との相性が悪い場合、記憶と能力の全てが消去されます。
脱出方法の提示は以上です 》
『……おい。自分のスキルとばかり会話するでない』
……ふむ。
成功率が低すぎる。
揺らめく透明な膜にしか見えない、ユニークスキル『無限牢獄』
しかし、物理ダメージでの破壊が不可能ときたか……。
ひょっとすると、絶対防御の能力を併せ持つとかもありそうだ。
『なぁ。勇者ってダメージ受けてた?……というか、傷ついたりしてた?』
『よくぞ聞いてくれた!我の攻撃はほぼ躱されたのだが、何発か直撃したのだ!だが、全て効果を及ぼさなかった。死を呼ぶ風、黒き稲妻、破滅の嵐さえも。絶対回避不可能なのだが効果なし!お手上げよ!笑ってしまったわ!!』
……などとほざきながら高笑いするヴェルドラ。
ユニークスキル『無限牢獄』は、自分の身を覆うことで外部からの攻撃を防ぐ盾にもなるのだろう。なんて便利なスキルなんだ。
ユニークスキル『絶対切断』
ユニークスキル『無限牢獄』
この二つが揃うなら、ほぼ無敵なんじゃないだろうか?
……出会いたくないが、300年前の人物。
すでにお亡くなりになっているだろうから、大丈夫と思いたい。
仮に今も存命なら、間違いなく最強クラスだ。
「『大賢者』……俺の能力をもってしても確率は低いのか?」
『『 えっ 』』
《解。現状はリムル=テンペストの能力の及ぶ範囲での脱出方法を割り出しました。同盟者レイタロウの能力を加味した上での成功確率も既に割り出しています。能力の開示とともに確率の提示を行いますか?》
「無論〝YES〟だ。手は多いほうがいい」
なんとなんと、さっきまで黙りこくっていたレイタロウさんが口を開いたと思ったら、自分自身の能力の開示をすると言うじゃないですか。
『い、いいのかレイタロウさん?』
「……構わんさ。
少々含みのある言い方だったが、彼ならもしかしたら何とかしてくれるかもしれないという確証のない期待で胸が(胸なんてないけど)膨らんでしまう。
そして、『大賢者』の口から聞き慣れないワードが次々と飛び出してきた。
《解。
裁定者:正義之王の超強化版。正義之王の能力に加え、究極能力以下の全てのスキルを管理・監督する絶対権を有し、所有者の意のままに下賜・簒奪・使用することが出来る。
これに抵抗することは不可能であり、そもそも抵抗の意思を持つことすら無い。
神の怒り:憤怒之王の超強化版。無限に湧き続ける魔素、あるいは『気』を意のままに制御・変質させることが出来る。
所有者が一度でも触れたものなら虚無崩壊であろうと忠実に再現することが可能である。
無窮練武:一度見聞きした武術や魔術と言った〝技術〟を寸分の狂いなく再現・習得する究極の学習能力。
自らの技を他者に伝承する際、対象の人物にもこの能力が適用される。
三流の喜劇:その次元に根付く覆しようのない絶望的な過去・現在・未来を覆し、所有者が求める〝
所有者の放つ言動全てが所有者にとって好意的に解釈される副次効果も有する。
原初の王:
過去・現在・未来を問わず、その時空に生じた、あるいは生じる可能性が生じた究極能力を問答無用で手中に収めており、現在の状況は謂わば〝貸し出し〟に相当する。
当然、所有者が返却を命ずれば所有者の元へ返却が為される。これは自然の摂理であり、異論を挟むことは出来ない。逆に貸し出す際も同様である。
適応進化:所有者に触れ得たあらゆる事象を時間をかけて解析し、その事象を超克するために肉体を更新し続ける無限進化体質。
適応対象から抵抗を受けた場合、適応にかかる時間は大幅に短縮され、適応の深度もより深まる。なお、適応が完了しても完結することはなく、時間をかけるごとに適応のバリエーションが豊富になっていく。
『裁定者』の力をもってすれば肉体を伴った状態での『無限牢獄』の脱出が可能です。その成功率は100%》
『……マジヤバくね?(ーー;)』
そんな感想しか出てこなかった。
どっから突っ込んだほうがいいのやら……取り敢えず分かったことと言えば、スライム如きがゴジラに立ち向かうなど自殺行為でしかないということくらい。
いや、俺のビルドをツリ目気味のヘドロ方面にすればワンチャン……何をバカなことを考えているのかね俺は。
「100%か。この『裁定者』とやらを使えば、今のままのヴェルドラさんを解放できるんだな。……ドラゴン姿の、ヴェルドラさんを?」
《解。その通りです》
『む、脱出方法があるのか!?』
「……ちなみにヴェルドラさん。君は、その姿でどれだけ暴れまわったのかな?」
『なんだなんだ、そんなに我の武勇伝が聞きたいのか?しょうがない奴だなレイタロウは〜!』
「いや結構。……その反応で大体分かったよぉ」
レイタロウさんの塩対応にむくれたヴェルドラを見つつ、俺はハッと思い至った。
……レイタロウさんが何を考えているのかを。
『レイタロウさん……もしかしてヴェルドラの世間的な評判を気にしているのか?』
『なっ!?』
「……俺がちょちょいとスキルを発動すれば、ヴェルドラさんはすぐにでも解放される。……が、そうした場合、外の世界で散々暴れまわっていたヴェルドラさんが、果たして皆に受け入れられるかどうかが気がかりなんだよ」
『レ、レイタロウ、我のことを思って……(泣)』
『問題児を勝手に連れ出して、後で問題にならないかってことだな?』
『リ、リムル、お前……(怒)』
「それはこの際しょうがない。友達を放っておくワケにもいかないからねぇ。……問題は、俺達の見た目さ」
……あ、そうだった。
キュートで愛らしい饅頭みたいなスライム。
ゴジラを人型に押し込めたような筋肉モリモリマッチョマンの怪物。
見るからに邪悪そうなドラゴン。
誰の目から見たって人間じゃないと分かるくらいにはバリエーションに富んだモンスターフレンズだ。
この世界で魔物がどう扱われているか、大体想像できていたにも関わらず、ヴェルドラを解放することの重大さを理解しきれていなかった自分の浅はかさをつい恨めしく思ってしまう。
「けど、やる」
『『 っ!!? 』』
「外の世界にどんな影響がもたらされるか、それは今は考えないことにする。……俺達の友達が疎外されないためにあらゆる最善を尽くすぞ。リムルさん」
《告。『裁定者』の使用が確認されました。『無限牢獄』が無力化されていきます》
『っ、お、おう!』
俺は一体何をすればいいの?
……そんな問いを投げかける暇もなく、ヴェルドラを囲っていた揺らめく透明な膜はあっという間にその存在理由ごと消失してしまった。
『お、おお、動ける、動けるぞ!?』
『うわー、マジか』
暴風竜ヴェルドラ、その復活の瞬間である。
……なんだけど、全くと言っていいほど高揚感がない。
ただただ、レイタロウさんマジすげーという感想しか湧かなかった。
『……してレイタロウよ。先程からリムルは何もしておらぬが、リムルには何をさせるつもりなのだ?』
騙されたな馬鹿者共めグハハハハ!……という展開にはならなかった。
意外なほど大人しくその場で佇むヴェルドラ。
気の所為……じゃないな。
ヴェルドラの全身から放たれるプレッシャーが、凶悪なまでに増幅したのを肌で感じる。
そんなヴェルドラだったが、今は心底不思議そうに小首を傾げてレイタロウさんを見つめていた。
「ヴェルドラさん。ここから先はあくまで提案なんだが、リムルさんの胃袋に入るつもりはないか?」
『……へぇ?』
『……ほぅ』
……人のことを言えた立場じゃないけれど、そういう大事な話は前もって相談してくださいよ。
いやマジで。
無理矢理感が半端ないですが、それでもこれだけは言わせてください。
……この程度、まだまだ序の口ですよ。
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