信頼されたからにはしょーがねぇ!って話です。
「英雄になれだって?……この俺に?何言ってんだアンタ……?」
疑問符がたくさん生えてそうな反応をするヨウム君。
まぁしょうがない話だよねぇ。
つい最近まで矯正施設に収容されていたような不良青年に、お伽噺に出てくるような英雄を演じろなどと言うのはあまりに酷な話だ。
だが何も、突拍子の無い話というワケではない。
ヨウム君には英雄を名乗れるだけの素質がある。
それを見越した上での提案だ。
「……君が俺の配下であったらば、あるいは強制することも出来ただろうがな。これはあくまで俺個人からのお願いと思ってほしい。断ったとて、それを不敬と切り捨てる矮小な心は持ち合わせておらぬ」
「つったって……」
「それに、先程フューズ殿が言ったように
「はぁ……!?」
「オークロードに挑もうとする勇敢な若者達を支援し、武器、防具、食糧を提供した魔物達の国。……人類とも仲良くしたい我が国としてはそういう立ち位置が望ましいのだよ」
悪いスライムじゃないよってね。
まぁこの試み自体、ぶっちゃけ成功しなくてもいいかなぁとは思ってる。
どうせ正式に魔王になる予定なんだし、どう足掻いても人類に恐れられる存在になっちゃうんだよなぁ。
だからこそ、仮に断られたとしても損が出ないローリスクな提案をしたというワケだ。
「……その計画、ブルムンド王国も協力できるかもしれません」
「ほぅ……真か?」
「知り合いの大臣に掛け合えば周辺諸国へ噂を流すことくらいは出来るでしょう」
「っ……おいおいアンタまで何その気になってんだ!こいつら魔物だぞ!?」
「君の困惑も理解できる。……だが、彼らとの友誼を得ることは人心の混乱を避ける以上の意味がある」
「どういうことだよ……?」
「一つ教えよう。……我々が知り得た情報では、この国の国民一万余は一人残らず全て
「なっ……!?」
「彼らがその気になれば、この場にいる我々はおろか、国が一つ滅びてもおかしくはない」
やれやれ、脅すつもりはなかったんだけどなぁ。
やっぱこうなるのか……自称とはいえ魔王は辛いぜ。
「勿論あなたが本当に人間の敵ではないことが大前提ですがね」
「それは当然だな。俺の目標は世界征服などではなく、広くてもこのジュラの大森林に収まる範囲を
「ああ、それは助かります(……理想郷、だと?この王は本気でそんなことを、いや、俺はまだこの王の全力を見てすらいない。早くに結論づけるのは危険か……)」
「君もな、ヨウム君」
「っ……!」
「この計画の要は君だ。色よい返事をもらえたなら嬉しいが、それを無理強いするつもりはない」
「……ガラじゃねぇよ。俺に〝勇者〟の真似事でもしろってのかよ」
「あぁ、勇者を名乗ったらいかんぞ?」
ギリチョンセーフ。
ヨウム君を英雄から勇者にさせるところであった……。
ミリムとの何気ない会話を頭の中で再生し、ヨウム君にしっかりと忠告する。
「勇者を名乗れば因果が巡る。その称号は魔王と同じ特別な存在なのだ。俺との因縁を作りたくはあるまい?」
「っ、マジかよ……!?」
「俺に付け狙われたくなければ精々〝英雄〟に留めておくことだな」
「……お待ちいただきたい。あなたはまさか……?」
「魔王を名乗っているよ。十大魔王に属していない自称魔王だがね。まぁそれも時間の問題だろう」
「えぇぇぇぇぇぇ!!?」
フューズさんの絶叫が会議室に木霊する。
ハッハッハ……逃さないよ?絶対にね♡
「……オークロードの軍勢に見つかり調査団は全員死亡。伯爵にはそう伝えろとヨウムさんに言われました」
「なるほど、死んだことにすれば追っ手もかからないか」
その後、外の空気を吸いたいと言って出ていったヨウム君の外出を許可し、その場に残ったロンメル君にヨウム君の人となりを聞いていた
「はい。私は報酬を貰った上で彼らと合流する手筈でした。そこで、団員達を前にヨウムさんは言ったんです」
『どうせファルムスに戻ったって元の強制労働が待ってるだけだ。それが嫌なら俺に付いてきな』
「ほぉ……」
あらやだイケメン。
そんなくさい台詞、俺でも言えるか分からんよ?
「そんな言葉、ちょっと言えないですよねぇ。……でも、不思議と説得力を感じたんです。その時にはもう、彼が仲間を大事にする男だと知っていたからでしょうか」
さて、ロンメル君との会話もそこそこに、町へと繰り出したヨウム君を観察していこうと思います!
実況はこの私、ジュラ・スターモンズ連邦国国王を務める自称魔王、レイタロウが務めさせていただきます!
「お兄さんこれどーぞ!」
おーっと、アテもなく彷徨っていたヨウム君の視線の先には、ゴブイチが経営している串肉屋がッ!?
なんとも
「(毒じゃないだろうな?……変な味がしたらすぐ吐いてやる)」
何だかんだ愚痴りながらも串肉を受け取ったヨウム君!
空腹には逆らえなかった模様です!
手に取った串肉に勢いよくかぶりついたぞぉ!?
味のほうは―――
「うっっっめぇぇ!!?うっめぇぞコレ!?」
……最高だぁぁぁぁぁぁ!!!
美味い判定、いただきましたぁ!!!
これにはゴブイチもニッコリ笑顔!!
「でしょ?レイタロウ様やリムル様も絶賛した串焼き肉なんだから!」
「……なぁ。レイタロウ…さんってどんなリザ…ヒトなんだ?」
おぉっとここで、俺の人となりを聞いてくるヨウム君!
そんなヨウム君の質問に対しゴブリナ(ごめん、全員の名前は流石に覚えきれないや。後でシエル先生に聞くね?)が勿体ぶらすように考え込む!
これは俺も気になるぞぉ!?
「そうねー。なんていうのかなー。……あ、とっても大きな御方、かな?体格もだけど特に
「(うん、まぁ……その通りではあるが)」
おぉこれは……まんまの回答だぁぁぁぁぁぁ!!
どう反応すればいいかちょっと迷うぞぉ!?
ドンッ「っ、いってーな!なんっ……!?」
「すまない」
ここでダイナミックエントリー!!
ラウンド
「(でかっ……!?)」
「肉を落としてしまったな。申し訳ないことをした」
肉を拾うと見せかけての昇竜拳!!
……とはならなかった。
拾った肉を先程のゴブイチ達に見せて、事情を説明しているぞ!?
これはまさかの……一対三の蹂躙劇の幕開けかぁ!?
「(オーク?……オークってこんなに理性的な魔物だったっけ?逆に強そうなんだけど!?)」
「持っていけ。……詫びだ」
「(六本)……いやいや、多すぎだろ!!」
「気にするな。客人を空腹にさせるワケにはいかない」
「何のポリシーだよ!?」
これは……まさかまさかの和解エンドだぁぁぁぁぁぁ!!
重ねた努力、麗しい友情、輝かしい勝利……!
その全てが、俺の目の前に広がっているぅぅぅ!!
でも、カッコよさではゲルド二世の圧勝だぁ!!
「ゲルドさんが町にいるなんて珍しいね?」
「今日の
「それ、休息できたって言うのー?」
「むしろ工事の進捗が気になって仕方ないのだが……休みを取らねば今後の評価にも響いてしまう。何とも悩ましいところだな」
「アハハ、レイタロウ様は気持ちも休めろって仰ってたじゃない」
「うむ、分かってはいるのだが……」
隙を見て戦線離脱を図ったヨウム君。賢明な判断だ!
さぁ、どんどん町の中を駆け巡っていくがいい!
「レイタロウ様のお客様ですよね?……リンゴをお一つどうぞ」
「お、おぅ(……まったく)」
「レイタロウ様の立派な髪型を真似て盾に刻んでみたんだ。どうだ?」
「お守りかぁ」
「(この町のヤツらときたら……)」
「さっき会議室にいたヒトだ」
「ホントだ。レイタロウ様と何を話されてたんだろ?」
「(レイタロウ様レイタロウ様と……)」
「そんなことでレイタロウ様の諜報員が務まるかッ!」
「「「「 はっ!! 」」」」
「(飽きもせずによく言うぜ……)」
「「「 お兄さん、レイタロウ様のお友達ぃ!? 」」」
「(……やれやれだ)」
「……心は決まったか?」
「………」
町を一望できる小高い丘の上で、ヨウム君は中天に差し掛かった日の光を浴びながら考え込んでいた。
いまだ迷いはあるのだろう。
一介のゴロツキとして平坦に生きるのか、それとも英雄としてリスキーな人生を送るのか。
生き方を決められると言っても、その二択を突き付けられて即決できる輩は多くない。
「……俺は調査団の頭だ。野郎どもを守ってやらなきゃならねぇ。どっか余所の国で
そんなある意味平凡な人生設計を立てていた矢先に、突然栄光に至る道が切り開かれたことへの呆れと途方のなさに大きな溜息をついたヨウム君。
「なのに英雄になれだぁ?話がデカすぎて胡散臭いことこの上ねぇよ。ハァァァァ……」
しかし、俺は知っている。
既に、ヨウム君の腹が決まっていることを。
「……決めたぜレイタロウさん」
すっくと立ち上がり、初めて俺と目を合わせたヨウム君。
その目には、確かな〝覚悟〟が宿っていた。
「アンタはあの伯爵とは違う。……仲間に慕われるヤツの言葉には力がある」
そう言って、手を差し伸べてくる。
つまりは、そういうことだ。
「俺はアンタを信用することにした。英雄でも何でもなってやろうじゃねぇか……!」
「……嬉しいよヨウム君。よくぞ引き受けてくれた」
ヨウム君が差し出した手をガッチリと握り返す。
ここに、ヨウム英雄化計画が始動したのだ。
「レイタロウ様、至急お知らせしたいことが」
「っ〜〜〜、誰だ!!?」
「お、ソウエイか。……ということは、来たんだな?」
「はい。ドワルゴン方面からこちらへ接近中でございます」
「うむ。それでは客人達もそちらに集めておいてくれ」
「……そう仰られると思い、先んじて通達いたしました。後は御身が来ていただければ……」
「仕事が早いな。それでは気兼ねなく俺も行こう」
「ま、待ってくれ!何か緊急事態が起こったのか!!?」
「……緊急事態と言うより、一大イベントかな?」
「はぁ!?何がだよ!?」
「
「ハァァァァァァァァァ!!?」
次回から怒涛の超展開が続きます。
というより、魔王相対編の真骨頂が始まります。