かの大妖がこの地に……!?って話です。
まぁお察しです。
《
知性は無く、本能のままに殺戮を繰り返す
なお、物質体を持たない精神生命体であるため、その復活には屍などの依代を必要とします。
……が、レイタロウ様の御力が僅かに籠もった肉人形を依代とすることで、過去最強クラスの戦闘能力を携えて復活いたしました。その脅威度はやすやすと
へー、それはスゴーい。
……で、どういう感じに過去最強なの?
教えてシエルせんせー!
《はい!勿論です
カリュブディスは個体名ヴェルドラから漏れ出た魔素溜まりから発生した魔物……つまりは寝小便から発生した蛆虫と考えていただいて結構です》
わーお、メチャクチャ辛辣ぅ。
ヴェルドラが聞いたら泣くよ?
……俺も多分ヴェルドラの魔素溜まりから生まれたと思うから、つまりはそういうことになるよ?
《っ〜〜〜!!?て、てててて、ていせい、訂正をいたします!
どうか、どうか、私の言葉でお気を悪くしないでください。見捨てないでぐだざい"……》
いやいや、それで気を悪くするほど短気じゃないし。
そんな言葉選びの間違い程度で、俺がシエル先生を見捨てるワケないじゃないか。
俺とシエル先生とヴェルドラは三位一体、そうだろ?
《キュン…♡
好感度メーター爆上がりですぅぅぅぅぅぅ!!》
……そろそろカリュブディスの強さを教えてよ。
全く話が進まねぇ。
「……で、あのカリュブディスはどのぐらい強いんだ?シエル先生」
《っ〜〜〜、申し訳ありませんレイタロウ様!私としたことがはしゃぎすぎました!すぐにお教えいたします!》
やれやれ、レイタロウさんの指示じゃないとなんで素直に言うことを聞いてくれないんだろうな。
……君、俺のスキルだよね?
《カリュブディスの保有スキルをお伝えします。
・エクストラスキル『重力操作』……体長約五十メートルを超す巨体を持ち上げている能力です。
・エクストラスキル『魔力妨害』……周囲半径三百メートル内の魔素の流れに乱れが生じ、多少の魔法攻撃は無効化されます。
・エクストラスキル『超速再生』……膨大な魔素によって並大抵の攻撃はすぐに完治します。
ユニークスキル『
そのほか、レイタロウ様の固有
なるほど、こいつは確かに厄介そうだな。
「オッケー、よーく分かった。……んじゃ、皆はここでお茶でもしててよ」
レイタロウさんが直々に名乗りを上げなければ、ね。
っていうか、あのカリュブディスが復活したのだって元を辿れば大体レイタロウさんのせいじゃん。
ちゃんと尻拭いくらいはしてくれよ〜?
……移動速度自体は鈍重もいいところだなぁ。
とはいえ、残り距離は一キロを切ったところか。
目を凝らして視れば、カリュブディスの背にはミリムが堂々と直立し、俺を目指してきているのがよく分かる。
「レ、レイタロウ殿……」
ドワルゴンへと続く街道を見据えていると、ふと背後から声をかけられる。
振り返ると、そこには完全武装したフューズさんほかカバル達や辺境調査団の面々が神妙な面持ちで俺を見つめる姿があった。
「すまんなフューズ殿、こちらの都合に付き合わせてしまって。貴殿らは少し後方で様子を見てくれるだけで構わない。……すぐに終わる」
「なぜ、なぜ逃げないのですか?……カリュブディスは
「魔王を相手に、か。……それは間違いない。だがそれはカリュブディスなどではないぞフューズ殿」
「えっ……?」
俺がこれから為そうとする偉業をあらかじめ聞かされたヨウム君は、何とも顔色悪そうに俺を見ている。
ちなみに、ここまでは瞬間移動でやってきました。
勿論ヨウム君を連れてね?
「この状況こそ俺が求めていたものであり、こうなるように仕向けたのも俺だ。……そして、この場を収める責任もまた俺一人にこそある」
「い、一体何を……?」
「カリュブディスの封印が解けかかっていることは知っていたのでな、どうせならとミリムに頼んで封印を解いてもらい、こちらに向けて来るように依頼しておいたのだよ」
「え、え、封印をわざと解いたと?……あとミリムって」
「魔王ミリム・ナーヴァのことさ。……カリュブディスを滅殺した後、彼女と
「「「「 ………( ゚д゚) 」」」」
「なぁに、被害は出させんよ」
国としての体を成してきた
これこそが、俺の王としての決定だ。
「レイタロウ様。残り七百五十メートルで御座います」
「うむ。……では、全員下がっていろ」
シュナの正確な報告に頷いた俺は、視界いっぱいに広がる巨大な飛行物体を見上げる。
ケロイド状の黒黒とした表皮に全身を覆われた
単眼が特徴的なソレこそが、ヴェルドラさんの申し子にして天空の支配者である
……フッ、いいじゃない。
久しぶりにワクワクしてきたぜ。
閻魔天印を結び、世界そのものを俺の中に広がる心象風景で塗り替えていく。
この世界に取り込むのはミリムとカリュブディスのみ。
そして、この世界の時間の流れと現実世界の時間の流れを同期させる。
そうすることで、この世界での状況をシエル先生を通じてリアルタイムで外部に配信可能となる。
ちなみにこれはスキルなどではなく、どちらかと言うと
そうして世界から色が抜け落ちていき、そこには〝白〟と〝黒〟しか残らなかった。
この世界でなら、俺も本気を出せる。
「わっはっはっは!来てやったぞレイタロウよ!」
残り五百メートルのところで、カリュブディスの背に乗っていたミリムが声を張り上げながらそう叫ぶ。
「観客どもがいなくなったのはちと寂しいが、きっとお前が何とかしたのであろう!?」
「まぁね、むしろ現実世界からいなくなったのは俺達のほうさ」
「おっ……頭の中に直接言葉が入ってきたぞ?」
「ここは〝夢空間〟……俺が夢見る世界にして、現実世界を参考にゼロから構築した異次元世界でもある。ここで起こったことは現実に一切影響を及ぼさない」
「つまり、どれだけ暴れても良いということだなッ!?」
おーおー、はしゃぎおってからに……。
「お互いに手加減したままじゃ納得の行く決着をつけることは出来ない。当然のことさ」
「うむ!殊勝な心掛けなのだ!」
「この空間から脱出する方法は主に二つ。一つは俺の気分次第、そしてもう一つは―――」
「お前を倒せば良いのであろう?」
お、鋭いねぇ。
俺が意識を喪失すれば、多分この空間は存在を維持できず崩壊するだろう。多分だけどね?
「……そ。勝敗はこの空間が解除された時点で、意識を保っている一方を勝者としよう」
「分かったのだ!ではお前から先に仕掛けるがよい!」
ハッハッハ、そりゃあありがたい。
それじゃお言葉に甘えて……。
「……ミリム、一つ頼みがあるんだ」
「ん、何だ?」
「死んでくれるなよ」
「………………ッ!!?」
滅多に出せなかった魔素や『気』を、総身から放出する。
こんな
だからこその〝夢空間〟なんだけど。
一方その頃、現実世界に取り残されたフューズ達の間では少なくない混乱が起きていた。
「レ、レイタロウ殿が消えた!?……それにカリュブディスもいない!!これは一体どういうことだ!?」
突然レイタロウが何か唱えたかと思うと、直後忽然と姿を消してしまったのだ。
それと同時に上空を飛行していたカリュブディスの消失。
フューズのみならず、カバルやヨウムなどといった人間達も酷く困惑を露わにしていた。
「やれやれ、レイタロウさんは人使いが荒いなぁ……」
反面、リムルを筆頭とした魔国の面々はいたって落ち着いた様子で佇んでいた。
中には呆れている者すらいる。
そんなリムル達の様子が気になったヨウムは、たまらず思っていたことをぶち撒けた。
「ア、アンタら、レイタロウさんのことが心配じゃねぇのかよ!?突然自分の国の王様が姿を消したんだぜ!?普通はもっとこう、慌てふためくもんだろッ!?」
「……あー、大丈夫大丈夫。これはレイタロウさんの
「はぁ!?」
《報告いたします。レイタロウ様からの同期申請が届きました。レイタロウ様の視覚を通じて〝夢空間〟内の状況をリアルタイムで視聴いたしますか?》
「スクリーン状にして映せるか?あと出来れば映像を記録して複写する準備も整えてくれ」
《了》
リムルが何か独り言を漏らしたと思った直後、その場にいる全員の目に届くように四方向画面が空中に出現する。
そこには先程姿を消したカリュブディスと、それと相対するレイタロウの姿が映し出されていた。
よくよく見れば、カリュブディスの背には少女、もとい魔王ミリム・ナーヴァも乗っている。
「ヒッ……!?」
画面を揺らす爆音。
そして、シュナが小さく悲鳴を上げた。
「どうしたシュナ―――ッ!!?」
小刻みに体を震わせるシュナを見かねて声をかけようとした刹那、画面越しから悍ましいレベルの
「こ、この
「そ、んな、そんな、まさか……!!」
その妖気の発生源はミリム……ではなかった。
それは、目の前に広がる
「初めてお会いした時の、リムル様の
「い、いえ、お兄様、こ、この御力は、それを遥かに、う、上回って……!!」
見ているだけなのに、画面越しなのに、その力はあまりにも途方がなく、深く、果てしなかった。
「ぁ、ぁあ、あああ!!分からない!分からない!!」
「シュナ?……シュナ!?落ち着け!!」
「あそこにあらせられるのは間違いなくレイタロウ様なのにッ、なのになんであれほどまでの
「もういい!喋るなシュナ!落ち着くんだッ!!」
「世界がッ……生まれる……ッ」
酷く錯乱するシュナを押さえ込む間にも爆音は響き、画面の揺れが激しさを増していく。
ベニマル達は幸運だった。
ベニマル達は不幸だった。
レイタロウの全身が、白く輝き染まる。
爆音の間隔が極端に短くなる。
カリュブディスとの距離は、百メートルを切った。
それなのにレイタロウは、その場から一歩も動かない。
黒き肉体の節々から漏れ出る白光は、収まるどころか更にその輝きを放つ。
爆音が、喧しくその存在感を主張し続けた。
「な、何なのだ、これは一体、どういうことだ……ッ」
「す、スゲー
「(凄いどころの話じゃない!……あの男は、カリオン様を遥かに超えている……!!)」
自らが仕える主以上の
屈辱を感じることも無く、それはもはや〝諦め〟にも近い感情であった。
『っ……これほどの
カリュブディスの背に乗っていたミリムも、レイタロウの底知れない力の一端を垣間見たことで命の危険を察知したのか、余裕そうな態度から一変、好戦的で獰猛な笑みを浮かべながら全身の装いをガラリと変えた。
漆黒の鎧状の服装に、竜の意匠である紫色の翼、そして額に紅色の一本の角を生やしている。
世に言う〝ヘルモード〟と呼ばれる戦闘形態である。
……余談となるが、この白黒に染まった世界で自らの色を失わないでいるということはつまり、それだけ強固な
その点だけ見ても、ミリムが如何に規格外の実力者であるかが窺い知れるだろう。
そして、彼女の小柄な体躯には到底不釣り合いな、大きく湾曲した片刃の魔剣〝天魔〟を出現させる。
過去、数多の魔人や魔王を屠り去ってきた神話級の一振りを両の手で力強く握りしめるミリムの心に、もはや慢心の一欠片もなかった。
迎撃の準備は整った。
後はレイタロウの攻撃が来るのを待つのみ。
……本当に?
……………
レイタロウの全身を覆っていた白光が、徐々に一点に集中しだす。
心臓部に到達したかと思えば、それは段々と喉元へとせり上がっていき、仕舞いには口元へと集約していく。
カリュブディスとの距離は、十メートルも無かった。
もはやお互い、目と鼻の先である。
《告。レイタロウ様を中心に超新星級の破滅的エネルギーを観測いたしました》
……シエルのそんな忠告が耳に入らなくなるほどに、リムルはひたすら呆然としていた。
それが、あまりにも遅きに失していたこともあるが。
リムルだけではない。
その場にいた誰もが―――
……レイタロウから目を離せなかったのだから。
カリュブディスを巻き込む形でミリムに放たれたソレは、レイタロウが遠距離用の必殺技と定めた代物。
白黒の世界を白に塗りつぶす必滅の光。
俗に言う〝熱線〟である。
現実の基軸世界に照らし合わせた場合、武装国家ドワルゴンと氷土の大陸の大部分を蒸発させたことになる。
だがその一撃は、魔王ミリム・ナーヴァとの開戦を告げる狼煙に過ぎなかったのだ。
真の地獄の幕開けである。
カリュブディスちゃん「噛ませにすらなれなかった。訴訟も辞さない」
レイタロウさん「呼んだ?」
カリュブディスちゃん「何でもないです何でもないです私をそんな目で見ないで近寄らないでぇぇぇ!!?」