頂上決戦が始まるよって話です。
本作オリジナル設定を入れてます。
父を知らぬ。母も知らぬ。
物心がつく前に、ワタシのそばからいなくなった。
でも、寂しくはなかった。
父が友達をくれた。
その記憶と、友達が、ワタシを独りにしなかった。
友達がいれば、ワタシは寂しくなかった。
友達との時間が、とても楽しかった。
友達との生活が、全てだった。
友達はワタシの〝家族〟だったのだ。
でも、あいつらは殺した。
ワタシの友達を、殺した。
ゆるせない
ゆるせないゆるせないゆるせないゆるせないゆるせないゆるせないゆるせないゆるせないゆるせないゆるせないゆるせないゆるせないゆるせないゆるせないゆるせないゆるせないゆるせないゆるせないゆるせないゆるせないゆるせないゆるせないゆるせないゆるせないゆるせないゆるせないゆるせないゆるせないゆるせないゆるせないゆるせないゆるせないゆるせないゆるせないゆるせないゆるせないゆるせないゆるせないゆるせないゆるせないゆるせないゆるせないゆるせないゆるせないゆるせないゆるせないゆるせないゆるせないゆるせないゆるせないゆるせないゆるせない
老いも若いも、男も女も。
歯向かうヤツも、降伏するヤツも。
目に映るヤツは片端からコロした。
やがて生きているヤツはいなくなった。
まだだ。
まだ収まらない。
この怒りは、まだ収まらない。
コロス。
全てをコロしてやる。
国を滅ぼした。
込み上げる全ての怒りを籠めて。
込み上げる全ての悲しみを籠めて。
万感の意を籠めて。
皆ゴロしにしてやった。
虚しい。
全てをコロし尽くしたというのに。
ワタシの心は一向に晴れない。満たされない。
心に穴が空いたようだ。
もはや涙も流れない。
……あぁそうか。
友達は、死んだのだったな。
もう、生きてはいないのだな。
その温もりを感じられないのだな。
壊そう。
そうだ、全てを壊そう。
何も無い。何も無いのだ。
ワタシは独りになった。
ワタシは独りにさせられた。
誰に?
……全てにだ。
ならワタシは、全てを壊そう。
ワタシから友達を奪った全てを壊してやる。
こ わ し て や る。
『おぉっと、それ以上暴れられるのは勘弁だぜ?』
突然現れた赤髪の優男。
そいつは有象無象とは比べ物にならんほど強かった。
七日七晩戦い続けた。
お互い千日手になりかけ、
……ハッ!!?
ワタシは今まで何を……ここは何処だ?
ここは……。
ここは………。
……そうだ、ここはギィが根城にしている大陸であった。
肌に突き刺さるこの寒さが教えてくれる。
だが何故こんな場所にいるのだ?
なぜワタシは仰向けに倒れているのだ?
……。
………。
…………。
そうだ、思い出したのだ。
これは、レイタロウとの約束であった。
だが唯一にして致命的な誤算は、レイタロウ自身の強さを見誤ってしまったこと。
ヤツの放った白光の熱線をマトモに浴びたカリュブディスは抵抗もままならずに消滅。
ワタシは、その余波を受けてギィの支配領域まで吹っ飛ばされてしまったようだ。
それでもワタシは生きている。
〝
その〝天魔〟だが、
ヘルモード時の鎧も粉々に砕け散っており、もはやどちらも使い物にはならないだろう。
「思ってたより平気そうだねぇ。まだやれるかい?」
ワタシの顔を覗き込んでそんなことを宣ったのは、やはりレイタロウであった。
その声色には、確かな余裕が感じられた。
あぁそうだな。
認めよう。
この男は、レイタロウは―――
「……フッ、ハハハハハハハハハッ!!!」
「……そうこなくっちゃねぇ」
ワタシが本気を出すに足る実力者であった!!
出し惜しみは無しだ!!
全力で叩き潰してやろう!!
おはヨッピー、俺はレイタロウだよん。
〝夢空間〟っていう異次元世界を構築・展開し、早々にカリュブディスを始末してのけた男でもあるよぉ。
「ハハハハハハハハハハハハッ!!!」
いやぁでも、上には上がいるって思い知らされたよね。
カリュブディスなんかよりよっぽど強くて危険な魔王が仰向けに倒れながら笑い続けているんだもん。
なんかおどろおどろしい
カリュブディスに比率を傾けていたとはいえ、俺の熱線を浴びても五体満足でいるし、ホントスゲーわ。
「―――
わっ、スゲー
威圧感も少し増したし、こりゃあ俺の配下じゃちと厳しいかもしれないなぁ。
紅色の一本角は虹色に変わって、身に纏う鎧は、鎧というより竜の鱗みたいだ。
「トドメを怠ったな?……レイタロウ」
口元は歪んでいるけど、目が怒りを物語っている。
……あー、確かにねぇ。
君が吹っ飛ばされて気絶していた時間、三十分くらいだったかな?
暇だったもんで腕立て伏せやスクワット、上体起こしをして時間を潰していたなぁ。
「うん、そうだよぉ」
「殺ス」
お、魔素を大量放出しながら突進してきた。
目にも止まらぬ速度って奴かなぁ?
あっという間に間合いに入ってきたミリムが、その右腕を大上段に振り下ろす。
狙いは俺の脳天か。
いつもなら簡単に避けるが、ここは敢えて受け止める。
「っ……!」
「次はもう少し強めに打つといいよぉ」
ミリムの拳骨が、尖りに尖った俺のモヒカンと接触し、拳骨のほうが刺し貫かれてしまう。
が、流石は魔王と言うべきか、痛みもそこそこに体全体を大きく横方向へ転回し、俺のモヒカンの一部を砕いて持っていってしまった。
俺のモヒカンって縦からの衝撃には強いけど、横方向からの衝撃にはそこまで強くないんだよねぇ。
……まぁすぐに再生するんだけど。
「あげるよ。
「いるかッ」ポイッ!!
そんなぁ!?勿体ない!!……なんてね。
そして、一呼吸も置かずに攻撃を再開してきた。
「ゔぁぁぁああああ!!!」
一秒間に百発もの連打。
一撃一撃が必殺の威力を誇るそれらを全て真正面から受け止め、渾身のフィニッシュブローを叩き込まれた余波で軽く宙を舞った。
ここで倒れてやる……ことはせず、勢いをそのまま利用して後ろ歩きをしながらミリムと距離を取った。
ちなみに、この短い応酬によって氷土の大陸は沈没した。
現在、海の上を高速で後ろ歩きしながら移動している。
「ハァァァァァァァァ!!!」
だけどまぁ、それを許してくれるほどミリムも甘くないワケで、俺の歩行速度に余裕で適応した彼女は、俺の背後を取った上で渾身の上段回し蹴りを叩き込んできた。
俺の
俺、体重二百キロ以上はあるんだけど、そんなの関係なしに吹っ飛ばされるんだよね。
海の上だから踏ん張りも効かないし、こればかりはどうしようもない。
おっと、次は脚を狙うか。
片脚を〜ヒョイッと持ち上げ〜る〜♪
「チィィィィ……!!」
狙いを外されて舌打ちするものの、その程度のことでミリムは止まらなかった。
……そうだなぁ。
一方的に殴られ続けるのもそれはそれで面白くないなぁ。
ほいっ。
カウンター気味にミリムの右拳と俺の左拳を重ね合わせ、少〜し力を籠めてぶん殴る。
そうするとアラ不思議。
幾重にも張られていた多重結界は脆くも砕け散り、ミリムの右拳は腕ごと爆散してしまいました。
これには堪らず距離を取るミリム。
追撃は……しないほうがいいなぁ。
腕からビュービューと血を噴き出しながらも、ミリムの表情には微塵の
さっきと比べて冷静さすらあるように見受けられる。
「この姿を解放したワタシを相手に、ここまでやるとはな……!」
「……あぁ。強いよ君は」
俺と勝負が成立している時点でね。
「……レイタロウさんもだけどミリムも大概ヤベェ」
ここは現実。
レイタロウさんの感覚を通じてミリムとの激闘を映像として記録・公開する役目を担った俺ことリムルだったが、その戦いの内容があまりにも刺激マシマシで、思わず目眩を起こしそうになっていた。
「「「「 なっ……なっ……!? 」」」」
カバル達やヨウム君は、そのあまりに超次元的な戦闘を目の当たりにして言葉を失っている。
フューズさんにいたっては、魂が半分抜け落ちていた。
「こ、これほどの御力をお持ちであったとは……このリグルド、感服いたしましたぁ!」
「す、すごい、ミリム様を相手に一歩も引いておられないとは……!」
「次元が違いすぎて全然実感が湧かないッス……」
ゴブリン達の反応は、まぁ予想通りだった。
「ゎ…ぁ……レイタロウしゃまかっこいぃ……」
「シュナが壊れたぁ!?しっかりしろシュナぁ!!」
「こ、こうしてはおれません!私も剛力丸を振り回して応援しなければッ!!」
「やめろこの馬鹿……おい本当に振り回すなッ!!」
「よもやこれほどまでの
オーガ達の反応は見ている分には面白かった。
……シオンがこっちに来ないことを祈るのみだ。
「「「 アイヤッハッハッハッハ、ガビル様ぁ! 」」」
「バカモーン!何度言えば分かるのだ!そこは我輩ではなくレイタロウ様の名を言うところであろう!!」
「レイタロウ様素敵!惚れちゃう!」
「レイタロウ様は比類なし。異論は認めぬ」
「レイタロウ様バンザーイ!」
「そう!そうである!もっと声高に―――」
「黙っててください兄上。気が散ります」
「な、な、な、な……!!?」
ラドニュートはいつも通り騒がしかった。
興奮冷めやらぬといった具合で、いっそ喧しいくらいだった。
「こ、これが、あの御方の真の実力……最古の魔王を相手に互角に渡り合っているとは……!」
「ゲルド二世よ。この程度では終わらぬぞ」
「っ、ゲルド様……」
「よく見て感じ、その心に刻みつけよ。……我々は時代の転換点に立ち会っているのだからな」
「っ、はっ……!」
オーク達は何とも大真面目に画面を見つめていた。
……時代の転換点、かぁ。
そうだな。そうかもしれないな。
レイタロウさんはイベント感覚でやっているけども。
《告。個体名ミリム・ナーヴァの
ミリムにとっては、一大事になっちゃったからな。
「ア"ァァ"ァ"ァァ"ァ!!!」
「………」
右腕をもがれたミリムと、五体満足なレイタロウが激しくぶつかり合う。
拳同士をぶつけ合うたびに海の水がはじけて消える。
高速で移動するたびに海の水が煙を上げて枯れていく。
黒と
それを何十、何百、何千、何億、何兆と繰り返すうちに、氷土の大陸跡周辺の海水は干からびてしまった。
それでも、止まらない。
「オ"ォッ!!!」
レイタロウの僅かな隙も見逃さなかったミリムが、その土手っ腹に渾身の左ストレートを叩き込む。
抵抗らしい抵抗を見せなかったレイタロウは、勢いよくはるか後方へ吹っ飛ばされていき、イングラシア王国を衝突時の威力だけで崩落させる肉弾と化してしまった。
地割れに飲み込まれて消えゆくイングラシア王国と運命を共にするように、ファルムス王国やブルムンド王国、神聖法皇国ルベリオス、果ては西側諸国までもが跡形もなく崩壊していく。
だがしかし、それでもミリムは止まらない。
湧き上がる怒りと破壊衝動に従って更なる追撃を加えるべく、渾身のドロップキックをお見舞いする。
……その一撃によって、崩壊しかかっていた上記の人間国家はあっという間に大地の闇に飲み込まれてしまった。
「おっとっと……危ない危ない」
が、しかし、間一髪で直撃を免れたレイタロウは、一旦ミリムとの距離を離すべく天翼国フルブロシア方面へ後ろ歩きで移動していった。
「逃げるだけが能か……ッ!!?」
「俺からのプレゼントだよ―――〝
レイタロウのモヒカンが白く白光したかと思えば、そのモヒカンを基点に無数の細かい熱線が一斉射出される。
さながら誘導弾のように自分の後を追ってくるそれら熱線に凄まじく嫌な予感を覚えたミリムは、仕方なく追跡を断念し回避に専念しだす。
「……などと思ったか!?
回避するくらいなら相殺すれば良い。
瞬時に最適解を導き出したミリムは、自らに迫る白き熱線を拡散型の水色の光線で迎え撃ち、そのことごとくを相殺するに至る。
不意打ち気味に放った熱線が相殺され、レイタロウはその場に立ち止まってミリムを見据えた。
「いい技だ!ワタシ以外ではギィくらいしか対処できないであろう!流石に強いだけはある!!」
事実である。
〝煌閃〟に籠められた
防御は死を意味し、回避は困難を極める。
故に迎撃を選択したが、星粒子をありったけ籠めた竜星拡散爆でも相殺が手一杯であった事実に、絶望以上の
「このワタシと互角に戦える者はギィ以来だ!レイタロウよ!これを喰らっても平気で居られるかッ!!?」
ミリムを震わしている感情。
それは怒りを超越した歓喜であった。
ややもすれば、そのギィを上回るかもしれないレイタロウとの戦闘によって、飢えや渇きにも似た果てしない欲求が満たされていくのを感じていたのだ。
絶対的強者。それ故の孤独。
自分以外の誰もが平等に弱い存在でしかなかったミリムにとって、対等と言える相手はそれこそギィやごく一部の魔王くらいしかいなかった。
「―――
だからこれは、一種の願いでもあった。
頼むから死んでくれるなよ、と……。
天翼国フルブロシア、獣王国ユーラザニア、忘れられた竜の都、傀儡国ジスターヴ等を消し炭に変える最強最悪の一撃が、レイタロウに直撃する。
その破滅的エネルギーは国を消し飛ばすのみに留まらず、直線上にあった海洋を抉り取り、大気圏を突破し、星々を破壊し尽くしてもなお留まることを知らなかった。
ミリムの胸中に諦めが去来する。
やはりお前でも、レイタロウでもダメだったのか、と。
圧倒的なまでの暴力を振るい、果てしない地平線を築き上げたミリムには微塵の喜びもなかった。
戦いは終わった。夢は終わった。
これで全てが終わったのだ―――
「参ったねこりゃ。何処もかしこもメチャクチャだぁ」
……濛々と立ち込める爆煙の向こう側から、あの男が何食わぬ顔で現れた。
衣服の至るところがボロボロ……というか、上半身は完全に裸であったが、それ以外に異常はなかった。
「……それで?もう終わりなのか?」
「……何?」
「だから、戦いはもう終わりなのか?」
「………」
「……ハァ、残念だ。もうちょっと頑張ってくれればと思ったんだけど、これで終わりなのかぁ……」
レイタロウが浮かべる表情。
それは先程自分が浮かべたであろう……。
「いや まだだッッ」
認めない。
そんなこと、断じて認めない。
それは己に対する、許されざる侮辱だ。
許せない。
終わらせない。
認めたくない。
最古の魔王ミリム・ナーヴァ。
始まりの竜種を父に持つ、この世界でただ一人の
この世で最も最強の座に近い、約束された強者。
そんな彼女が、生涯
ギィとの死闘の果てに垣間見せようとしたその力。
精霊女王に邪魔されて結局本領を発揮することのなかったその力。
その力は、彼女の中に流れる
其の名は……。
……奇しくも、最初にして最強の竜種の名を冠するその形態は、ピンクブロンドの髪を腰まで伸ばした長身の美女として出力されることとなった。
額より伸びたる一本角は、宇宙の深淵そのものを表すような漆黒に染まっており、光を一切反射していない。
辛うじて鎧の
もげた右腕も、いつの間にか生え変わっていた。
そして、猛禽類のごとく縦に割れたその瞳は、ただ一点、レイタロウのみを見据えていた。
ふと、彼女の姿が視界から消える。
刹那の衝撃。
レイタロウがそれを認識した時には。
彼は、空を舞っていた。
覆しようのない蹂躙劇が、幕を開ける。
父を超え、明日を捨てる―――