外交が本格的に始まるって話です。
レイタロウさんとミリムの激闘から更に時間が経過し、
戦いを見届けたフューズさん達はブルムンド王国へ帰還していった。
友好関係を結べるよう、国王をはじめ貴族を脅迫説得してくれるらしい。
……連中の弱みを握っているからどうとでも出来ますよと言っていた気がするが、スライムの俺に耳なんてモノは無いため聞こえはしなかった。
ちなみに、両者の熾烈を極めたバトルシーン(シエル先生編集)を収めた水晶をお土産として渡しているため、嘘であると糾弾される心配はほぼないだろう。
ドワルゴンには、あらかじめ送りつけておいた水晶にリアルタイム配信をするだけで事足りた。
……が、ガゼル王から正式な招待状を貰ってレイタロウさん共々ビビったのは内緒だ。
国賓待遇で迎える……っつーかレイタロウさんと俺を直々に呼びつけて説教をカマす気満々なのが目に見えてしまったために。
使者として再び志願したらしい。
この町に張られている〝四方の王の陣〟の恐ろしさを身を持って体感したこと、ミリムの底力とレイタロウさんの底のない力を目の当たりにしたこと等が合わさってか、初めて来た時とは打って変わって
《告。俺が直接出向いてレイタロウを見極めようではないか、と記されています》
何とも簡潔な内容だった。
いよいよ国らしくなって、これからは政治的な駆け引きなんかも必要になってくるだろう。
とはいえ日々の戦闘訓練は欠かせない。
「フッ…シッ!!」
「おぉ!良い動きだぞリムル!」
可愛くデフォルメされた熊さんシャツを着るミリムの懐に潜り込み、クロベエが鍛え上げた自慢の名刀を振るって攻撃する。
その攻撃は身を捩ることで敢え無く避けられるが、そんなことは勿論想定済みだ。
「おー、初撃から追撃に繋げる時の
「そりゃどー……もっ!!」
俺ってヤツはとことんヒト頼みな元社会人だったワケで。
戦闘に適した思考回路の持ち主でないために、いまだ慣れない戦闘時の立ち回りや足場取りなんかはシエル先生に最適解を導き出してもらって、その指示に従って動いているのが現状なのだ。
さっきの攻撃だってそうだ。
初撃から間髪入れずに追撃に繋げるこの動きだって、あらかじめこう動いてくださいと言われたから動いただけで、俺自身の頭で考えたワケではない。
それも結局避けられるし、どうしたものかと頭を悩ませてしまう。
《告。
いやいや、これ戦闘訓練だよ?
ここでマジで戦ったら訓練じゃなくなるし、何よりミリムに本気を出されるのは勘弁願いたい。
「今度はこっちから行くのだ!」
ゴメンゴメンやっぱり嘘!
身体特性でも何でも使ってみせる!
善意マシマシで迫るミリムは凄く怖えよ!
「こっちこそ、本気で行くぞ!」
「!……その意気なのだ!」
説明しよう!身体特性とは……。
スキルや
ゴブタを例に取り上げてみよう。
ゴブタの持つ怪獣
そして、そんなゴブタの宿す身体特性は『超音波』
超音波ぁ?……などと侮るなかれ。
ゴブタの鼻角から放たれる超音波攻撃は木々を破砕し、巨岩を崩し、水を沸騰させる。
仮にスキルや魔素が使えない状況に陥ったとしても、この身体特性だけで十二分に戦うことが出来るのだ。
そして俺の『重力制御』は……。
「おぉ!?」
鍛錬の末にある程度扱えるようになった、俺の
ミリムが前方向、すなわち俺のいる方向に
完全に虚を突かれる形となったミリムの胴体に一閃を叩き込む。
「中々面白いのだ!」
が、流石は最古の魔王。
俺がどう動くのかを
万事休すか……。
「ワタシにガードを選択させるとはやるの……ッ!?」
「まずは一本……!!」
……なんてな。
これで終わらせないのがスライムクオリティーだ。
難なくガードされた刀を躊躇なく手放し、レイタロウさんから手ほどきを受けて習得した〝肘打ち〟をミリムの顎に叩き込む。
勿論そこには、重力制御によって瞬間的に10トン相当の重みを付加している。
よし、こっからドンドン攻めていくぞ……ッ!!?
「ワッハッハ!してやられたのだ!!」
「うぎっ!!?」
ヤバッ……まさかこのタイミングすら読んで……!?
肘打ちという間合いに踏み込まざるを得ない超近距離技を使ったことが災いし、顎を打ち据えた体勢のまま服の襟元を掴まれ、強引に投げ飛ばされることとなった。
カエルを潰したような変な悲鳴を断続的に発しながら地面を何回もバウンドし、大木に頭からぶつかることでようやく停止することが出来た。
痛覚はないけど痛みを感じてしまいそう。
元人間としての感覚に引き摺られて頭を押さえた俺であったが、いつの間にかすぐ近くにまで来ていたミリムに見下される形となってしまった。
どうやら俺の負けらしい。
「手合わせするごとに強くなってきておるぞ!今のリムルならディーノと互角以上に渡り合えるだろうな!」
「それって魔王と張り合えるってことか?」
「そうだぞ!今の攻撃だって多重結界をやすやす破ってワタシに掠りダメージを与えたくらいだからな!」
ハハ……掠りダメージね。
比較対象がヤバすぎて全然参考にならねぇや。
「結局ワタシが勝つがな!……でも、リムルがもし魔王になりたいと言い出してもワタシは反対しないのだ!」
「ならないって……それよりちょっと休憩な」
「なにぃ!?まだまだやれるのだ!!」
「シュナが弁当作ってくれたんだよ」
「休憩なのだ!!」
シズさんへの義理を通すためにも、まずは魔王レオン・クロムウェルを殴るつもりではある。
それでも、俺は魔王になるつもりはない。
シュナの作ってくれたサンドイッチを頬張りながら、俺はある一つの疑問をミリムにぶつけてみた。
「そういえばミリムはなんで魔王になったの?」
「え?……そうだな、何でだろ?何か嫌なことがあって、ムシャクシャして?」
「俺に聞くなよ……」
「よく思い出せん!忘れたのだ!」
「そっか」
聞けばミリムは最古参の魔王の一柱だと言うし、俺の想像の及ばぬほど長い年月を生きてきたのだろう。
……
「お前ってさ、家族とかはいないのか?……ずっとここにいるけど心配してる人とか」
「ワタシの世話をする者達はいるぞ。……でも、あの者共は心配などしておらぬのだ。ワタシは
それって、なんつーかちょっと寂しいな。
強いが故に心配されないなんて、もし自分が困った時にヒトに助けてもらえないかもしれないってことじゃんか。
……いや、俺がレイタロウさんを心配するようなもんか。
そう言われるとちょっとだけ分かる気もするが……。
「でも、ワタシにはワタシより強いレイタロウがいるから寂しくはないのだ!リムルという
キュン…「……そうだな。これからも宜しくなミリム」
「勿論なのだ!……あと、ワタシはお子ちゃまではないのだぞ!」
やっべ、俺の独白全部筒抜けじゃん!
……などと思いつつ、俺は青い空を仰いだ。
<<< 数日後 >>>
おはこんばんちは。俺はレイタロウだよん。
今はリムルさんやミリムと昼食を食べている真っ最中。
昼食の内訳はトマトソースのスパゲッティと野菜スープ、どちらも塩味が絶妙に効いてて美味いんだな。
野菜嫌いのミリムが率先して野菜を食べるくらいだから相当だよ。
……だからベニマル、端に寄せて隠しているそのニンジンをとっとと食え。
「ごちそうさまでした。……よし!」
いの一番に食べ終わったミリムがガタッと席から立ち上がり、唐突に口を開く。
「ワタシは今から自分の国に帰る!」
「えっ、もう帰るのか?」
ミリムの宣言に、リムルさんが面食らう。
「心配するな。此処でのことを話して、無理やり同盟を結ぶ流れに持ち込むだけなのだ!終わったらすぐ此処へ帰ってくる!」
「突然だな。今すぐか?」
「うむ!……あやつらにも食材を調理することの大切さを教えてやるのだ!」
ミリムは、ちょっとしたおつかいにでも行くような足取りで食堂から出て、即座にその装いを改めた。
「じゃあ行ってくる!」
そう言って、俺がお土産を渡すよりも早くミリムは颯爽と飛んでいってしまった。
せめて握り飯でもと思ったが……あっそうか、ミリムが到着したタイミングで転送すればいっか。
「……嵐のように来て、嵐のように去って行ったな」
「そうだねぇ……」
「ミリムのお世話係も、これでひとまずは終了だな」
「うん、お疲れ様リムルさん」
さてと、そうなるとそろそろ本格的に外交に力を入れないといけないなぁ。
町はリグルド達だけでも十分回していけるしねぇ。
「リムルさんの出発の日取りを決めとかないとなぁ……」
「え、俺また扱き使われるの?」
「前々から言ってたじゃないの。リムルさんには外交部門のトップを任せるってさぁ」
「あ、あぁ、そう言えばそうね……」
「ブルムンドとの国交は確実に結んでもらいたいし、何よりイングラシア王国にも行ってもらわないとねぇ」
「え、なんでイングラシアまで―――あっ」
「……忘れてたなこりゃ」
シズさんの心残りである五人の子供達。
イングラシア王国に取り残されてしまった、非情な運命を背負わされることとなった子供達。
同じこの世界に〝転移〟してきた者として、出来れば助けてあげたいと思う子供達。
諸外国との友好関係構築と並行した、異世界人の子供達を助ける物語が幕を開ける。
……なーんてね、そんなカッコいいもんじゃないよぉ。
皆様のおかげで大変好評を得ておりますREY。
これからも頑張って執筆していきますので、応援のほどよろしくお願いいたします!