ライカンスロープな人達と交易するぜ!って話です。
獣王国との交易
ボンジュール、俺はジュラ・スターモンズ連邦国国王にして十大魔王のレイタロウさんだよぉ。
「……なんか忙しそうな時に来ちまったかな?」
「いや、構わんさ」
「そうそう。せっかくだし接客の練習相手にでもなってやってくれ」
風呂上がりのヨウム君を話し相手に、リムルさんを加えた三人でダラダラとくっちゃべっている男だよ。
「配色良く盛り付けて……」
「姿勢には常に気を配って……」
「ゴミは一つも残さないように……」
同じ魔王友達であるミリムが自分の国に帰っていったあの日以降、配下達は全員慌ただしく
そこら中からシュナを筆頭とした幹部達の指示を飛ばす声が聞こえてくる。さながらBGMだね。
俺も何か手伝おうかなぁと思ったんだけど、よくよく考えたら王様である俺が手伝うのもおかしな話じゃんって踏みとどまって、そんで現在に至るワケだ。
対面に座るヨウム君がウイスキーみたいなお酒をグビッと
俺もさりげなくウイスキーを飲む。……旨いねぇ。
「接客?誰か来んの?」
「あぁ。もうじき魔王カリオンが来るんだよ」
「ぶ――――――ッ!!?」
きたねっ。俺じゃなきゃ避けられなかったね。
それよりせっかくの貴重なお酒が……勿体ない。
「魔王カリオン!?なんだってそんなことに……!?」
「まぁ話せば長いんだが……」
そこで、ヨウム君でも分かるように話を整理する。
魔王(クレイマンを除く)宛てに送った水晶を、案の定と言うべきかしっかり視聴していたカリオン。
クレイマンに対する宣戦布告に始まり、ミリムとの激闘の一部始終を収めた映像を観たことで俺に興味を抱き、部下のフォビオから受けた報告によって警戒心を高め、トドメと言わんばかりの十大魔王入りの一報によっていよいよ重い腰を上げ、直接乗り込む決断を下したようであった。
そして、俺を見極めるとか何とか言って、俺との
「というワケで、国交樹立のチャンスってワケなんだよ」
「は、ははぁ……なるほど」
生返事をしながらも割と真剣な表情で聞き入ってくれたヨウム君は、あまりのスケールの壮大さに天井を見上げてしばらく硬直してしまった。
「……それにしても魔王かぁ。魔王も恐ろしいが、その護衛として来るであろう配下もさぞかしおっかないのが来るんだろうなぁ……」
「どうだろうな。それは一度会ってみなきゃ分からん」
「もし叶うのなら、是非とも技術交換という名目でこっちの配下を向こうの国に派遣したいところだが……」
「……レイタロウの旦那のことだから、既にその準備は出来ているんだろ?」
「当たり前さ。既にメンバーはリグルを筆頭に幾人か選抜してある。顔合わせをした段階で切り出す予定だ」
「話が早すぎると向こうさんの頭が追い付けないぜ。たまには合わせてやらねーとな?」
「君こそ、カリオン相手に稽古をつけてくださいなんて言うなよ?」
「俺も手下共もそこまでバカじゃねーですって!」
「どうだか……そういえばハクロウが会いたがってたぞ。腕が鈍ってないか確かめたいってさ」
「師匠が!?……一気に酔いが醒めた」
ワハハハ、と三人の笑い声が木霊する。
聞けばヨウム君の
思っていたより順当な滑り出しであった。
<<< 数日後 >>>
「……来たか」
そして当日。
ユーラザニア方面の街道にて配下ともどもその到着を待っていた俺は、遠目に馬車を引く〝虎〟の姿を目撃し、思わず言葉を漏らす。
「なんか緊張するよな……大丈夫かレイタロウさん?」
「どっしり構えてりゃいいのさリムルさん」
うちは狼に馬車を引かせるが、向こうは虎とはなぁ。
ちなみに、その場にはスライムボディーのリムルさんを抱えるシオンをはじめ、シュナやリグルド、カイジンさんやゴブリン・ロード数名、ヨウム君一行が控えている。
そして、馬車ならぬ虎車が目と鼻の先まで近づき、ガタンと音を立てながら停車した。
……虎のほうはなんか帯電してね?などとどうでもいいことを考えながらも、複数ある虎車のうちの一つの扉が開け放たれた。
「お初にお目にかかります。ジュラの大森林の盟主様。私はカリオン様の三獣士が一人、
そう言って現れたのは、着物の胸元を大胆に
……表面上は友好的な雰囲気を漂わせているものの、その表情の裏側から僅かな戦気が漏れ出ているのを見逃さなかった。
「うむ。遠路はるばるよくぞ我が国まで来てくれた。俺は国王のレイタロウである。貴殿らの訪問を歓迎―――」
「はッ!得体の知れない
アルビスさんが出てきたのとは別の虎車の扉を蹴破って出てきたのは、虎車を引く虎をそのまま擬人化させたような野性味あふれる美女。
「その上、カリオン様が一柱を司る十大魔王を僭称するなど、オレは絶対に認めねぇ」
「控えなさいスフィア。カリオン様の顔に泥を塗るつもりですか?」
「うるさいぞアルビス。オレに命令するな」
……あー、なるほどね。
〝四方の王の陣〟には特にこれと言った動きはない。
どうやらフォビオ君は、ちゃんと此処でのことをカリオンに報告していたようだ。
「よぉ。はじめましてだな」
「……そうだな。ようこそ
後方に控えていた虎車の扉が開かれ、そこから大柄でワイルドな体育会系っぽい男、カリオンが現れる。
スフィアと呼ばれた美女の俺に対する言動をこれと言って咎めるでもなく、大胆にも俺の目の前に立って俺の体をジロジロと観察し始めた。
……俺、男に興味なんてないんだけど。
「水晶越しから観ていたが、全く
「後者だよ。というか、俺とミリムの戦いも観ていたはずだろう?」
「アレは圧巻だったな!……だからこそ俺は、お前さんが魔王になることに異論は挟まねぇ」
……どうやらここからが本題のようで。
「……だが、後ろにいる俺様の部下が納得できてねぇ」
納得できてない?
随分見え透いた嘘を言うねぇ。
君の鶴の一声があれば、部下は黙って従うはずだろ?
「此処では大人しくしていろと言いつけておいたんだが、どうにも不満を抑えきれなかったらしい」
違うな。これは多分……〝四方の王の陣〟の許容範囲を見極めているんだな。
おそらくだが、スフィアちゃんもアルビスさんも、心の内では俺に対する侮蔑など微塵も覚えちゃいない。
ミリム相手に圧勝を収めた俺の強さを水晶越しに観て、それでも挑発を仕掛けてきたのはカリオンの命令か。
先に手を出せば〝四方の王の陣〟によってペナルティを下されて力を没収されるかもしれない。
だがもし、そのペナルティを回避する手段があるとするならば、と考えたワケだ。
「……ふむ。ならばその不満を、俺にぶつければ良い」
「ほぉ?いいのかい?」
「普段から力を抑えて過ごしている故、こうなることは当然予期していたつもりだ。……であるならば、俺はその不満や疑問に全力をもって応えねばならん」
要は究極の俺ルールだ。
俺が良いと言えば良いし、悪いと言えば悪い。
普段は住民達の感情に委ねている〝四方の王の陣〟のペナルティだが、当然その結界システムのマスター権限は俺が握っている。
そこら辺の抜かりはないのだ。
「お待ちくださいレイタロウ様!ここは私めにお任せください!!」
……抜かりがあったとすれば、それはシオンがこの場に居合わせていたことだろう。
シュナにリムルさんを預けたシオンはそれはもうプンプンと怒った様子で俺とカリオンの元へ近付いてくる。
「ちょ、待て待て……」
「黙って聞いていればレイタロウ様に対する暴言の数々。我慢に我慢を重ねていましたが、どうやらその必要はなかったようです!」
俺の、俺の、俺の話を聞けぇぇぇ。
あぁもう、そんなに前に出られたら、もう退かせることが出来ないじゃない!
「……しょうがない。というワケでカリオン、こっちからはシオンを出すが、それで構わないか?」
「いいぜ。こっちからは……スフィア、お前が行け」
「おぅ!行ってくるぜ大将!」
さっき俺に難癖を付けていたスフィアちゃんが元気よくエントリーを果たした。
先程と違って、その表情に含むところは無い。
どうやら根っからの戦闘狂らしいねぇ。
「シオン、剛力丸は使うなよ。……それで
「はい、お任せくださいレイタロウ様!」
「……絶対に殺すなよ。頼むから」
「はい、お任せくださいレイタロウ様!」
……心配だなぁ。
「……面白い。新参魔王の配下がどの程度のものか、このオレが確かめてボ ゴ ッ
スフィアちゃんはくの字に体を曲げながら滑空する。
やがて後ろにあった大木に激突し、ようやく止まることが出来たワケだ。
大木がミシミシっと音を立ててへし折れる。
それほどの威力が籠められたパンチを喰らったと言うのに、気絶こそすれ絶命していないスフィアちゃんの生命力は驚嘆に値する。
……とはいえだ、今やることは一つだよねぇ。
「やりました!見事無礼者を―――グペッ!!?」
「馬鹿者が。やりすぎだ」
シオンの脳天に拳骨を叩き込んで成敗しておく。
仮にも客人相手に放っていい威力のパンチじゃない。
頭を抱えて
「すまんなカリオン。力試しとはいえ、必要以上に君の部下を痛めつける結果となってしまった。……もし良ければ治療はこちらで受け持ちたいが、いいだろうか?」
「……あ、あっ、あぁ。すまねぇな……」
「……ところで、君のお眼鏡にはかなったかな?」
シオンの予想以上の力に面食らっていたカリオンに、そんなことを尋ねてみる。
俺の問いかけに息を詰まらせ、そして観念したように頭をポリポリ掻きながら溜息を零したカリオン。
「やれやれ、バレてるようじゃ世話ねぇな。……お前ら!全員見たな!?」
カリオンの大音声とともに虎車の中で待機していた獣人達がゾロゾロと顔を出す。
「ヤツらは強く、そして度胸がある!我らが友誼を結ぶに相応しい相手だ!……ヤツらとその友人である人間を軽んじることはこのカリオンの名において許さねぇ!分かったヤツは返事しろ!!」
「「「「 はっ!! 」」」」
……なんか、丸く収まった感じ?
あ、手を差し出してくれた。
「つーワケでだ。うちはお前達と仲良くすると決めたぜ。新しくも強き魔王……レイタロウよ」
「……光栄だね。
差し出された手を握り返し、本当の意味での友誼を結ぶことが出来た……と思う。
「これほど立派な町なんだ。さぞかし旨い酒の百や二百、あるんだろう?」
「勿論だ。是非とも羽根を伸ばしていってくれ」
酒飲み外交とはよく言ったもので、公式の場ではとても言えないような本音を吐き出させる上で、酒はこれ以上ないツールであると言える。
俺は昔っから肝臓が強すぎて酔えたことはないけどね。
「あ、頭が割れそうです……!!」
「大丈夫だシオン。割れても割れてなくても大してシオンは変わらないさ」
「リムル様ぁ!!?」
ユーラザニア御一行、ご案内ぃ!
クレイマン「カリュブディスの封印解除の件、進捗はどうですかティア?」
ティア「それが……カリュブディスの封印場所に来たまでは良かったんだけど、いなかったんだよね……」
クレイマン「……はぁ?」