再びドワルゴンに行くって話です。
ニーハオシェイシェイ、俺は
そして現在は、国王という身分で武装国家ドワルゴンを目指している真っ最中なのさ!
「思っていたより揺れが少なくて快適だな」
「ゲルド達の仕事が的確な証ですね」
俺の問いにシオンが秘書らしく答える。
今回の旅に同行してもらっているのは、スライムボディーで外の景観を楽しんでいるリムルさんと、そのリムルさんを膝の上に置いているシュナ、秘書っぽいことを言っていたものの、すぐに外を見てはしゃぎまくるシオン。
馬車ならぬ狼車を引くランガに、むさ苦しそうにしているカイジンさんとドワーフ三兄弟。
護衛として、ゴブタ率いる
後ろの荷台にはガゼル王へのお土産を積んでいた。
「しかし良かったのか?……人員も物資も、俺が〝瞬間移動〟でパパっと移送できるんだが」
「こういうのは形も大切なんですよ。……それに、何でもかんでもレイタロウ様の御力に頼っていては下々の者が育ちません」
「そうか?……まぁそうかもしれんな」
俺一人のワンマン経営では、万が一俺の身に何かあった場合あっという間に国が空中分解してしまう。
だからこそ俺は、何でもかんでもはしないように心がけつつ配下の皆に適当な仕事を割り振っているのだ。
すると突然、俺の手に自分の手を重ねて、寄り添うようにしなだれかかってきたシュナ。
その瞳には、果てしない〝慈愛〟が籠もっていた。
「もっと私どもを頼ってくださいまし。……
「……分かっているさ。君達のおかげで、今の俺がいる。これからも宜しく頼むよ。シュナ」
「っ……はい」
シュナを抱き寄せ、
「ランガランガ!路面工事の作業員がいたら止めてくれるかー!?」
「おっと……」
「っ……」サッ…
「はッ、かしこまりました!」
……リムルさんの声で中断されることとなった。
いかんいかん、つい夜のムードに移行して周囲の目を忘れてしまっていたわ。
シュナは何と気まずそうにサッと顔を背けてしまったが、その耳は真っ赤っ赤に染まっていた。
何なら目の前で見ていたシオンは、耳どころか顔を真っ赤に染めてしどろもどろになっていた。
「レ、レ、レイタロウ様、シュ、シュ、シュナ様、こ、このようなところではしたないですよ!!?」
「すまんすまんシオン。シュナと密着しているとどうにもな。ハハハハハ……」
「ふぇッ!!?……み、密着していると、密着していると何なんですかッ!!?」
「……シオン、私はもう子供ではないのですよ?」
「え、えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!?」
シオン、確か君ってシュナより年上だったはずだよねぇ?
まさか……
「ゲルド二世様。石畳の損傷箇所ですが、五点ほど確認できました。うち四点は小さなヒビ割れですが、残り一点に大きな窪みがあります。足を取られる危険性大かと」
「分かった。至急そちらの補修に人員を向かわせる。第一班はいま昼休暇だったな。第二班出動可能か?」
「すぐにでも動けます」
「よし。第二班が補修にあたってくれ―――」
「おーい。ゲルド二世ぃー」
「っ、リムル様!」
……余談となるが、ドワルゴン方面の街道敷設はこの数ヶ月のうちに既に完了している。
ゲルド二世をはじめとした精鋭達の努力の賜物とも呼ぶべきこの街道は、まさにウチの誇りそのものと言っても過言ではない。
そんな重要インフラである街道だが、定期的なメンテナンスは欠かせないのだ。
狼車の中から外にいるゲルド二世に声をかけたリムルさんに追随するように俺も顔を覗かせる。
「今日がドワーフ王国への出発の日でしたか」
「ああ。道が整っているおかげで揺れも少なく、快適そのものだったよ。……ユーラザニア方面とブルムンド方面はどうなっている?」
「ユーラザニア方面は父ゲルドを筆頭に進めております。あと一月もあれば完遂するかと。ブルムンド方面に関しましても、ご命令とあらば即座に」
「よろしい。近いうちに命を下すゆえ、準備は怠るな」
「はっ」
「仕事の話は済んだか?……じゃあこれ」
頃合いを見計らっていたリムルさんは、話が終わったと見るや『胃袋』の中に収納していた樽を数個、ゲルド二世の近くに吐き出して置いた。
「良かったら皆で飲んでくれ」
「これは……?」
「
やれやれ、よく出来た二頭体制だよねぇ。
俺が色々な意味で厳しい王を演じる傍ら、リムルさんが優しい王を演じることで効率良くアメとムチを使い分けることが出来ていると。
まぁリムルさんに王様を演じる気がこれっぽっちも無いことは知っているし、無理強いもしないんだけどねぇ。
「「「「 うぉぉぉぉぉぉ!ありがとうございます!! レイタロウ様! リムル様! 」」」」
道中はつつがなく進んだ。
ちょくちょく野生の魔物と遭遇することもあったが、それらは全てゴブタ達によって駆除されてしまったため、俺の出番は全くと言っていいほど無かった。
そして、出発から四日目。
「開門――――――ッ!!」
俺達はいよいよ、武装国家ドワルゴンに到着したのだ。
前回と違い、今回は大きな門扉が厳かに開かれる。
狼車から出て待機していた俺達を扉の向こうから出迎えてくれたのはドルフさんだった。
「ようそこおいでくださいました。我が王ガゼル・ドワルゴが王宮にてお待ちです」
「こちらジュラ・スターモンズ連邦国国主、レイタロウ・スターモンズ陛下にあらせられます。どうぞガゼル王へのお取り次ぎを……」
「ではこちらへ……」
最近のシュナときたら、ベスターから礼儀作法を一通り習っているらしく、儀礼においてマナー面でも頼りになっていた。
俺やリムルさん、ましてやシオンなんて、もはや置き物同然である。
「キャー可愛いー!」
「どこのお姫様ー?」
「デッケー!見るからに強そうだぜ!」
「あのデカいヒトは誰なのー?」
……王宮へ着いてからも、誰かと何か話す時はシュナが代わりに話してくれた。
シュナってホントに凄いね。
俺も置き物なりに威厳たっぷりに臨んだけど、ハッキリ言って自信がないや……。
「及第点と言ったところだな。見た目の威厳で何とか誤魔化せていたが、俺から言わせればまだまだだ」
「……そうか」
ガゼル王の苦言にぐうの音も出ねえ。
俺だって自分が王様に向いてないことは知ってたさ。
でも改めて言われると心を抉られそうなのよ。
「……さて、今は大臣らもいない。迂遠な言い回しや腹の探り合いは無しだ。本題に入ろう」
あ、もう
「貴様が送りつけてきたであろう水晶に映し出されたあの光景……魔王ミリム・ナーヴァを終始圧倒し続け、あろうことか勝利を収めたというのは事実か?」
「事実だ」
「……即答か」
これは紛れもない事実であるため即答する。
最終的には〝夢オチ〟ということでカタをつけたけれど、現実で戦ったとしても俺が完勝を収めるだろう。
……その時、世界が崩壊しているという注釈を添えて。
「ミリムが今まで人前で見せることが無かった究極形態すらも切らせた上で、俺はその全てを受け止め圧倒的な完勝を収めたのだ」
「……申し訳ないが到底信じられません。
「ふむ……向こうから吹っかけてきた喧嘩を俺が買ったという、なんてことのない話なのだがな。何なら衣食住の世話までしてやったのだぞ?」
「え、衣食住?」
「ミリムも戦闘時以外は見た目相応の女の子でな。こちらで美味い料理を出してやったり、オシャレな服を着させたり、同じ屋根の下で暮らしたり、思い返してみれば中々楽しいものだったな」
「いや、殆ど俺に押し付けてたじゃねーか。あいつが力加減を誤ったばかりに一体どんだけの損害が出てリグルドに詰められたことか……」
「いやー楽しかった楽しかった」
「おいコラ、美しい思い出に昇華するんじゃねえ!」
俺とリムルさんのふざけきった掛け合いを黙って見つめていたガゼル王達。
その沈黙を破ったのは、ガゼル王の鼻笑であった。
「フッ、くっくっくっ、ホラにしては荒唐無稽が過ぎるな!そのふざけた掛け合いと合わさっていっそ真実味がある。良かろう。信じるぞレイタロウよ」
「それは良かった」
そう言うと、ガゼル王は手に持っていたグラスに注がれていた酒をグビッと
「ふむ……それにしても、土産にもらったこの酒は美味いな」
「流石はガゼル王。お目が高い」
ガゼル王の傍らにて控える従者の二人にも酒を配るよう、シュナに目配せする。
承知いたしましたと言わんばかりに流れる動作で複数あるグラスに酒を注いでいくシュナを横目に見やりながら、説明を行っていく。
「リンゴで作った蒸留酒だ。果実類を輸入できる目処がたったのでね」
「ほぅ?」
「お二人も是非……」
「ああ、これはどうも……」
「……にしても、このドワルゴン以外にも貴様達と国交を結ぼうという者が現れたか」
「うむ。獣王国―――」
「「「 ユーラザニアかッ!!? 」」」
うおっ、ビックリしたぁ!!?
何なの急に!!?
「な、なんだ、知っていたのか?」
「当然だ。誇り高き獣王の治める国を知らぬはずがあるまい。……貴様、獣王にも懐かれたのか?たらしか?」
「……なに、要はそちらと一緒だ」
「……あんな刺激の強い映像を送りつけたのか。そりゃあいくら何でもやりすぎだろう……」
「おかげで実りある盟約を交わせたのだ。……断っておくが軍事力で屈服させたワケじゃない。あくまで対等な立場で交易を行っているのだ」
……あんまし引くなよ。
傷ついちゃうぞぉ?……傷ついちゃおっかなぁ!!?
「だとしたら
「うむ、確かにな。……少なくともこれは、我が国がファルムスから輸入するどの酒よりも美味い」
……ファルムス王国、ね。
強欲に支配された愚者に情けをかけるほどの寛容な心を、俺は持ち合わせちゃいない。
「……ここだけの発言だが、俺はあの国王は好かん。だから是が非でも
「……まぁいいだろう。適正価格でなら―――」
「大丈夫でぇす!我が国と仲良くしてくれる国には
ちょ……何言うとんねんシオン!!?
って君、もしかしなくても飲みやがったなぁ!!?
「レイタロウ様ならばきっとユーラザニアとの貿易もパパーッとステキにまとめてくださいましゅ!!」
おいおいおい、そんな簡単に言ってくれるなよぉ。
俺にそんな知識なんて無いってのに、このおバカ娘はホントにもう……!
「我らの食卓にも当たり前のように美味しい料理が並ぶようになりました……」
「シオン!?あなたまさか飲んで……!」
「そこにお酒が加わるのも、きっともうすぐです!!」
「もうシオンったら……あっ」
あ、一気飲みしやがった。
あの飲み方はちょっとマズい……マズい!?倒れるぅ!
「……セーフ」
「……ナ〜イスキャッチ、リムルさん」
間一髪、スライムボディーになったリムルさんがクッションになることでシオンは無傷で済んだ。
やれやれ、この娘はホントにもう!だよ……。
「「「 ……ハハハハハ! 」」」
もう、ホントに恥ずかしいわぁ……。
シオンをこんな娘に育てた覚えはありません!って言いたいよマジで……。
「すまんな。うちの秘書が……」
「よいよい。早く部屋に連れて行ってやれ」
その気遣いが今はありがたいわ……。
人型に戻ったリムルさんがシオンを担ぎ直したタイミングで、颯爽と部屋を後にすることにした。
……ドワルゴンへの酒輸出、前向きに検討するか。
「もう、恥ずかしい……」
「ホントにな」
「……けどまぁ、あそこまで信じてくれているなら、その気持ちに応えてやりたい気持ちもあるんだよなぁ」
「レイタロウ様……」
「レイタロウさん……」
「よし、明日の演説の原稿を一から考え直すとしよう。内容をより住民に寄り添ったものにせねば」
「手伝うぜ、レイタロウさん」
「私もご一緒させてください」
「あぁ。頼むよ二人とも」
思っていたより人気を博している本作。
……完結に向けて、これからもっと精進せねば。