ユウキ・カグラザカと会うぜ!って話です。
翌日、
俺ことリムルは、昨夜ソウエイから受けた報告を思い返し、何とも重苦しい心持ちで扉の前に突っ立っていた。
「どうしたのリムルさん?入らないのぅ?」
「ん、あぁいや、随分大きな建物だと思ってさ……」
エレンが心配して声をかけてくれたが、この陰鬱とした感情だけは拭えそうになかった。
……いやいや、そんなメンタリティじゃダメだ。
ここでまごつくワケにはいくまいよ。
『スライムさん……私は大丈夫だから』
シズさんにまで心配されるようじゃ情けない。
大丈夫、大丈夫だ。
「入り口はガラス張りなんだな……ッ!!?」
って、自動ドアかい!
中に入ろうとした時、俺の体を何かが探ってくる気配を感じ、直後自動で扉が開いた。
マジかよ……センサーで人を感知し、自動で扉を開く。
無駄に高等な技術を駆使している。
ここまで地球産の技術を再現しているとは驚きであった。
俺達が中へ入ると、視線を向けられた。
そして、扉の傍に控えたお姉さんが……。
「ようこそ。本日はどのようなご用向きですか?」
……こう問いかけてくる。
さながら一流ホテル。
本部ともなると、流石に強い
「あ、ああ、
そう告げて、紹介状を手渡した。
「確認してまいります。こちらにて少々お待ち下さい」
「あ、はい」
ソファーまで案内されてちょこんと座らされる。
……今の俺は『夜の蝶』でのゴブタと大差ないな。
そして、待つこと数分……。
「大変お待たせいたしました」
俺に向けられたであろう声の主のいるほうへ向き直ると、そこには綺麗な金髪にエルフ耳が特徴的なスーツ姿の美人さんが立っていた。
「リムル様のみお通しするようにと言い付かりました。ここからは専属の秘書である私がご案内します」
「え、グラマスがお会いになる!?」
「中々会ってはもらえないのに……」
「だからリムルの旦那は特別なんだって」
いや、外野は静かにしてもらえないかな?
聞いてるこっちがメチャクチャ恥ずかしいわ。
それはそうと美人秘書さんが私に付いてきなさいと背中で語っておられる。
早く付いていかねば置いてかれそうだ。
エレベーター代わりの転移装置によってスムーズに目的の場所まで案内されてゆく。
そして、長い廊下を歩いている間もこの美人秘書さんは全くと言っていいほど俺に話しかけてこない。
「あの……」
「
……流石にもう分かったよ。
この美人秘書さんは俺と話したくないんだな。
そうこうしている間に、目的の場所に着いてしまった。
随分と小綺麗にされた談話室であった。
「こちらの部屋でお待ちください。……では」
「あ、どうも」
本当に素っ気ない人だな……。
さて、来るまで少し時間はあるだろうし、この中を物色させてもらおうかな。
……なんかドラえ○んみたいなのあるけど気の所為か。
『スライムさん、私……』
うん、俺もシズさんと同じことを考えてたよ。
いきなり相手の核心を突くようなことを言わなければ、俺はむしろ話し合ってもらいたいと思ってる。
……今日はそのことで神経を擦り減らしていたけどね。
『……ありがとう』
よし、それじゃあ出すよ。シズさん。
「お待たせしました。僕が
「「 お久しぶり、ユウキ君 」」
「ス、スライムと……シズ先生が二人ぃ!!?」
ドッキリ、ではないけどドッキリ大成功ってヤツだな。
「初めまして、
「は、はぁ……」
スライムボディーで握手を交わした俺達。
そうしてユウキは対面のソファーに座り、俺と、俺の両隣にちょこんと座るシズさん達を困惑気味に見やった。
まずはこちらから雑談を振る。
「もう知っているかもしれないが、このシズさん達は精神面・魂魄面ともに正真正銘シズエ・イザワその人だ。色々あって今は精霊だけどな」
「……いや本当に驚きましたよ。フューズに聞いてはいましたが、噂の魔物の国でシズさんを保護していたのが……その……」
「スライムだとは思わなかったって?……でも俺のほうも驚いたよ。その若さでここの総帥なんだろ。15、6ぐらいか?」
「あぁいえ、実際には二十代後半です。……僕は異世界からの転移者なのですが、この世界に来た時スキルを獲得できなかったんです」
……嘘をつく時、嘘ではないことも織り交ぜれば真実味が増すとはよく言ったものだ。
比率で言えば、真実:嘘=8:2くらいかな?
シエル先生が今さっき教えてくれた結果だ。
「その代わりなのか身体能力は異常に発達しまして、肉体の成長もそこで止まってしまったようなんです」
「へぇ……」
「そのせいにするのもなんですが、中々大人の男としては見てもらえず、いまだに女性と付き合ったこともないものでして……」
「いやーそうかね?残念だったねそれは!なーにその内いいことあるさ!ハッハッハ!」ブルンブルンブルン!!!
「なんでそんなに嬉しそうなんです?」
「いやなに、ただのスライムスマイルさ!」ブルンブルン!!!
「「 もぅ、スライムさんったら…… 」」
これは紛れもなく本当そうだね!
いやー女性経験が無いなんて可哀想だなー!!
……あれ、俺の心に
「スライムスマイル……そういえばリムルさん、一体どうやって入ってきたんです?この建物の入り口には結界があるので、魔物は入れないはずなんですが……?」
「あぁ自動ドアの前のあのセンサーか。……ひとつはこの仮面、これで
「その仮面はシズ先生の……ッ」
「この仮面はシズさんから正式に譲り受けた物だ。……それからこの姿」
スライムボディーから人間態へと擬態する。
改めてシズさんと比べてみると、シズさんの子供時代の生き写しかと思うくらい似通っていた。
「人間だった頃のシズさんの肉体と姿を継いだ。俺は喰った相手に擬態できるんだよ」
「喰った、相手……ッ」
瞬間、ユウキの目に殺意が宿り、凄まじい速度の上段蹴りが俺の頭部に叩き込まれようとしていた。
……が、そんな真っ直ぐすぎる蹴りが俺に直撃することは無い。
「………………え、グガッ!!?」
ユウキの蹴りに蹴りで合わせる。
そこに数ミリグラムの加重を加えることで軌道を完全に狂わせ、ユウキが頭から床に激突するようすっ転ばせる。
……ギリギリで受け身が間に合ったか。
「ッ〜〜〜!!」
「……落ち着けよ
頭を押さえてジタバタとしていたユウキだったが、高い身体能力のおかげか即座に立ち上がってみせた。
その目には明らかな敵意が宿っている。
「……やはり只者ではありませんね。信じ難いが、たかがスライムがシズ先生を殺したという事実を認めざるを得ない」
「ユウキ君落ち着いて!」
「これは私も納得したことなの!」
「事実を履き違えるなよ。人間であることを捨てさせたのは俺とレイタロウさんの責任だが、シズさんは自由意志を損なうことなく今もこうやって生きているんだ」
「屁理屈を……ッ」
「……それから、先生を敬愛するならその仮面くらい大切にしろ。今の蹴りで壊れるとこだったぞ」
「っ……」
シズさんのことを持ち出したことでようやく落ち着きを取り戻したユウキ。
息を整えた後、再度ソファーに座り直してくれた。
「……詳しく聞かせてもらいますよ」
「勿論だ。出会いから話そう」
ユウキはまだ俺を信じられない様子だったが、話を聞く姿勢にはなってくれた。
そこにシズさんを交えたことも大きいだろう。
シズさんが人間として限界を迎えつつあった
差し出された紅茶を啜りながら話の幕引きを図る。
「……まぁそんな感じだ。スライムの言うことなんて信じられないかもしれないけどな」
「……いえ、先生がそれを良しとしているのなら、僕から言うことは何もありません」
「そうだ言い忘れてた。俺は悪いスライムじゃないよ!」
「ぶっ!!?」
……やっぱり、ソース元はこいつだな。
某国民的ゲームのアレを教えたのは。
「……っ、そのネタ……!!」プルプル…
「ああ、俺も元ネタを知ってるよ。……でも戦時中にこっちに来たシズさんは違う。同郷だった子から聞いたと言っていた」
「……ええ、僕が話しました。先生はあちらの様子を知りたがっていましたから……」
「現代の日本か。俺も終戦後のイメージを見せたら喜んでくれたよ」
「……ということは、やはりリムルさんも?」
「そうだよ。日本人だ」
「………」
「まだ疑うのか?……いいだろう、では君の望むものを見せてやる」
シエル先生お願いします!
《……了》
「うわっなんか出てきた―――こ、これは!!『はがぬの錬金術師』の最終巻!?発売日前にこちらの世界に来てしまい、どれほど悔しかったことか……ッ」
棚の様子から彼の趣味は把握した。
あとは時期的に彼が読めてなさそうなものを俺の記憶から再現させる。……まさにシエル先生の無駄遣い。
《………》
「生憎紙が無いんで布に転写するしか出来ないが……」
「紙!?紙ですね!!ありったけの紙を持ってきてくれ!すぐにだッ!!」
「は、はい……」
「あああ……もう二度と続きは読めないと諦めていたのに……ありがとうございます師匠!!先程までの無礼の数々、どうかご容赦くださいッ!!」
「う、うむ……」
……机の上に置かれた大量の漫画本を前に、ユウキは涙を流しながら感謝の言葉を述べまくっている。
しかし〝たかがスライム〟から〝師匠〟か……。
漫画って、凄いな。
何ならシズさんも漫画読んでるし。
「そういえばまだ用件を伺っていませんでした。いらしたのは何か理由があるんですよね。勿論協力させてもらいますよ!」
よし、これでシズさんの心残りも訊きやすく……。
「やはり帰還方法を探している、とか?」
「……え、帰還?」
……あちらの世界への帰還かぁ。
確かに考えたことはあるが、
この姿じゃ信じてもらえないだろうしな。
今となっては魔国連邦にいるあいつらを置いていくほうがあり得ない。
でも可能なのかは気になるところだ。
「出来そうなのか?」
「っ……」
……やはり駄目か。
「ですが可能性がないとは思っていません。喚ぶことが出来るのなら還すことが出来たっていい」
「喚ぶってのは、イングラシアにいる五人の子供達のことだな?」
「ッッッ……そうか、そうでしたか、そのことは先生から聞いたんですね?」
「気分の良い話じゃないってことは承知している。その上で聞かせてくれ。五人の子供達の現状を」
「……ユウキ君、彼にならあの子達を任せられる。私も付いているから、お願い……」
ユウキは、それはもう深い溜息をつき、改めて真剣な表情で俺達と向き直ってくれた。
「ほかならぬシズ先生のお墨付きをもらっているのなら、僕も腹を決めなければいけませんね。……分かりました、あなたに託してみます」
……ユウキとの話し合いを終え、俺はカバル達にある重大な話をするためにレストランまで連れてきた。
そのカバル達は遠慮なしにガツガツ喰ってるけど。
「まさかここまで長く話し込むとは思わなかった。悪いなお前ら、ずっと待たせちまって」
「気にしないでくださいよ!」
「ねぇねぇ、グラマスと目的の話は出来たのぅ?」
「ああ、まぁな。それでお前らに言っとかなきゃならないんだけど……」
「何でも言ってくれっす!」
「突然だが、ここまでの案内ありがとな」
「「「 へっ……………………クビ? 」」」
「違う違う、そうじゃねーよ。子供達を助けるためにもシズさんの代役を務めることになってな。……旅は中断だ」
「シズさんの代役って……何でやすか?」
「英雄とかぁ?」
「……教師だ」
ガラじゃないのは分かっている……が、割と乗り気だ。
次回、転生したら教師だった件。
観てくれよな!(嘘告知)
ちなみに、リムルは側頭部から生えている三対の角を自在に出したり引っ込めたり出来ます。
仮面を付けていなくても、ね?