一度おウチに帰るよ!って話です。
「おぉこれは……シュークリームだねぇ」
「そ、皆のお土産として買ってきたんだよ」
「シュー
「シュークリームね。カリカリの生地にフワフワの甘いクリームが入ったお菓子だよ。食べてみなさいシュナ」
パクッ…「っ〜〜〜、美味しいです……!!」
「「 でしょー? 」」
いやはや、かなり多めに買ってきたけど、見た感じ評判は上々そうだな。良かった良かった。
俺はリムル。
イングラシア王国の自由学園の教師に赴任して何日か経過し、俺は近況報告を兼ねて一度
勿論、お土産として箱詰めにされた大量のシュークリームを持参することも忘れない。
現在は和風なお座敷でレイタロウさん達とともにシュークリームを堪能している真っ最中なのだ。
「あー、シュナ様ズルいです!……ってリムル様!?」
「おぉただいまシオン。お前の分もちゃんとあるから食ってけよ」
「シオン、この愛らしいお菓子はシューク
「まぁ本当ですか?……んん〜〜〜美味しぃ〜〜♡」
「だからシュークリームだって……」
「まぁまぁいいじゃないリムルさん。この味をシュナに覚えてもらって、ウチの特産品に組み込めばいいんだよぉ。うんうん、これはホントに美味しいねぇ!」
「全くレイタロウさんは……しょうがねぇな」
俺の顔(顔と言っても二本線を描いただけの至ってシンプルなヤツだろうが)が描かれたシュークリムルというお菓子が出回るのも時間の問題だろうな。
もう既に俺のスライムボディーをそのまんま真似た
「あれ、リムル様?」
「よぅベニマル、お土産あるぞ」
「いつの間に帰ってたんです?」
「ついさっきだよ。影移動で一時帰国だ」
いやーホントに便利だよね影移動。
障害物なくイングラシアから魔国連邦まで直線移動できるから一日もかからずに行き来可能なのだ。
「あ、リムル様ッス!」
「これはこれは……お出迎えもせず申し訳ないですじゃ」
「いいっていいって。またすぐ戻らなきゃならんしな」
修行終わりのゴブタや気絶しているゴブゾウ、鬼教官(文字通り)のハクロウがやって来たのを皮切りに、俺の一時帰国は瞬く間に魔国連邦中に広まってしまった。
「え、本当か!?」
「なんと!?」
「リムル様が……!」
「なんですっと―――!!?」
……うーん、ちょっと様子を見に帰ってきただけなのに、なんか凄い集まってきたな。
「おい、もっと詰めて座れよ」
「そっち羽しまえって」
「あぁ〜リムル様のご帰還に、我輩涙が止まりませぬ!」
「あむあむ……このシュークリムルってヤツ美味え……」
「オラの打った刀の調子どうだべ、リムル様?」
「シュークリムル美味いッス!」
「そうダスねゴブタさん!」
「お兄様、もうちょっと落ち着いて食べてください」
「このシュークリムルを参考にして、私が更なるアレンジを加えた手料理を……!」
「やめろやめろシオン!お前のそれは洒落にならん!」
「フフッ、二人にはまだ早いですよ〜?アカシ、シュカ」
「「 ブゥゥゥ……!! 」」
「あぁなんと素敵な……!!まるで幼きレイタロウ様がお二人も居るかのようです……!!このディアブロ、感激のあまり果ててしまいそうで……ッ」
……なんか知らない顔が一人いるけど、大方レイタロウさんがスカウトしてきた魔物ないしは魔人なんだろうな。
つーかもう知らん。
取り敢えずこっちも聞きたいことがあるからな。
「町の運営は順調なのか?」
「つつがないですよ。
「ブルムンドといえば……そこからやって来た商人が
「ほぅ!」
「フューズさん達が上手いこと宣伝してくれたおかげで、この町にも大勢の人間が来るようになったのさ。それはそうとブルムンドの商人の名前はガルド・ミョルマイルだったかな」
「レイタロウ様の仰られる通り、かの商人はイングラシアにも行商に向かうと言っておりました」
「へぇ……ならあっちで出会えるかもな」
これは中々いい流れなんじゃないか?
俺の挙げた成果が目に見えてこの町に還元されるなんて、ちょっと嬉しくなっちゃうな。
「……リムル様。リムル様のお話もお聞かせください。人間の国で先生になられたとか」
膝に
……そうだな、皆に相談してみるか。
「実はな……」
イングラシアにいる五人の子供達の置かれた状況を説明し終え、周囲の反応を窺う。
「なんと……魔素が安定せず肉体の崩壊を待つ子供達とは……」
……同情などが大多数を占めていたが、中にはどうしようも無いと匙を投げる者もいた。
「気の毒だとは思うが、手を貸してどうにかなるもんなんですか?」
「難しいでしょうな。膨大な魔素を安定させるほどのスキルとなるとユニーク級……厳しい修行を課したとて、獲得できるとは限りませぬ」
「だよな……リグルド、人間だった頃のシズさんは覚えているな?」
「はっ、勿論です」
「彼女は昔、生徒達と同じ状況だったが、魔素の安定に成功して生き永らえていたんだよ」
「では、その見当もついておられると……?」
「勿論。……鍵を握っているのは、
「イフリート……炎系の精霊では王級に次ぐ上位精霊ですよね」
「そうだ、シズさんは幼い頃そいつを魔王レオンに憑依させられた。……おそらくだが、イフリートが魔素を制御していたんじゃないかと思う」
というのがシエル先生の導き出した結論だ。
……シエル先生の手を借りれば、一を十にも百にも発展させられるが、
ユニークスキルを発現させることは理論上可能だろうが、子供達の負担を度外視した場合という注釈は付く。
それじゃあ駄目だ。
そうなると、前例もあってより確実な方法を選ぶのはある意味必然とも言える。
「なるほど。つまりリムル様は、子供達に精霊を宿そうとお考えなのですね」
「「「「 ……… 」」」」
「……トレイニーさん居たのかよ!!?」
「はい、いただいております。シュークリムル四つ目」
「(……四つ目!!?)」
こ、この人どこにでもいるな……。
「とても良い案だと思いますよ。確かに精霊は魔素の扱いに長けています。……しかし無視できない問題もあります」
「と、言いますと?」
「まず下位の精霊ではそれほどの魔素は制御しきれないでしょう。ですが上位精霊はその数も少なく……」
言い終わる前に、精霊を呼び出すトレイニーさん。
室内に軽く風が吹き荒れ、そこにTHE・風の精霊みたいな羽の生えた女性が現れた。
「「「「 おぉ…… 」」」」
「……そちらは?」
「この子は私の契約精霊〝
すると、彼女は何を思ったのか、急にガビルを指名してシルフィードに話しかけてみろと提案してきたのだ。
これにはガビルも驚きと困惑を露わにしてしまう。
……が、そこは男ガビル。
勇気を振り絞ってシルフィードに話しかけてみることにしたようだ。
「えーと……わ、我輩はガビルと申す者。ご機嫌はいかがかな?」
「ジィィ……」プイッ!!
あ、そっぽ向かれた。
どうやらガビルはお気に召さなかったようだな。
項垂れるガビルを横目に見やりつつ、トレイニーさんの話に耳を傾ける。
「このように上位精霊は気まぐれです。気に入らなければ助力は望めないでしょう」
「むごいな……」
「せめて精霊の住処へ行くことが出来れば、相性のいい精霊に出会えるかもしれませんが……」
「精霊の住処?」
「精霊女王の統べる別次元にある場所です。入り口は女王の意思ひとつで引っ越ししてしまうので特定は困難でしょう。……私が取り次げたら良かったのですが、現女王との接点が無いのです」
「そうか……」
「お役に立てず申し訳ありません」
「いや、俺のやろうとしてることが間違ってないって分かっただけでも収穫だ」
……しかし、神出鬼没の精霊女王の住処かぁ。
探すだけでも骨が折れそうだし、仮に探し出せても不興を買ったらそれだけで姿を晦まされそうだな。
「イングラシア王国から南下した魔導王朝サリオン、その南端に位置するウルグレイシア共和国に精霊の住処はあるよ」
「「「「 えっ……? 」」」」
「知ってたのかレイタロウさん……?」
「知ってるも何も……そこの精霊女王は魔王だからね」
「え、マジで?」
「色んな人の記憶をスキル越しに観察して、芋づる式に見つけ出した成果だよ。……ディアブロ、地図を」
「はっ……こちらがウルグレイシア共和国となります、リムル様」
「あ、どうも……」
……そういやそうだったな。
「場所はズバリ、この森の、この辺りだ」ビシッ!!
「結構アバウトだな!?」
「仕方ないでしょ?……此処の精霊女王ってホント気まぐれだから、割とちょくちょく引っ越しを繰り返して場所を特定するのが難しかったんだよ。でも、そこら辺にいるのは確かだよぉ」
「……水晶に発信機能でも備えておいたのか?」
「正解」
「うわぁ……マジかぁ……」
当てずっぽうだったのに、こんなに外れてほしい直感も中々ないぞ全く……。
だがしかし、今は一刻を争う状況だ。
ある程度居場所が絞り込めているのであれば、それに越したことはない。
「……まぁいいや、場所教えてくれてありがとよ。俺そろそろ行くわ―――ッ!?」
「ッ〜〜〜!!」
さっきから妙に感じていたことがある。
シオンだ。シオンが妙に静かだったのだ。
それに違和感を覚えて向き直ると、そこには険しい顔をしてシュークリームが入っている箱を凝視するシオンがいたワケだ。
当然ビックリもする。
「ど、どうしたシオン。やけに静かだと思ったら怖い顔して……」
「このシュークリムル……これ以上食べたら工事現場のゲルド達の分が……ッ、でもッ、でも美味しくて……ッ、私はどうしたらいいんですかリムル様ぁ!!?」
……平和だな、シオンは。
「食べていいよ、まだあるから」
「ほ、本当ですか!?」
「では私も……」
「待った!トレイニー殿はもう四つ食っただろ!」
「若……」
「リムル様が戻られたと聞いて……」
「良かったな。あと少し遅ければ無くなっていた」
……まぁここまで喜ばれると買ってきた甲斐があるな。
今度またほかのも買ってこよう。
あの店はシュークリーム以外も美味しいからな。
「……それはそうとレイタロウさん、少しお聞きしても宜しいかしら?」
「ディアブロのこと?それともこの
「両方だよ両方!!俺がいない間に何があったぁ!!?」
「改めまして、私はレイタロウ様によって召喚されました
「あ、ご丁寧にどうも……」ニギニギ…
「リムルさんが出立した直後に召喚したから、まぁ知らなくて当然だよねぇ」
「道理でシエル先生が『悪魔召喚』なんてものを習得してたワケだよ。……それで、その双子ちゃんは?」
「このちょっと俺に似て勇ましい感じの男の子はアカシで、シュナに似て淑やかそうな女の子はシュカ。……俺とシュナの子供だよぉ」
「……ぇぇぇぇえええええええ!!?」
「リム…リム!!」
「ムルムル…」
「あ、喋った!?初めて喋ったぁ!!?」
「リムル様のお名前を口にするなんて……」
「おぉ、このディアブロ、感激で涙が……ッ」
「……妊娠してからまだ数ヶ月しか経ってないはずだろ。俺の常識がおかしいのか……?」
区切りがいいので今日はこのくらいにします。