精霊女王とご対面!って話です。
翌日。
俺ことリムルは、子供達とランガとともに『
「「「「「 ッ………!! 」」」」」
「ほら、早く行くぞ?」
「「「「「 は、はい! 」」」」」
門の威容と神秘性に心奪われていた子供達を正気に戻し、俺達は改めて門の向こう側の精霊の棲家と言われる迷宮へと足を踏み入れた。
シエル先生の脳内マップがあって良かった。
一本道に見えて、方向感覚を狂わせる罠が多数仕掛けてあったのだ。
戻ろうとすると明かりの調整により今までの通路が影に隠れる仕組みがあり、進む先にも一本に見えて光の先に別の通路が隠れていたりする。
なるほど、確かに迷宮である。
人の方向感覚だけではおそらく迷い、帰ることも出来なくなるかもしれない。
これは結構恐ろしい造りになっているようだ。
……ただまぁ、攻略本を見ながらプレイしているようなものだから思っていたよりのんびりしているけどね。
「うふふ……」
「おやおや……」
と、思った途端にお出ましか。
突然辺りから響いてきた小さな声に怯えるクロエを庇うようにサッと前に立ち、声の主相手に交渉を試みてみることにした。
「聞こえるか?……こちらに敵意は無い。用が済めば直ぐに立ち去る。良ければどこに上位精霊がいるか教えてもらえないか?」
クスクス…「あはは、おもしろい」
「いいよ」クスクス…
クスクス…「教えてあげても」
《告。後方より敵性反応あり。Aランクオーバーの
「……ただし」
「っ、お前ら後ろだ!!」
「「「「「 わわっ……!!? 」」」」」
後ろに控えていたケンヤ達に注意を促す。
そして、闇の向こうより現れたゴーレムを睨みつけた。
「試練に打ち勝ったらね!」
迷宮内の床を踏み砕きながら現れたそれは、一言で言ってしまえばサイクロプスのようなロボットであった。
直後、その単眼を光らせる。
「危ないッ」
「キャッ!!?」
クロエを抱えてバックステップする、と同時に、俺達が先程まで立っていた床をその剛腕で砕き割りやがった。
爆砕音とともに粉塵が周囲を舞う。
「おいおい、食い気味に殺しに来てるじゃないか」
「ヴォォォォォォォ!!!」
俺の言葉を一蹴するように、凄まじいほどの雄叫びを上げるゴーレム。
子供相手にも容赦がないその冷酷ぶりに、さしもの俺も冷や汗でビッショリだ。
……が、ここで引くワケにはいかないんだよ。
「試練ってのはこいつを倒すことか?」
「そうだよ」
「できるかなできるかな」
「その子はとっても強いよ」クスクス…
「……そうかよ」
生憎こっちはメチャクチャ忙しい。
そっちのイタズラに構ってる暇はねーんだよ。
……
「楽しそうなとこ悪いけど、子供達に怪我させたくないんでな。すぐに終わらせてもらう」
俺の足元より現れたる三つ首の影が地を這い、ゴーレムの全身に纏わりつく。
ゴーレムは必死になって影を振り払おうとするが、そんな程度じゃ俺の影からは逃れられない。
「影を喰らい尽くせ―――〝
俺の命令を受け、三つ首の影はゴーレムの影を片っ端から捕食していった。
するとあら不思議、影を喪失した箇所から跡形もなく消失していくではあーりませんか。
右腕、左足、左腕、右足、胴体、仕舞いには頭……ゴーレムは抵抗虚しく影を捕食し尽くされ、まるで最初からそこに存在していなかったかの如く露と消えてしまった。
子供達はただ呆然と立ち尽くしている。
「う、うそ!?アタシの
……そして、声の主もまた驚きを露わにしていた。
「さっさと姿を現せ。隠れてる場所は分かってるんだよ」
ビクッ!!!「ッ〜〜〜!!?」
「ゴーレムみたいに喰らい尽くしてもいいんだぞ?」
「はいっ、はいはいはいはい!!たった今恥ずかしながらやって参りました!!」
ちょっと脅しをかけたらすぐ出てきやがった。
めっちゃミニマムで羽の生えた金髪の妖精少女。
こいつがレイタロウさんの言っていた……。
「我こそは偉大なるりゅガチッ!!!……舌噛んだぁ!!」
「……大丈夫か?」
「っ、我こそは偉大なる十大魔王が一柱、
……なんだコレ?
なんか初めて会った時のガビルを思い出すんだが。
まぁ信じるけども。
「お前がレイタロウさんの言っていた魔王ラミリスだな。俺の想像していたのとまるで違うけれど、取り敢えず信じることにするよ」
「フフーン!そうよ!もっとアタシの威光に触れて平伏すがいいわ―――レイタロウ?」
「ん、レイタロウさんがどうしたんだ?」
「あ、ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」
ど、どうしたんだラミリス!?
急にム○クの叫びみたいなポーズで叫びだしたぞ!?
「レ、レイタロウ……!?も、ももももしかしてアンタ、
「……そうだけど」
「あああやっぱりぃ!!何の脈絡もなく枕元に謎の水晶を送り付けられたことがケチのつけ始めだったのよ!」
「……ああ、もしかしてミリムとレイタロウさんの戦いも観ちゃったのか」
「観ちゃったわよぉ!!急に水晶に映像が映し出されるから何が始まるのかな〜?なんて思って観てたら、あのミリムがコテンパンに叩きのめされるショッキング過ぎる光景を観ちゃったワケなのよぉ!!」
「……可哀想に」
「一度は夢だと思ったわよ!でもこの前久々に来て〝レイタロウに負けたのだ!ハッハッハ!〟なんて言い残していきやがったのよアイツぅ!!こんな形で夢破れるとは思いもしなかったわ!」
ゼーハーゼーハーと息を荒げながらも一通り言いたいことを言い終えたラミリスは、トドメと言わんばかりに俺の耳元で絶叫した。
「ばぁーっか!!ばかばかばかばか!!あの黒トカゲにそう伝えてくるがいいわこのおたんこナ―――パンッ
……流石にウザかったため、蚊を潰す要領で思っきし柏手を打ってやった。
ラミリスは ひんしのきずを 負った!
<<< 五分後 >>>
「あのねアンタ、ミリムって言ったら十大魔王の中でも特に理不尽な存在なワケよ」
なんで俺がオヤツの準備してるんだろ……?
まぁラミリスを蚊みたいに叩いちゃったから、そのお詫びってことでやってるんだけど……。
「力の権化みたいなアイツをそれ以上の力で捻じ伏せるヤバい奴が十大魔王になっちゃったのよ?それを間近で目撃したアタシの気持ちにもなってもらいたいわ!そもそもアタシは可憐さを全面的に押し出している魔王なのよ?ほかの魔王と同じと思われたら屈辱的なワケ!」
「……でも同じ魔王なんだろ?」
「そうだけど違うの!全ッ然違うの!!ドラゴンとスライムくらい違う!!十人の魔王がみんな力自慢だったらキャラが立たないでしょーが!!そんなのもうあの黒トカゲ一人で十分じゃん!!」
「分かった分かった。じゃあ君は何に特化した魔王なんだ?」
ラミリスはフフンと鼻を鳴らし、ドヤ顔で口を開く。
「知恵と美貌!」ドヤァ…
《告。個体名ラミリスの『精神支配』に
「……どうでもいいけど、俺に精神支配は通用しないぞ」
ギクッ!!!「や、やめまーす……」
妙に感じるイライラの原因コイツか。
若干感じていたイライラが急速に収まり、今度はまた別のイライラが襲いかかってくる。
「……そもそもお前、ゴーレムで俺達を殺そうとしてたよな?」
有無も言わさずラミリスを粘鋼糸でぐるぐる巻きに縛りあげ、簡易的な尋問を行う。
「ちょっとちょっとなんでまだ怒ってんの!?驚かせようとしただけだって!妖精の可愛いイタズラだってー!」
「……精霊の棲家を目指して帰ってきた者はいないって聞いたが?」
「迷子にでもなってんじゃないの?遠い異国の出口に放り出してるから」
「それはそれで酷えな」
「だいたいねぇ、アタシばっかり責められるってひどくない?アンタが壊したゴーレムってアタシの最高傑作だったんですけど!?」
「あのな、そっちが試練とか言い出して襲ってきたんだろ?」
「なにも消し去ることないじゃん!アンタのほうが強いってのにさ!相手の気持ちも考えなさいよね!?」
こいつ、もしかしてまだ『精神支配』を目論んでるのか?
喋るたびにイライラが増していくぞ……。
「あーもう……あんなに頑丈な外殻がたまたま手に入るなんて滅多にないラッキーだったのにぃ……」
「なんだ、最高傑作とか言ってたクセに、外殻はどっかから盗ってきたのか?」
「ちょっ……人聞きの悪いこと言わないでくれる!?あれはドワーフ王国の研究所で造られた魔装兵の試作品だったの!残骸が捨てられてたから、アタシが再利用してあげたワケ!」
なるほど、資源ゴミ泥棒か。
それにしても魔装兵ねぇ……。
そういえば前にカイジンが言ってたな。
……ってことは、ドワーフの技師ですら失敗した『魔装兵計画』を自己流で完成させたのか、この魔王は。
「胴体はいい線いってたけどね、心臓部の精霊魔導核がもーダメダメ!あれの動力は火の精霊が制御してるんだけど、そもそも通常の鋼材じゃ精霊に耐えられないワケよ!可動部は水の……」
やけに詳しいみたいだし、ひょっとして本当に賢いのか?
……自慢が鬱陶しいけど。
「ラミリスだっけ、凄いのは分かった。そんな君を見込んで頼みがある」
「はぁ?なんでアタシがアンタなんかの言うことを……」
俺の足元を基点に、無数の竜の首のような影が現れる。
その竜の口を、さながらギロチンのごとく開閉する。
そして影を、ラミリスへと近付けていく。
「聞いてあげてもいい気がしてきたのであります!!」
「いやぁ助かるよ」
断っておくが、俺に害意は全く無い。
俺は影を近付けただけで、見事な敬礼をして了承したのはラミリスの意思なのだから。
……子供達にジト目で見られるが、俺は悪くないのだ。
「勿論タダとは言わない。協力してくれたら俺が新しいゴーレムを用意しよう」
「マジで!?……聞こうじゃないの」ワクワク…
チョロいな、こいつ。
そんなこんなで、ラミリスに子供達の窮状を伝えることは出来た。
「はぁ〜なるほどねぇ。この子達も苦労してるんだねぇ」
「……そんなワケで、どうしても上位精霊の協力が必要なんだよ。そのために精霊女王に取り次いでもらいたい。精霊に詳しいラミリスなら会ったことあるんじゃないか?」
「あれ、言ってなかったっけ?
「……いやいやいやいや、子供達の現状話したよな!?冗談言ってる場合じゃないんだけど!?」
「冗談じゃありませーん、本当です―――!!」
「魔王って設定どこ行ったんだよ!?欲張ってると信用なくすぞ!」
「設定じゃありませんー!!精霊の女王が堕落して魔王になっちゃったんですー!!」
「堕落!?」
何なんだよ全く。
精霊女王で魔王だなんて聞いてない……。*1
あ、レイタロウさん言ってたわ。
っていうか、俺が頭の中で魔王ラミリス=精霊女王ラミリスという事実を否定していたんだなきっと。
つまりは威厳の無いラミリスのせいだな!うん!
「……分かった、取り敢えず飲み込むことにする」
「よろすぃ!」フンスッ!
「……それで?協力してくれる気はあるのか?」
俺の言葉に、初めて真剣な表情となったラミリス。
「……
聖霊の加護?
で、何が言いたいんだ?
「いいよ、召喚に協力してあげる。せいぜいスゴイ精霊を呼び出すといいさ!」
……やれやれ、どうにかなりそうだな。
俺や子供達の周りを軽快に飛び回るラミリス。
その軌跡は、子供達の明るい未来を予感させるほどに光り輝いていた。