子供達が、色々な意味で救われるって話です。
「へぇアンタ、トレイニーちゃん達三姉妹と知り合いなんだ?……
……イメージしにくいな。
それはそうと
当然と言えば当然だが、
「そっちこそ面識があったんだな」
「そりゃね。昔仕えてくれた子達だもん。……でも元気そうで安心したよ。アタシもこんなんなってからは会ってないからね」
まるでこんなじゃなかった時代があったみたいな言い草だな。
「……アンタ今失礼なこと考えなかった?」
「いや全く」
妖精って人の考えていることが読めるんだな。
出来る限り心を無にしよう……などと考えていると、横合いから急に別の妖精が現れて解説を行ってくれた。
曰く、現在のラミリスはまだ小さくて弱いものの、本来は威厳にあふれた非常に強力な存在であるらしい。
ラミリスは転生と成長を繰り返す魔王であり、親ラミリスの自我や記憶を子ラミリスに受け継がせるサイクルが成り立っているため、魔王の中で唯一世襲が許されているのだとか。
ああ見えて深い叡智を湛えているらしいが……言われても全然ピンと来ねえな。
「チョコレートあげるわ」
「え、いいの!?マジで!?もう返さないからね!」
……アリスからチョコを貰ってる姿なんて、もはや近所の子供そのものだ。
まぁ賢さはともかく、ラミリスが話の分かる魔王で本当に良かったよ。
「着いたわよ。ここが迷宮の最奥―――」
しかし、勇者になるべく召喚された子供達を助けるのに、魔王の手を借りるってのも不思議な話だ。
「……精霊の棲家よ」
小高い山に光の回廊が螺旋状に絡んでいる。
此処が精霊の棲家、か……。
<<< ゲイルの場合 >>>
まず最初に、年長者のゲイルが精霊との接触を試すことになった。
「先生、自分に何かあったら、アイツらを頼みます」
まぁそう硬くなるなよ。緊張しすぎだぜ?
そうこうしている間に頂上の円状の広間に着いた。
まるで宙に浮かんでいるかのような錯覚に陥る。
足を踏み出そうとして、慌てて止める。
目の前に床が見えなかったのだ。
だが『魔力感知』では床はある。
……これって透明なガラス?アクリルか何かなのか?
驚きつつも足を踏み出した。
ゲイルは怖がっていたが……。
「大丈夫、足場はある。何かあっても俺が助けるよ」
そう言ってやると、覚悟を決めてやって来た。
おそるおそる慎重に。
そして中央まで進むと……。
「さぁここでいいよ!どんなのが呼ばれてくるか楽しみだね!」
ラミリスが屈託なくそう述べた。
ゲイルの頭をポン!と叩くと、ゲイルはそれで安心したのか目を閉じて祈り始める。
片膝をつき、神に祈るような姿勢で。
俺は腕を組み、その様子を眺めた。
「……精霊ってのはこんなふうに祈るだけで現れるもんなのか?」
「
「へぇ……過去にここで上位精霊の呼び出しに成功した人間はいるのか?」
「………………いるけどッ」チッ!!
「
どうやらそれはラミリスにとって気分の良い話では無かったようで、ブツブツと愚痴りながら上位精霊を呼び出した人間について話し始めた。
「あの時はアイツまだ少年だったんだけどさ、特定の人物を異世界から召喚する方法が知りたいとか言って、知識に通じる光の上位精霊を呼ぶためにここへ来たワケよ」
「……で召喚に成功したと。良かったじゃん」
「良くない!!……その精霊って勇者の資質を持った相手にしか応じないんだよ。召喚に成功したってことはつまり、アイツが勇者だってこと」
「じゃあその少年に聖霊の加護を授けたのか?」
「そう!それがアタシの役目だからね。なのに……」
「待った」
「……来たみたいだね」
しばらく時間が流れ、やがて天から光の粒が降り注ぐ。
それはさながら雪のようだ。
「上位精霊……には見えないな」
「んーと、あれは……土属性の子が何体か来てるけど、みんな自我の無い下位精霊だよ」
「そうか」
「ちょっと、アンタ何を……!?」
ゲイルの横に立ち、その肩に手を置く。
「ゲイル、そのまま祈ってろ」
「は、はい」
「精霊を喰らえ―――〝
そして俺は、躊躇うことなく下位精霊達を喰った。
「ちょ、ちょっと!アンタ何てことすんのよ!?」
「まぁ黙って見ててくれ。考えはある」
いーい感じに纏めてくれよシエル先生!
《了解です
お、おぉ……!?
徐々にその姿を露わにしていく元・下位精霊。
それは……何というか……。
……ウルト○マン?
《……疑似上位精霊〝
シエル先生趣味に走るなし。
……ンなこと言ってる場合じゃないわな。
俺はゲイルの頭に手を置き、能力授与を実行する。
ゲイルと精霊の統合が実行され、一瞬で完了する。
ゲイルの状態を解析すると、異常を示していた
普通の子供よりも
これで徐々に成長に伴い、
手術は成功しました!
……そんな感じで、脳内でシエル先生と握手し合う。
「目を開けていいぞゲイル。よく頑張ったな、体内の魔素は安定したよ。……もう大丈夫だ」
そうゲイルに言葉をかけた。
痛みも何も感じていなかったのだろう。
キョトンとした顔で俺を見上げてくる。
力強く頷いてやった。
「もう大丈夫、崩壊は止まったよ。保証してやる!」
その言葉に涙を浮かべたゲイル。
「せ、先生……!!」
「喜ぶのはまだ早いぞ。全員成功してから喜ぼう」
「っ、はい……!」
何はともあれ、上手く行って良かった。
疑似上位精霊を創り出せるかどうかは賭けだったが、流石はシエル先生である。
「次、私ね!」
<<< アリスの場合 >>>
次はアリスだ。
細い道を歩くのを怖いと言ったので、抱き上げて進むことにした。
クロエとアリスが何やら言い合いをしていたが、子供らしいやり取りだろう。
気にせずアリスを抱き上げて、広間までやって来た。
今度も上手く行けばいいのだが。
俺達が見つめる中、アリスも祈るように目を閉じた。
「アンタむちゃくちゃするわね……」
「まぁね、なんとか上手く行ったよ」
「そういう非常識なとこ、アイツを思い出すのよね」
「アイツ?……あぁさっき話してた光の精霊を召喚した勇者か」
「そう勇者。せっかくこのアタシが聖霊の加護を授けて勇者に認定したってのに、アイツ今魔王になってるらしいじゃん?」
「勇者なのに魔王になったのか?」
「そう!非常識でしょ!?しかもめぼしい情報が得られなかったとか言って八つ当たり気味に炎の上位精霊まで奪ってったのよアイツ!!」
「……炎の上位精霊って
「え、そうだけど……なんで知ってんの?」
「じゃあアイツってのは魔王レオン・クロムウェルのことか?」
「そう、だけど、え、なにアンタ、まさかレオンちゃんとも友達なワケ?」
「……いや、むしろ仇みたいなもんなんだが」
元人間の勇者ってのは初耳だ。
「なんで勇者が魔王になったんだ?」
「さぁね、アイツも堕落したんじゃないの?アタシを真似してね!」
それは無いな。うん無い。
ラミリスも詳しくは知らない、か。
しばらく経つと、先程のように天から光の粒がアリスに降り注いだ。
ゲイルの時と同じ自我の無い下位精霊を素早く吸収する。
二度目ともなると手慣れたものだった。
「大丈夫かアリス?怖かったらクマのぬいぐるみ出そうか?」
「こ、子供扱いしないでよね!」
そうこうしている間にも疑似上位精霊が作られていく。
《……疑似上位精霊〝
……精霊の容姿がまんまウ○トラマンであることにはもうツッコまないよ。
ただね、アリスを包み込むように両腕を広げるダ○ナはちょっとシュールで笑っちゃうんだ。
「もう大丈夫だ。よく頑張ったなアリス」
あ、泣く。これは泣いちゃうぞ!?
おおぅ、急に俺の胸に飛び込んできやがった。
チュッ…「……特別だからね」
頬にチューされるなんて、初めてだぜこちとら……。
なんておマセな子だよ全く……。
「……ありがとさん」
「ひゅー!」
<<< ケンヤの場合 >>>
緊張のためか、少し不機嫌そうに見える。
「大丈夫か?」
「へ、平気だって!」
ケンヤが祈り始めようとしたその瞬間、まだ目も閉じてないというのに祭壇へと光の粒が降り注ぐ。
今までのヤツとは比べ物にならない大きなエネルギーを感じ取る。
「いよー!元気かい?初めまして、オイラは光の精霊さ。今日は気紛れで来てやったよん!」
……と思ったら、そこに一人の妖精?の男の子がいた。
というか自我もバリバリにある上位精霊だ。
しかも光の精霊!?
光の精霊ってラミリスの話じゃ確か……。
「キミ名前は?」
「ケンヤ……」
「ケンちゃんか!」
「ちょ、ちょっとアンタ!何しに人の家にやって来てんのよ!?」
ラミリスが目を釣り上げて少年妖精に詰め寄った。
どうやら知り合いのようだ。
「だって勇者の資質を感じたからね。来ちゃった♡」
「ぐぬぬぬ……!」
「知り合い……っていうかこの精霊がレオンに召喚されたのと同じヤツなのか?」
「そうだけど……厳密にはそうじゃないの」
「そうそう、オイラはケンちゃんの呼びかけに応じて出てきたの。同じ光の精霊だけど全く別の存在だよ」
???
よく分からんけど、ケンヤにも勇者の素質があるってことだよな?
「えぇと、その子を助けるのに力を貸してほしいんだが」
「いいよん♪」
ノリ軽ッ。
「もしかしたらケンちゃんも勇者になれるかもしれないからね!成長するまではオイラが保護するよ。じゃね!」
そう言うと、許可も取らずにケンヤへと入り込んだ。
あっけないほど簡単に、ケンヤの状態も安定したものへと変化する。
「先生……?」
「ん、お、おぅ、大丈夫、計画通りだ!」
どこがだよ!と、自分で突っ込みを入れたくなるが、気にしたら負けである。
サクサク進めよう。
俺の言葉を疑っているようだったが、状態が安定したと言うのは信じた様子。
皆のところへと戻り、自分で説明をしている。
中々どうしてしっかりしたものである。
しかしケンヤが勇者ねぇ……。
俺が魔物だと知られたら、討伐しに来るんだろうな。
それはちょっと寂しいな。
<<< リョウタの場合 >>>
さて、次はリョウタだな。
気弱なコイツがどういう精霊を呼び出すのか。
ちゃんと来てくれないと困るので心配である。
しかしまぁ手慣れたもので、祭壇前で祈りをさせる。
細い通路に怯えつつも、自力でここまで歩いてきた。
気合は十分のようである。
さて、どうなるか。
ゲイルやアリスのようにしばらくは何も起こらない。
やがて、天より螺旋を描くように、青と緑の光の玉が降りてきた。
何事も無かったようにササっと吸い込む。
水と風、二種類か。
リョウタにしては頑張ったな。
ともかくシエル先生の出番である。
《……疑似上位精霊〝
勿論〝YES〟だ。
「え、もう終わり?」
「おぅ。もう大丈夫だぞ」
「先生ちょっと疲れてる?」
「いや全然」
残るはあと一人。
クロエだけだ。
<<< クロエの場合 >>>
「心配しなくても大丈夫だよ」
「あっという間なんだから!」
「そーそー!頭にスルッと入っておしまい!」
スルッと入ったのはお前だけなんだケンヤ。
とはいえ最後の一人であるクロエも怖がったので、アリスと同じように抱き上げて広間まで連れて来た。
嬉しそうにしている。
怖がっていたのが嘘みたいだ。
「先生あのね、あのね……だ―――い好き!!!」
「俺も好きだよ」
「本当?」
もちろん先生としてね。紳士だから俺は。
でもせめてあと十年経ってから言ってほしかった。
……いや、むしろ生前に言ってほしかったな。
「……なにその顔」
「いや別に……」
ラミリスにツッコまれるようでは世話ないな。
いかんいかん、動揺していきなり気を抜くところだった。
クロエを安定させるまで油断するワケには―――
……例えるならば、天が堕ちてきた、とでも言うのか。
重圧と鮮烈なオーラを纏い、靡く黒髪の美しい天女が降りて来た。
俺は思わずクロエを呼び止める。
アレは、ヤバい。
「え?」
クロエ自身はキョトンとした表情を向ける。
天女は変わらず、そこにあるのみだ。
「精霊……なのか?」
《否。上位精霊と同様の
精霊に呼びかけたら、よく似た別の何かが現れたってか?
チッ、流石に全容が掴めないな……!
「おいラミリス!こりゃ一体―――」
天女は、俺に突然抱きつき、そのまま接吻してきた。
残念なことに、幽霊にされてるようなもので感触はほとんど無かった。
こんな美女になら例え幽霊でも……ってそうじゃなくて!何なんだ一体!?
「待て!!させないよ!アンタの好きにはさせない!!何もせずに今すぐ帰りな!!」
突然ラミリスが両手を翳し、攻撃態勢に入った。
その表情にさっきまでの軽い様子は無く、真剣そのものである。
その両手に闇色の光を収束し放つが、天女はヒラリと躱してクロエと重なり一体化した。
そして、先程までの圧倒的な存在感がウソのように消えている。
「クロエ、何ともないか?どこか痛かったり苦しかったりしないか?」
「う、うん、平気」
「そうか、良かった……さっきのは何だったんだ?」
「わっかんないわよ!……アタシも詳しくは分からない!でもアレはヤバいヤツよ。存在自体に時間軸のズレを感じた。たぶんアレは未来から来たのよ。この時代に現れた理由なんて知らないけど、その子に宿ったことで目的を果たしたのかもしれない。あ〜〜〜っ、きっとこの時代での干渉がキッカケで未来が大変なことにぃ!!」
「……ふーん」
「ふーんてアンタねぇ!これがどんな大変なことか分かってんの!?」
「分かるワケないだろ?説明してるラミリスにも分からないってのに」
「っ〜〜〜、でもちょっとは……!!」
「それに今は、クロエも助かったことを喜びたいしな」
「え?……ホントだ、魔素が安定してる。これなら崩壊の心配は無いよ」
「精霊じゃなかったみたいだけど、まぁ結果オーライだな」
そんな時だった。
こちらに近付く四人の子供達の気配を察知した。
「リムル先生ー!クロっちー!」
「クロっちも大丈夫だったんだよな!?」
「ほらぁ、あっという間だって言ったじゃない!」
……紆余曲折あったが、なんとか全員助けられたぞ。
子供達を遠目に見ていたラミリスに声をかける。
「アリガトな。寛容な精霊女王のおかげだ」
「「「「「 ありがとうございました!! 」」」」」
「……ばっ、ばっかも〜〜〜〜〜〜!そんなのいいってば〜〜〜〜〜〜!!」
顔を赤くし、照れながらバタバタと飛び回るラミリス。
コレが魔王だなんて、世の中は既に大変なことになっているのかもしれないな。
「「 みんな……本当に良かったねぇ…… 」」
「「「「「 えっ……? 」」」」」
そして最後に、俺から子供達へのサプライズだ。
こっそり『胃袋』から出しておいた
「ちょ、ちょっと、その子ってもしかして……!?」
「そ、レオンが八つ当たり気味に奪っていったイフリートの肉体に受肉した、元人間のシズさんだよ」
「えっ……えっ……せ、精霊に、人間が……!?」
困惑するラミリスを放置しつつ、まさかの対面を果たすこととなったシズさんと子供達の様子を静かに見守った。
最初こそ、双子の小人みたいになってしまったシズさんに困惑の色を隠せなかった子供達であったが、しばらく話し込むうちに段々と困惑の色は取れていき、やがて喜びのあまりか一斉に涙を流してシズさんに抱きついた。
「先生〜〜ッ」
「心配したんだからぁ!」
「よ"がっだよ"ぉ"ぉ"ぉ"!」
「うぇぇぇぇぇん!!」
「もう離さないから!先生!」
「「 うん……うん…… 」」
感動の再会を果たすことが出来て本当に良かった。
ついでにラミリスも涙ぐんでいるが、気にしないでおくとしよう。
何より今は、シズさんの心残りであった子供達を救えた事実を噛みしめたいしな。
子供達には自然と笑顔が浮かんでいた。
こうして、子供達を助けるという誓いは果たされたのだ。
メッチャ長くなってしまった……。
まぁ何はともあれ、あともう少しで