ラミリスとの口約束を果たすって話です。
子供達に上位精霊を宿すことに成功し、その寿命を大幅に引き延ばすことが出来た。
もはやこの精霊の棲家に用は無い。
ラミリスにも悪いし、さっさと退散するとしよう。
「待ってよ!ちょ―――っと待ってよ!?」
襟を掴んで引っ張られた。
首が絞まって大変だ。
……俺は呼吸の必要が無いからどうってことは無いけど。
「何なんだ?今度は何のイチャモンだ?」
「イチャモンちゃうわ!手伝ってやったんだからお礼は当然よね?勿論気持ちだけでいいのよ?でもやっぱ、人としては、ね?」
「あぁすまん。俺ってば人じゃないから。じゃあそういうことで!」
そう言って、何事もなく去ろうとしたのだが……。
「うわ―――ッ、待って、待ってよ!ちょ、実際ヤバいんだって!アンタが
「………」
うーむ、困ったな。
自業自得と突き放してもいいが、壊したのは事実だし。
何で跡形も無く喰らい尽くしてしまったんだ過去の俺。
まぁあの時は敵か味方かも分からなかったからな……。
〝魔鋼〟がそのままでも対魔性能に優れているとは言え、この世に存在している以上〝影〟は存在する。
耐えられなかったとしても仕方のないことだ。
実際シエル先生が余裕かましてたから多分大丈夫だとは思っていたが、結果はあの通り。
もう少し手心を加えても良かったかもしれん。
……さて、ゴーレムの代わりか。
実を言うと、アテはある。
レイタロウさんの紹介で、ディアブロの眷属を一人紹介されたのだ。
名はまだ与えていない。
ラミリスへの
さて、俺の持つ魔鋼も結構な量があるが、ここで
人間大の人形を作って眷属の悪魔を憑依させる、これでやってみよう。
《解。
付加する能力は、付与する精霊、もしくは悪魔により変動します。外見は、
召喚する対象を決定し、実行と念じて下さい 》
流石はシエル先生。
膨大な魔法書の中から瞬時に魔法を探してくれたようだ。
冒険者試験の時に見せてもらった『悪魔召喚』は既に解析済みだし、何ならそういう意図をもってレイタロウさんに託された気もするから遠慮なく悪魔を付与させてもらうとしよう。
ぶっちゃけ裏切られそうな雰囲気はあるが、実はそんなことは全く無い。
召喚とは契約であるため、召喚主への裏切りは無いのだ。
……あくまでも適正ならば、だが。
契約以上の望みを言えば、そこで契約終了となる。
お互いに納得していないと駄目ということだ。
悪魔イコール悪、では無いのである。
素材を魔鋼で造り、悪魔を憑依させ、ゴーレムを作成。
ぶっちゃけ、そこらのAランクの魔物よりは余程強いのが出来そうだ。
「分かった分かった、そう騒ぐなよラミリス。守護者は創ってやるから文句言うなよ。その代わり、今度精霊工学とやらを教えてくれよ。俺達の町にいるドワーフのカイジンっていうオッサンとか興味持つだろうし。そこで一緒に精霊工学のゴーレムを創ってくれよ!」
「そんなのお安い御用よ!……ちなみに、どんなの創ってくれるの?」
「ん、ああ、俺が倒したヤツよりは強そうなのを……」
「マジで!?アンタって実は超いいヤツじゃん!」
「まぁな。じゃあ創るけど、これ使って悪事を働くなよ?お前の防衛のみに使えるように
「おっけーおっけー問題なし!ここでならそれで遊んでもいいんでしょ?」
「ああ、中でならな。他人に迷惑かけるなよ?……それとあくまで(シエル先生の)予想だが、めちゃ強いからな!下手なことすると怪我するぞ?」
そう告げて、準備を開始した。
俺の魔素を多量に含み、魔法のかかりやすい上質な状態であった。
子供達も興味津々といった感じで見ている。
「ちょ、それどこから出したのよ、ってもういいわ……」
ラミリスが何か言いかけて、途中で止めた。
何やら諦めた表情になっている。
納得してくれたということで、早速取り掛かった。
両手を広げ、それらしく呪文を唱えるフリをする。
危ないかもしれないので、子供達は避難させていた。
後ろに付いて来ているのは、ラミリスだけである。
上位精霊への改変やらでそこそこ体力と魔力を消耗しており、十中八九大丈夫だろうが暴走だけは勘弁してもらいたいものだ。
俺の呪文の言葉に合わせて、床に魔方陣が描かれた。
実際は詠唱の必要は無いんだけど、雰囲気が出て良い感じである。
「来い―――〝
魔方陣から
跪き、
「お待ちしておりましたリムル様。何なりとご命令を」
「うぉぉぉぉ……!!」
個体差があるのかも知れないが、
漆黒の肌に上等な衣状の服を纏っている。
性別は分からない。
頭の両方に飛び出た角が偉そうであった。
……ところで悪魔にも筋肉ってあるのだろうか?
まぁどうでもいいことか。
「君にこの妖精の守護者になってもらいたい。こんなんだが一応魔王だ」
「こんなんて!」
「期間は百年。代価は俺の魔素とこの……魔鋼で作ったゴーレム、つまり君の依り代だ」
百年というのは、ラミリスが百年もあれば成長するため、その繋ぎとしての期間だ。
「契約期間を過ぎてもこの体は好きに使ってもらって構わない」
「……素晴らしい、願ってもない」
苦労して造ったからな、気に入ってもらえて何よりだ。
「よし、では……お前にベレッタの名を授ける」
「っ……!」
瞬間、ベレッタとゴーレムの体がピカッと光を放った。
この瞬間にどうやらゴーレムへの憑依が完了したらしく、光が収まった頃には黒衣を身に纏う長身の魔人形が立っていた。
「ワレは
「お、おぅ、お任せするよ!頼んだわね!」
……何とも
もはやツッコむことすら疲れた。
頑張って威厳を保てよとラミリスにエールを送りつつ、久しぶりに名付けを行ったことでこっちの世界での故郷、レイタロウさんをはじめとした皆のことが懐かしく思えてしまった。
……そろそろ、帰るかな。
気付けば夜は明け、朝日が森の木々を照らしていた。
俺の人形作成を見守っていた子供達は、それはもうグッスリと爆睡していた。
緊張と恐怖の連続、そして開放された安堵。
今まで我慢していたのが解決し、安心したのだろう。
ランガを枕にして穏やかに寝息を立てていたのだ。
俺には睡眠は必要ないが、子供は眠るのも仕事なのだ。
よく眠って、成長していくのである。
「……こいつのお守り大変だろうけど、しっかり頼んだぞベレッタ」
「どういうイミよ!」
「はっ。この体に誓い、お役に立ってご覧にいれます」
ベレッタの威勢のいい返事を受け、俺は鷹揚に頷いた。
「よし、じゃあ学園に帰るか!」
「「「「「 はいっ!! 」」」」」
今度こそ、此処に用は無くなってしまった。
影移動から進化した空間移動を使って帰るとしよう。
アリスに疑似上位精霊を統合した時の経験がここで生きるとは、人生何が起こるか分からないや。
「……リムル!ど〜しても可憐なアタシに会いたくなったらまた来てもいいわよ?」
「はははは……寂しいならそう言ったほうがいいぞ?」
「アンタ魔王に対して失礼すぎない!?」
「そうか?……まぁそれはいいとして、もし迷宮から出る気になったらその時は
「なっっっ、何言ってんのよアンタ!?ま、魔王であるアタシがほかの魔王の下で働くなんて……!」
「レイタロウさんはお前のことを下には見てなかったぞ。むしろ、お前の力が必要とか言ってたな」
「ッ〜〜〜、な、何よそれ……!」
「まぁ無理にとは言わないから……じゃあなラミリス、世話になったよ」
そう言い残し、俺達は今度こそ空間移動を使って学園へと帰っていった。
「………」シュン…
「……ラミリス様?」
「はーやれやれ、やっと帰った!ベレッタお茶淹れて!」
「お茶ですか?」
「そう、お茶!」
「……御意」
「……というワケで、子供達のことは無事解決したよ。そろそろ先生業も一段落って感じだ」
『それを聞けて一安心したよぉ』
「なぁ〜にが一安心だよ。遠回しに色々と手を回してくれてただろ?」
『さぁ?何のことだか……』
「ったく……レイタロウさんは相変わらずだな」
子供達に上位精霊を宿してから数日が経過した。
現在俺は、それも含めた諸々の近況を報告するため、水晶越しにレイタロウさんとやり取りをしていた。
勿論、自由学園寮の自室でだ。
「まぁ子供達に精霊が馴染んだのを確認してから帰るとするよ。今度はシュークリーム以外のヤツをお土産に持ってくるからさ」
『うんうん、それで良いよぉ』
「……そっちは変わりないか?」
『皆元気なもんさ。大した問題も起きてないしね』
レイタロウさんが国王として君臨している間は、確かに魔国連邦は安泰かもしれないけどな。
魔王クレイマンやファルムス王国のこともある。
一体どんな間者が送り込まれるか分かったもんじゃない。
『……それはそうと、少し前にヨウム御一行が町に来たんだけど、そこに新顔が一人増えてたねぇ』
「新顔?へぇ……」
『なんでも、セクハラ発言をしたヨウムを叩きのめしたらしくって、それがキッカケで仲間に加えてもらったらしいよぉ?』
「え、ヨウムが負けたのか!?……大したもんだなその新人、戦士系か?」
『いわゆる搦手が得意な
搦手が得意か……なるほど。
これは配下の皆にも言えることだが、どうにも俺達の周りには火力の高い真っ向勝負型の脳筋が大半を占めている気がするんだよな。
百歩譲ってそれが魔物の性分なのは仕方ないが、知り合いの人間もそういうタイプが割と多いのだ。
例えばの話……足元を泥沼に変えられてしまえば、大半の戦士系はその機動力を奪われてしまうだろう。
それだけならまだ序の口で、様々な悪辣な罠や状態異常を仕込んできた場合、戦士系は近付くこともままならず敗北を喫してしまうかもしれない。
ヨウムを負かした魔導師とは、つまりはそういうタイプなのだろう。
『彼女の名前はミュウラン。
「へぇ………………え"っ!!?」
敵の配下を丸め込むなんて、レイタロウさんはとてもヤバいと思いました(小並)
レイタロウさん「ミュウランさん。この町を覆う結界を見て、何を感じましたか?」
ミュウラン「……えっ、結界ですか?(け、結界?結界なんてどこにも張られてないじゃない……!?)」
レイタロウさん「ウチの結界は内と外を分断しない、いわゆる閉じない結界方式を採用しています」
ミュウラン「え、え、え」
レイタロウさん「唐突ですが、
ミュウラン「」