レイタロウさんの一日を教えるよ!って話です。
オハンヨ、オハンヨなのだわ。
俺は十大魔王の一柱にして、ジュラ・スターモンズ連邦国の国王を務めるレイタロウと言うのよ。
皆よろしくね、よろしくなのよ……って知ってるか。
「レイタロウ様、アカシ、シュカ。朝ご飯の時間ですよ。起きてくださいまし」
「フゥアァァ…ネム」
「マブチィ…」
「おはようシュナ。……二人とも、もう朝だぞ。早く起きないと父さんが君達のご飯を食べちゃうぞぉ?」
「「 !!?ダメェェェ!!! 」」
「フフッ……おはようございます、レイタロウ様」
寝室の襖を開けて外の光を取り入れたのは、俺の第一秘書にして愛する妻であるシュナ。
ドワルゴンで芽吹いた二つの命をこの世に産み落とした、偉大なる母親でもあるよ。
その双子ちゃん達はさっきまで、俺と川の字になって爆睡していたワケだ。
「お召し物は用意できて御座います。今朝の献立は牛鹿の生姜焼き、季節の野菜を取り入れた
「「 シュークリムル!!?ヤッター!! 」」
「へぇ……いつの間に作れるようになったんだ?」
「ついこの間で御座います。とはいえまだ試作段階ですので、是非ともいの一番に味わっていただきたく……」
フッ、シュナめ……
……まぁいいけど。
「さあさあ、さっさと着替えるぞ二人とも」
「「 はーい! 」」
まだ生まれて数ヶ月しか経ってないはずなんだけど、この双子ちゃん本当に成長が早いのよ。
ついこの前まであんなにちっこかったはずなのに、今や五歳児並の体格と知能を備えている。
……いや、知能に関しては五歳児以上だ。
この子らは明らかにオーガを超越しているよなぁ……。
……いやぁ、シュナの作ったシュークリムル、あれ中々美味しかったなぁ。
まさかクリームとともにイチゴが入っていたなんてねぇ。
リムルさんがお土産に持ってきたシュークリームも良かったけど、あれは素晴らしい出来だった。
試験的に売り出してみようかなぁ?
「……以上が、管理部門からの報告となります」
「うむ、報告ご苦労」
さてと、ご飯を食い終わったら次はお仕事モードだ。
執務室内の、いわゆる一番偉そうな人が座る肘掛け椅子に深く腰掛け、右後ろにシュナ、左後ろにディアブロを侍らせる。
食糧生産の管理部門を担当させているリリナの話を頭の中で整理し、俺なりに要約していく。
・例年に引き続き、我が国の農作物の収穫量は最低目標ラインを突破する見込みである。
・そして、従来の米や小麦、ジャガイモ等とは別に果物の栽培にも注力し続けており、このまま行けば再来年頃には果物を市場に流通させることも可能とのこと。
・我が国の食糧の評判は上々で、この町を訪れる自由人や旅商人のみならず、ドワルゴンやブルムンドからの感触も悪くない。特に
……いやホントにね、酒の評判が驚くくらいに高いのよ。
ちなみに酒の原料となる果実の原産地は
俺も一口飲んでみたけど、ウチの果実で作る酒と向こうの果実で作る酒とではまるで別物だった。
甲乙はつけられないものの、ユーラザニアのほうが万人受けする味わいだった気がする。
それが功を奏して酒は絶賛バカ売れ中。
今となってはウチの貴重な外貨の調達源になっている。
ユーラザニアには足を向けて寝られないねぇ。
「使節団計画は大成功を収めた。これによって我が国は外貨をより調達しやすくなったと言えよう。……リリナ、よくやってくれた」
「はっ、ありがとうございます……!」
嬉しさのあまりかプルプルと震えるリリナを見守りつつ、右後ろにて控えていたシュナに目配せし、次なる議題を切り出してもらう。
「それでは次の議題に移らさせていただきます。レイタロウ様が正式に十大魔王になられたのに合わせ、
先輩魔王のギィ・クリムゾンが初めてウチにやって来た時に、口約束だったものの色々と有意義な話し合いをすることが出来た。
ジュラの大森林全域ちょーだい?ってお願いしたところ、しょーがねーなぁ、とか言いつつ了承してくれたりとか、本当に色々だ。
「一大行事とは〝開国祭〟に御座います」
「「「「 開国祭……!? 」」」」
シュナの言葉に思わずギョッとする幹部一同。
そうして注目が集まったところで、俺は口を開いた。
「……やれやれ、ようやく一息つけるよぉ」
議題が全て片付き、会議はほんの小一時間で終わった。
現在俺は町の中をぶ~らぶらと散策している。
双子ちゃんや愛する妻との触れ合い、少々過保護気味な執事との悪巧みも悪くないけれど、たまにはこうやって一人でいる時間も必要だと思うんだよねぇ。
一人と言えば、今頃リムルさんは精霊の棲家に行ってる頃だろうな。
懇切丁寧に場所は此処だ、って教えてあげたからね。
あれで迷うようなリムルさんじゃないだろうし、十中八九子供達は助かるだろうねぇ。
ん、あれは……?
「ゴ、ゴブタさん、ホントに大丈夫なんですか……?」
「修行サボってこんなところで遊んでることがバレたら、師匠に怒られますよ……!?」
「大丈夫ッスよゴブチ、ゴブト!オイラを信じて付いてくるッス!師匠にもバレない秘密の隠れ家があるから、そこでゆっくりサボってやるッスよ!」
……なーに、通り道のすみっこでコソコソしてるのさ?
それになんかサボるとか何とか言ってるし、コイツぁちょっと看過できないなぁ。
「そうやってのらりくらりとやり過ごせば―――」
「……やり過ごせば、何だって?」
「師匠も諦めてくれるはず……ッス……うぅぅ!!?」
「「 レ、れれレレレ、レイタロウ様ぁ!!? 」」
ゴブタの後頭部に手を置き、優しく撫でる。
そうするだけでゴブタの全身から滝のような冷や汗が流れ出ていくって寸法だ。
「レ、レレレレレレ、レイタロウ様、これにはとても、とっても深ーい事情があるんスヨ?」
「ほぅ、深い事情?」
「そうなんスよ!……オイラ達、せっかくの休みも師匠との自主練でどこかに消えて無くなっちゃうんス!」
「まぁそれはゴブタさんがしょっちゅうサボるからなんですけど……」
「というか俺達はただ巻き添えを食ってるだけで……」
「ほうほう」
「あのジジィ……じゃなかった師匠のシゴキも虐待同然で、毎日涙を飲んで耐え忍んでいる有様ッス!」
「まぁそれはゴブタさんがそれだけ期待されてるからだと思うんですけど……」
「俺達はその巻き添えを食ってて……」
「ふむふむ……で?」
「オ、オイラ達は今の処遇に納得がいかないッス!こんなただ単にボコボコに叩きのめされる現状からオサラバしたいんスよ!」
なるほどね、多分サボりたいだけなのによく俺に対してそこまで言えたもんだ。将来大物になるね。
……しかしそうか、弱者からの脱却か。
「……おぉ、そこにおったかお主ら」
「「「 ッ〜〜〜、し、師匠!!? 」」」
おー怖ッ、鬼の教官ハクロウの登場だ。
なんか凄まじい鬼気を発しながら近付いてきおった。
前門の俺、後門のハクロウか。生きた心地がしないねぇ。
「やれやれ、探し出すのに骨が折れたわい。かくれんぼは仕舞いか小童共?」
「こ、これには深い事情があってッスね……!」
「深い事情か。……遠くからでもよーく聞こえたぞ。何やら不愉快な言葉も聞こえてきたがのぅ?」
「あ、いや、それは、ちが、ちがうッス……!!」
「お主に科す修行はより厳しくせねばな?」
「」
哀れ、南無三、アーメン、ゴブタ。
君のことは忘れないよ……っと、そうじゃなかった。
「すまないハクロウ、ちょっと待ってもらえるか?」
「……はっ、レイタロウ様」
「レ、レイタロウ様……!」
「ゴブタ。君のその、現状を打開したいという切実な思いはしかと受け取った」
「は、はいッス!(……た、ただサボりたいだけだったんスけど、なんか大ごとになってきたッスか……!?)」
「そこに
「(あ、あれ?もしかしてこれって、あまりにも奇跡的な全てを許されるパターンッスか……!!?)」
「だが、そこには当然〝力〟が伴わなければならない」
「えっ……?」
「思い無き力は〝暴力〟にしかならないが、逆に力無き思いは〝無力〟でしかない。……俺の言いたいことは分かるかゴブタ?」
「よ、要は強くなれってことッスか……?」
「そうだ。一も二もなく努力し、自分より強い敵を打ち倒すほどの力を持つことで初めて、自分のワガママを貫くことが出来るのだ」
「(な、なんか急激に嫌な予感がしたッス……!!)」
「……ゴブタの言葉を聞いてハッとさせられたよ。ゴブタはそれほどまでに〝力〟を欲しているんだとね」
「ほ、程々、程々ッスよ!?」
「なぁに、恥ずかしがることはない。……ハクロウ、今日の修行は全て取り止めだ」
「と言うと?」
「代わりに希望者を集え。
「…………………………え"っ!!?」
要は俺と俺以外でぶつかり合う実戦形式の修行だね。
俺は皆を殺さないように手加減しながら立ち回るけど、逆に皆は全力を尽くして俺を殺しにかかると……。
いやはや、今考えても酷え内容だったなぁ。
もはや懐かしくすらあるぜ。
「しかと聞かせてもらったぞレイタロウよ!!そこにワタシ
「おや……」
「こ、この声は……!?」
「お、ミリム。来てたのねぇ」
魔王ミリム・ナーヴァ登場ぉ!
というか、よく見ると新顔が何人かおるぅ!?
「……お初にお目にかかります、レイタロウ・スターモンズ国王陛下。ワシは忘れられた竜の都にて神官長を務めておりますミッドレイと申す者。……このたびは魔王就任おめでとうございます」
「お、おぉ……遠路はるばるよくぞ来てくれたミッドレイ殿。貴殿らの入国を歓迎しよう」
「ありがたき幸せ」
……会って早々なんだけど、スゲー戦気だね。
不信感や苛立ちって言うより、好奇や意欲に満ちあふれているタイプの殺気だ。
ミッドレイさんは俺と戦いたいのかな?
「面倒な挨拶は抜きにするのだ!それよりもその〝強化訓練〟なるものにワタシ達も参加させるのだ!」
「それは構わないけど……まずは希望者を募らなくちゃならないから、ちょっと待ってもらうことになるよ?」
「大丈夫なのだ!……取り敢えず、ゴブタとやらは参加するのだな!?」
「え"っ!!?」
「そりゃあ言い出しっぺだから当然だねぇ」
「え"ぇぇ"ぇぇぇ"ぇぇ"ぇぇ!!?」
ゴブタにミリムの配下の人達と……。
完全なるその場の思いつきだけど、これに乗っかってくれる人は果たしてどのぐらいいるだろうか?
……あ、ヨウム君と、彼に取り入った
これはちょっと面白くなってきたぞぉ。
次回「ゴブタ死す」デュアルスタンバイ!