転移したらスライムと一緒だった件:REY   作:びよんど

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イレギュラーが発生して会議が進まねぇ!って話です。


人魔会談 ③

 

 

やれやれ、こいつは想定を遥かに超えて厄介な案件になってきたぞぉ……。

 

あ、皆ごきげんよう、俺はレイタロウだヨン。

 

ジュラ・スターモンズ連邦国の国王を務める男だけど、今は飛び入りの案件に頭を悩ませる苦労人でもあるの。

 

 

「恐縮ながら、カリオン様の代弁者として、そして避難民達の代表として、事の経緯を説明させていただく」

 

 

花々の香り華やぐ庭園の一角にて、三獣士の一人を務めるフォビオ君が此処まで来た経緯を話してくれた。

 

 

 

 

 

それは、あまりにも不幸な遭遇であった。

 

魔国連邦(スターモンズ)と獣王国(ユーラザニア)との間で本格的な交易が始まって早数ヶ月。両国間の取り決めに従い、ウチから派遣した配下とフォビオ君率いる少数精鋭でユーラザニア産の果実が積載された荷馬車を護衛していた時のことだ。

 

魔国連邦に続く完成された街道に差し掛かったところで、謎の武装集団とバッタリ出くわしてしまったそうな。

 

フォビオ君達はおろか、向こうも大層驚いていたそうで、フォビオ君が所在を問いただそうとしたところ、向こうから急に襲いかかってきたらしいのだ。

 

 

「数ではこちらが大きく劣っており、加えてこの俺をもってしても苦戦を免れない強者がおりました……」

 

 

その強者は鼻口を覆面で隠した三白眼の男とのことで、何とも禍々しい剣を振るいながらフォビオ君と互角以上に渡り合ったとのこと。

 

もし、その場に護衛としてゴブエモン(グド○みたいな姿に変貌を遂げたゴブリン)が居なかったら、あっという間に壊滅していただろうとも述懐していた。

 

 

「そのゴブエモン殿が重傷を負わされ、もはやここまでと思ったまさにその時に、カリオン様が獣王戦士団を伴って駆け付けてくれたのです」

 

 

ユーラザニアの首都から少し離れたところで戦っていたとはいえ、フォビオ君達の奮闘ぶり、暴れっぷりは遠くからでもハッキリ分かったらしい。

 

そのただならぬ事態に対し、カリオンは迷わず獣王戦士団を自ら率いて助けに現れたのだ。

 

 

「およそ三万もいた敵軍はあっという間に蹴散らされ、おそらく指揮官だったであろうその強者もカリオン様に倒され、降伏にまで追い込むことが出来たのです」

 

「……三万相手に応援が来るまで持ち堪えたのは凄いが、話はそれで終わりではないのだろう?」

 

「……はい」

 

 

 

 

 

さて、ここからが本題である。

 

さしものカリオンも、何故自領に所在不明の大軍勢がいたのか気になったらしく、軽く尋問を行ったそうな。

 

 

「……その時でした、ヤツは懐から宝珠のようなものを取り出し、魔王クレイマンの名を叫びながら、まるで命乞いでもするかのように宝珠を飲み込んだのです」

 

 

そこからの変化はあまりにも劇的だった。

 

宝珠を飲み込んだ男の体は急速に膨張・変容し、周囲に転がっていた敵の死体を飲み込みながら急成長を遂げていったんだそうだ。

 

そうして、体長五十メートル以上を誇る巨大な魔物が二体も現れる事態へと発展した。

 

 

「……魔王ミリム様が連れてきた個体とは多少の差異はあれど、あれは間違いなく暴風大妖渦(カリュブディス)でありました」

 

「そうか、そうなのかぁ……」

 

 

戦場は大混乱に陥ったというが、まぁそうだろうね。

 

知能が低いだけで、実質魔王種クラスの化け物が二体もランダムエンカウントしてくるんだもん。

 

これは確かに、三獣士どころかカリオンでも手厳しいと言わざるを得ないだろうなぁ。

 

 

「二体のカリュブディスはそのまま首都ラウラまで侵攻を開始し、カリオン様率いる獣王戦士団がこれを阻止しようとしましたが敢え無く失敗。首都は……壊滅しました」

 

「だが、間一髪のところで民の避難は済んだワケだな」

 

「カリオン様とアルビス、スフィアらが囮役を買って出たことでどうにか。……ですが、二体のカリュブディスがもたらす魔力妨害の影響は凄まじく、有効打に欠ける状況にあります。あれから既に三日が経ち、皆が力尽きるのも時間の問題なのです」

 

 

 

 

 

……どうしよ、メッチャ心当たりがあるんだけど。

 

その鼻口を覆面で隠した男……クレイマンの配下のヤムザなんだけど、そいつが何で獣王国(ユーラザニア)の領土を侵犯するような危険を犯したのか、なんとなく分かった気がする。

 

クレイマンは、ファルムス王国の保有する極秘情報をあらかた調べた上でこうヤムザに命じたのだろう。

 

〝魔物の国を占領して浮かれているファルムス王国軍に、カリュブディスを解き放ってやれ〟……と。

 

というか、スキル越しにクレイマンを覗き見てそ(・)こ(・)ま(・)で(・)は(・)掴めていたのだ。

 

ジュラの大森林をそのまま突き進むのではなく、わざわざ遠回りをしてまで獣王国(ユーラザニア)ルートを選んだのも、全てはファルムス王国軍に悟られることなくその背後を強襲するためであったとすれば一応辻褄は合う。

 

状況から察するに、最初っからカリュブディスの素体としてヤムザが選ばれていたのは想像に難くなく、まずは軍勢だけでファルムス王国軍を蹴散らさせ、もし自軍が劣勢になったら奥の手としてカリュブディスを切るつもりだったのかもしれないなぁ。

 

だがしかし、俺にも同じことが言えるが、クレイマンですら予期しなかった一つの致命的な誤算が発生した。

 

フォビオ君率いる輸送チームに目撃されたことである。

 

そこからがケチのつけ始めで、あれよあれよと言う間にクレイマン軍は壊滅し、虫の息だったヤムザが急遽カリュブディスに変じるシナリオに書き換えられたと……。

 

……言い訳がましいけど、俺の脳の処理能力には限界があるんだよね。

 

『裁定者』を用いて同時に監視・思考誘導できる人数は精々二百人くらいが限度なのだ。

 

数を絞れば更に精度を上げられるけど。

 

まぁ結論から言って、ヤムザにまで意識を回していなかった俺にも責任の一端はあるって話。

 

だから俺のやる気も十分なのだ。

 

 

「例えカリュブディスが二体いようが二百体いようが関係ないな」

 

「っ〜〜〜!!」

 

「友好国を、カリオンを見殺しにはせんよ。……ガゼル王、エラルド公、すまないが会談は一時中断だ。これは俺自ら助けに行かねばならんのでな」

 

「貴様が直接赴くのか?」

 

「ああ、幸い転移の極意は心得ているのでな、サッと行ってサッと帰ってくるさ―――」

 

 

 

 

 

「会談を中断する必要はありません。そのお役目、是非とも俺に任せてもらえませんか?」

 

「ん?……ベニマル」

 

 

ササッと行ってとっとと終わらせようとユーラザニアまで瞬間移動しようとしたまさにその時、ベニマルの制止の声に呼び止められることとなった。

 

いつになく真剣な表情が張り付いていることが分かる。

 

 

「……フッ、この緊急事態に自己を主張するとは」

 

「むしろ、レイタロウ様は自分一人で何でもかんでもやりすぎなんですよ。……こういう時こそ、俺達配下を頼っていただいても構わないというのに」

 

 

ぶっちゃけ、言い争う時間も勿体ないな。

 

仕方なし、ここはベニマルに任せてみるか。

 

 

「そこまで言うのならやってみせろ。失敗は許されんぞ」

 

「はっ!」

 

「……ちなみに、配下から誰を連れて行くつもりだ?」

 

「出来ればシオンをお借りしたく」

 

「……二人だけでやるつもりか?」

 

「此度の戦いで求められるのは〝速さ〟です。その点で言えば、シオンほど迅速に敵を捌(・)け(・)る(・)ヤツはいません」

 

 

なるほどねぇ……。

 

シオンのユニークスキル『料理人(サバクモノ)』でカリュブディスの魔力妨害を無理やり上(・)書(・)き(・)すればいいってワケね。

 

 

「流石はベニマル!私の力を正確に把握しているとは侍大将の称号は伊達ではありませんね!また私の手料理を振る舞って差し上げます!」

 

「……具合が悪くなる前に出立します」

 

「大丈夫か?もう具合悪そうだけど?」

 

 

ま、まぁ、ちょっと不安はあるけれど、この二人ならカリュブディス程度すぐに片付けてくれるでしょ!

 

 

 

 

 

「お待ちください。私からも話がございます」

 

 

急に強風が発生し、庭園内に立ち込めていた花々の香りが一気にかき混ぜられた。

 

 

「あ、トレイニーさん」

 

 

リムルさんからそんな声がかかると同時に、強風は徐々に止んでいき、その中心から緑髪の美人さんが現れる。

 

森の管理者にして樹妖精(ドライアド)のトレイニーさんである。

 

……なんか今日は飛び入り参加が多いな。

 

 

「……トレイニー殿、話とは一体何かね?」

 

「はい、蟲型魔獣(インセクター)ゼギオンが長い眠りからようやく目を覚ましたのでございます。……ひいては彼も実戦投入なされては如何かと思い、馳せ参じました」

 

「何ッ、ゼギオンがかッ!!?」

 

 

お、珍しくヴェルドラさんが反応しおった。

 

まぁ丹精込めて育てた我が子みたいもんだからねぇ。

 

……その割には〝聖典(マンガ)〟にかまけてすっかりおざなりになっていたけど。

 

 

「……トレイニー殿、申し出はありがたいが、目覚めたばかりの実力の知れない者を即実戦投入するワケにはいかないんだ。ここは俺とシオンに任せてもらいたい」

 

「そうです!いかにヴェルドラ様が逞しく育てていても、生まれたばかりの赤ん坊にマトモな戦闘など務まるはずがありません!」

 

 

おぉ……シオンがマトモなこと言ってる。

 

まぁそうだよな、普通に考えて生まれたての赤ん坊を戦わせるようなヤツはまずいない。

 

 

「戦闘だとかはこの際どうでもいい!件のゼギオンは一体何処におるのだッ!?」

 

 

……でもまぁ、これはちょっと予想外すぎたなぁ。

 

 

「彼でしたら、気(・)配(・)を(・)隠(・)し(・)て(・)ず(・)っ(・)と(・)そ(・)こ(・)に(・)立(・)っ(・)て(・)お(・)り(・)ま(・)す(・)よ?」

 

「「「「 ぇ?………………なッ!!? 」」」」

 

 

ソ(・)レ(・)を一言で例えるなら、白銀色(メタリックシルバー)の全身鎧(フルアーマー)を着込んだ重戦士、とでも言うべきか。

 

あまりにも無機質で人工的とも表現できるメタリックな外皮で全身を覆っており、事情を知らない第三者から見てもインパクトは絶大である。

 

その外皮の上からでも確認できるくらいに肉体がパンパンに膨れ上がっている。

 

最初に断っておくが、ソレは決してぽっちゃりさんなどではなく、全身の筋肉が極限まで筋肉膨張(パンプアップ)している何よりの証なのだ。

 

身長は脅威の230センチ以上(オーバー)。

 

俺には及ばないがとても大柄だ。

 

特筆すべきは、モヒカンのようにも見える異常発達した漆黒のツノであろう。

 

漆黒のツノから何やら黒い稲妻を迸らせており、ソレのやる気が十分に漲っていることを端的に表していた。

 

……何より恐ろしいのが、そんな派手を極めたようなヴィジュアルをしているクセに、俺(・)や(・)ミ(・)リ(・)ム(・)を(・)除(・)い(・)た(・)この場にいる誰もがソレの存在を認識することが出来なかったことであろう。あのディアブロですら、だ。

 

名前を与えられ、しばらく休眠していたとは思えないくらいのエネルギー制御技術。

 

少なくとも、魔素(エネルギー)効率では俺と肩を並べられている。

 

シエル先生ですら遅れを取りかねないねぇ。

 

 

《申し訳ございませんリムル様(マスター)!私としたことが、その存在に気付くのにコンマ数秒遅れてしまいました……ッ》

「(……いやいや、シエル先生が気付くのに遅れたって、どんだけヤバいんだよアイツ……)」

 

「レイタロウ並にスゴいヤツなのだ!……だが、ワタシの竜真眼(ミリム・トゥルーアイ)なら一発で分かるぞ!」

 

「(こ、この私が、存在すら察知できなかったと……!?クフフ、これは中々面白くなりそうですね……!)」

 

 

各々の反応もそこそこに、会談場所の中心にて静謐を讃えるソレ、もといゼギオンを見やる。

 

纏う雰囲気から、俺の命令を待っているようにも見えた。

 

 

「……ゼギオン。ベニマル達と協力して獣王国(ユーラザニア)へ赴き、暴風大妖渦(カリュブディス)を撃滅してくるのだ。出来るな?」

 

「了解いたしました。勝利をレイタロウ様に捧げます」

 

 

すっげー深みのある低い声で応えてくれた。

 

俺思う、ゼギオンって、カッコいいよね。

 




カリオン「お前ら!フォビオが魔国連邦から応援を呼ぶまでの辛抱だ!気合い入れるぞォ!!」

スフィアちゃん「当然だぜ大将!!不眠不休上等ォ!」

アルビスさん「独り身のまま死ぬなんてあり得ませんわ!強くて素敵な殿方に助けられたぁ〜い!!」

獣王戦士団の皆さん「うおぉぉぉぉぉ!!!」

カリュブディス「……何こいつら、こわッ」
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