長い会談がようやく終わったよって話です。
「……以上で、本会談のまとめを終了いたします。議事録は後ほど、また今後新たな情報は分かり次第お知らせします」
花々の香り華やぐ庭園の一角。
四季折々の色彩豊かな花達に見守られた首脳会談は、ひとまずの終幕を図ることとなった。
司会進行を務めるシュナの言葉が響き渡る。
「皆様お疲れ様でした。大変有意義なご意見をいただけたこと、感謝いたします」
「……えー、それでは、本日わざわざ集まっていただき感謝する。これ以上喋ることも無いから、これにて解散」
閉会の挨拶は、俺的にも何とも締まりの無いものだった。
後の世で〝人魔会談〟と称される半ばぶっつけ本番気味の会談は、こうしてしめやかに締めくくられることとなったワケだ。
「ふー、いつの世もお偉いさんとの会談は肩が凝るな」
「それは
「うるせー、やっぱ
そんな冗談交じりの掛け合いをしながら、俺ことレイタロウとリムルさんは庭園から談話室に場所を移し、ゆっくりと羽を伸ばしていた。
今は俺の配下と
「それにしても、助けが間に合ってホントに良かったよ」
「……おかげで助かったぜレイタロウ。俺の民を受け入れてくれたことも含めて、この恩は一生忘れねえよ」
「なぁに、困っている時はお互い様だよ、カリオン」
結論から言って、
今はそのことについて報告させるためベニマルやシオン、そしてゼギオンにも同席させている。
……シオンは言われるまでもなくリムルさんを膝に乗せて座っているが。
「小一時間はかかると見積もっていたが、まさか十分もかけずに
カリオン達の証言も絡めれば、それはもう一方的な戦いぶりであったらしい。
そもそもの大前提として、『魔力妨害』を保有するカリュブディスが二体も襲撃してきたことでカリオン達の遠距離攻撃手段は著しく制限されていたのだ。
それでも総崩れしなかったのは
余談となるが、カリュブディスが二体も居たことで『魔力妨害』が共鳴し合ったのか、その効果範囲は半径五キロにまで及んでいたらしく、通信用の水晶はロクに機能しなかったとのこと。
フォビオ君に
まさに英雄的活躍である。
「あ、いえ、一体は俺が倒しましたが、それより前にもう一体をゼギオンが倒してくれたので、楽に倒すことが出来たんですよ」
「え、そうなのか?」
「ええ。二体同時となると俺の
「へ、へぇ……」
「おかげで『魔力妨害』の効力も弱まり、残ったもう一体を俺の
「私の出番は無かったです……」シュン…
……どうやらゼギオンは、俺の想像を遥かに超えて凄まじかったらしい。
つーか、やろうと思えば二体同時撃破も出来たよね絶対。
敢えてそれをしなかったのは、あくまで俺の命令を遵守した結果と言うべきか。
「よくやったぞゼギオン」
「……はっ、身に余る光栄です」
相変わらず静かすぎる。
喋ってくれないと俺でも居場所を掴めないかもしれんな。
「……やれやれ、自分の力不足を痛感するばかりだぜ」
「まぁそうクヨクヨするなカリオン!レイタロウの配下の中でもゼギオンは間違いなく
「え"っ、アンタと良い勝負が出来るって、それどんな化け物よ……!?」
この場にいる魔王は俺とカリオンだけではない。
茶菓子を口の中に放り込みながらカリオンを慰めるミリムと、そんなミリムの発言に心底ドン引きしているラミリスもおり、この談話室は割と混沌とした様相を呈していた。
「それはそうとラミリス」
ギクッ!!「ッ〜〜〜、な、なぁに……?」
「初めましてと言うべきかな、君と同じ魔王のレイタロウだよ。宜しくねぇ」
「は、はは、よろしくぅ……」
「……なんでちょっと遠ざかってるの?」
「え、な、何を言ってんの!?アタシが遠ざかるワケないじゃん!?魔王なのよこちとらぁ!!」
「プププ……ワタシを真正面から倒したレイタロウに心底恐れを抱いておるのだ。魔王なのにな」
「なッ、そんなワケあるかーッ!!」
なるほどね、そういうことか。
リムルさんの誘いに乗ってやって来たって感じかな?
「……ま、何故ウチに来たかは後で聞くとして、ミリムやラミリスに聞いておきたいことがあったんだ」
「む、何だ?」
「な、何……?」
「自分で発議しておいて何だけど、
ラミリス曰く、元は自分とギィとミリムだけのお茶会であったとのこと。
上記三名がいわゆる第一世代。
そのうち、後から魔王になった魔人達が参加するようになり、何かしら揉め事があった場合は多数決で決めようということになったそうな。
「えーと確か、途中で辞めちゃったバレンタインって子とダグリュールちゃんとディーノちゃんの三人を含めた六人で基本固定メンバーだったはずだよ」
つまりは第二世代、と。
それは言い方を変えれば、第三世代以降の魔王達の代替わりが非常に激しいことを意味している。
内輪揉めとか天魔大戦とか天魔大戦とか……。
バレンタイン……というかルミナスが今なお生きている以上、六人でメンバーが固定しているという認識にあながち間違いは無いだろう。
「んで、今から千年前に人間が〝ワルプルギス〟って呼称を広めたワケ。……んまぁあの時は大戦で混乱してた頃だし、人間からしたら魔王が集まって何か話し合ってるなんてそれだけで不吉よね」
「大戦ってのは、天魔大戦?」
「そ、五百年周期で発生するね」
……千年前に
こりゃあ、もしかしなくても近々天魔大戦が起こるねぇ。
「ま、そんな過去のことは一旦置いといて、ワルプルギスには従者は二人までしか連れていけないから、よく考えておくといいよ!」
「「「「 ッッッ!!? 」」」」
ラミリスの言葉に色めき立つ配下達。
「クフフフフ……では私がお供を」
「いや、お前はファルムス王国攻略の役目があるだろ」
「そうです!お供は私です!」
「いや、ここは俺が行くべきだろう!」
「我輩が参りましょう!」
「私が―――」
やれやれ、ワイワイガヤガヤ賑やかだなぁ……。
ま、人選はもう決まっているんだけどね。
「る、留守番、だと……!?」
「悪いねヴェルドラさん。
というか、ヴェルドラさんが
「リムルのほうからも何か言ってやってくれ!我ならば魔王どもにも引けを取らんとな!!」
「この服すごく着心地いいよ。防御面でも頼もしいし、流石はシュナのお手製だな」
「ふふ……ありがとうございます」
「おいぃぃぃ我を無視するなリムルぅぅぅ!!」
「……さっき言ったろ、クレイマンの居城を攻め落とすのに
「むぅぅぅ……」
親友呼びされたことに声を詰まらせるヴェルドラさん。
彼は頼りにされることにとことん弱いのだ。
「それはそうと二人とも、その服ホントに似合ってるね。なんで俺だけ白を基調としているかは置いといて」
「レイタロウさんも意外と似合ってるぜ」
「レイタロウ様の漆黒の肌とよく馴染んでいるように思います」
今回ワルプルギスに連れて行く従者としてリムルさんとゲルドをチョイスしたワケだが、その二人は黒を基調としたダークでカッチョイイ服装であるのに対し、俺の身に纏う服装は所々に黒色を取り入れつつも、全体的に白色を全面に押し出した仕上がりとなっている。
「よく似合っておりますよ!レイタロウ様!」
「……ありがと、シュナ」
極めつけはお馴染みの白黒マントだ。
「じゃ、ちょっと準備に行ってくるからね」
「む、むぅぅぅぅぅぅ……」
……やれやれ、ヴェルドラさんにも今後、何かしらの仕事を与えたほうが良さそうだなぁ。
そんな彼の恨めしい視線を背に受けながら、俺はリムルさんとともに
所変わって、此処は
ゼギオンが眠りについている間、彼の身を匿ってくれていたところでもある。
俺とリムルさん、ラミリスに、護衛としてゼギオンやアピト、暇だからと付いてきたミリムも同行している。
「でも本当にいいのレイタロウちゃん?師匠が留守番でさ」
「師匠?……あぁヴェルドラさんのことか」
いつの間にかラミリスはヴェルドラさんに懐いていた。
おそらく〝
「なんならアタシの従者として付いて来てもらうのもアリだと思うけど?」
「強い奴侍らせて威張りたいだけでしょ?……それにラミリスが言ったんじゃない。従者は二人までって」
「そーそー、お前の枠はもう埋まってるじゃないか。ベレッタと―――えぇと、トレイニーさんで……」
「フフッ、フフフッ♪」ニッコニコ!!
……なんか、トレイニーさん若返った?
前までは敏腕女社長って感じだったのに、今はなんというか、現役女子高生並にキャピキャピしておられる。
「っていうか、トレイニーさんですよね……?」
「えぇそうですよ。私は
「トレイニーちゃん、アンタって子は!」
「「 あなた森の管理者ですよね? 」」
いかんいかん、リムルさんと声がハモってしまった。
まぁ実力も忠誠心も確かだからラミリスの護衛としては適任なんだけどね。
「アタシも魔国に住もっかなー!」
「まぁ!!大賛成です!!」
……ウチを気に入って移り住んでくれるんなら、それに越したことはないが。
「……さて、護衛はここまででいいよ、ゼギオン」
「はっ……」
「レイタロウ様、リムル様、コチラを……」
「「 おぉ蜂蜜!ありがとうアピト!! 」」
いやー、ちょうど切らしてたんだよねぇ!
リムルさんは
「……よし、甘いもので癒されたところで、じゃあ始めますか」
「何をやるのだリムルよ?」
「まぁ見てろってミリム。……長ったらしい会談よりはよっぽど面白いぞ。トレイニーさんも準備はいいかな?」
「はい」
そうこうしている間にリムルさんは準備を行っていく。
その身から凄まじい
「……ちょ、ちょっとレイタロウちゃん?」
「何?」
「今のってもしかして
「それってアピトのこと?……彼女は
「っていうかさ、もう一匹のほうもあれってまさか……」
「ゼギオンは……どうやら
「へ、へぇ……っていうか、リムルはさっきから何を作ってるのさ?」
「そりゃあ、君が一番分かってるんじゃないの?」
「およ?……これって、あ、あー!!」
地面に転がっていたモノを見て、ようやくリムルさんが何を作っていたのかを悟るラミリス。
それは、トレイニーさんの本体に当たる大樹から切り出して作られた義体パーツであった。
ベレッタと名付けられた
正確には魔将人形ではなく
「トレイニーさん」
「はい」
その宝珠にトレイニーさんが根幹となる〝魂〟ごと宿る。
そして、その聖なるエネルギーと同等の
そうして出来上がった聖魔核を、元々トレイニーさんの本体であった
精神生命体であるトレイニーさんは、
しかしあくまでも本体は樹木であり、離れすぎれば接続が切れてしまう可能性もある。
そこでリムルさん(というかシエル先生)が考えたのが、本体ごと移動できるようにする方法だ。
リムルさん成分が多少なりとも混じったことで、その体に巻き付いていたツルのようなものが金色の東洋龍のように変質し、艶のある緑の長髪に金色のメッシュが所々に入り混じる特徴的なものへと仕上がった。
それこそ時空の果てであろうとも、だ。
「ありがとうございますリムル様。これで私も、何の懸念もなくラミリス様にお供することが出来ます」
「……準備は整ったな。迎えが来るまで戻って休もう」
ふと空を見上げれば、一面が綺麗なオレンジ色に染まっている。
本来であれば一日の終わりを告げる空の色だが、
それぞれの思惑が重なり合う魔王達の宴は、静かにその幕を上げようとしていた。
つまらない話が続いたかと思いますが、ここから段々と盛り上げていきたいと思いますので、楽しみにしていただけるとありがたいです!