ワルプルギスに参加するよ!って話です。
「ほぉ、これはまた……」
目の前に広がる円卓の間に、思わず感嘆の息が漏れ出る。
精緻且つ豪華な装飾に彩られながらも、微塵も厳かさを損なうことなくその空間に存在していたからだ。
まさしく、魔を司る王達が集う場所といった感じだ。
……あ、紹介が遅れたね。
俺はレイタロウ、今は十大魔王の一柱としてリムルさんやゲルドを伴ってこの場に来ている男だよぉ。
「ギィ!ちょっとぶりなのだ!」
「やっほーギィ、久しぶり」
「……よぉ、お前らは相変わらずのようだな」
先に門を潜り抜けていたミリムとラミリスが、豪奢な椅子に座っている赤髪の美男子こと魔王ギィ・クリムゾンに気安く挨拶をしている。
「……息災そうだな、ギィ」
「お前もな、カリオン」
次いで、覇気なさげにギィに挨拶をしたのはカリオン。
そんなカリオンに同じく簡単に挨拶を済ましたギィは、すぐに視線を俺に向けた。
さながらこちらを試すような視線に、俺は軽く思考を巡らせ、敢えて傲岸不遜に返すことに決めた。
「魔王就任祝い以来だな。……ギィ、次はいつ遊びに来るんだ?」
「……新参者とは思えん口ぶり、お前はこういう場で物怖じするタイプじゃないようだな」
「生憎慣れているものでね」
……うん、改めて見ても、ギィって凄いね。
見た感じ
解析能力を持たない奴は論外、偽装に気付けるか否かで相手を
真の実力の程は戦ってみないと分からないけど、たぶん今のヴェルドラさんでも負けるんじゃないかな?
原初の悪魔ってのは竜種に次いで最強の存在だとディアブロが教えてくれたし、長い年月で
目線でそれとなーくギィに分かった分かったと伝えると、俺の意図を汲み取ってかギィはそっと目線を外した。
「フッ、なら座ったらどうだ?……扉の前に突っ立っていたら邪魔だろう」
「ん?……あぁなるほどね」
さっき俺達がくぐった門がひとりでに開き、奥からとても大きな気配を察知する。
「おぉ……でっか」
リムルさんの言葉に内心同意する。
門の奥から現れたのは、大体俺と同じくらい(俺のほうがちょっとだけ大きいかな?)の巨躯を誇る青髪の男。
「どいてもらえるか?大きいの」
「あぁ、悪いね」
彼こそが
今は大人しいが、怒ると何倍も大きくなって襲いかかってきそうな、そんな怖い人のイメージを抱かせる。
……俺の偏見だけどね。
ていうか、隠す気も無いのか
ヴェルドラさんの半分くらいのエネルギーに、持ち前のフィジカルを兼ね備えているワケか。
なるほど確かに、ヴェルドラさんといい勝負をしそうだ。
おっと、そろそろ俺も席に座らねば。
……ギィと対面になる席を選んで座ると同時に、新たな魔王がやって来たようだ。
「………」
これまた優雅で精強そうな男と、従者として老執事と
目立つ犬歯から察するに、先頭の男が
……でもまぁ、
そう、彼女が―――っと、睨まれちった、怖い怖い。
そんな怖い目で見なくても、後で話し合いの場は設けるからそれで許してチョ?
「ふぁぁぁぁ……あ、いよーっすラミリス」
次いでやって来たのは、何とも気怠げそうな優男。
腰に二本の剣をぶら下げ、一見無防備そうにノロノロと歩くその彼は、ラミリスの姿を見つけるなり何とも気安く話しかけてきた。
「今日はまた一段とチビだな」
「ケンカ売ってるワケ?」
「勝つの分かってるのに売るワケないじゃーん!」
「は――!?ディーノのクセに生意気なんですけど!!」
彼がディーノ……さっき無防備そうと言ったが、なるほど曲がりなりにも魔王と呼ばれるだけのことはある。
それとなく
これ以上深入りすると向こうにバレそうなので辞めておくとしよう。
「ってあれ!?なんでお前従者を連れてるの!?一人で来た俺が格好悪いじゃん!」
「ふふん、まぁね!この二人の前には無力だと知るがいいわ!」
「なんだよ、ボッチ仲間だと思ってたのに。……じゃあ壊してもいい?」
「はぁ!?ダメに決まってんじゃん!!ギィに言い付けて鉄拳制裁の刑に処してもらうからね!!」
……うん、大体の関係性は掴めたかな。
軽い性格なのは見てて分かったけど、隣に座る
こんなに自由でいいのか……などと思ったが、ほかの魔王連中が口を挟まないということは、むしろ挨拶するほうが珍しいのかもしれない。
あれこれ考えているうちに次の入場者だ。
ん、彼女は……。
「やぁフレイさん、元気そうで何より」
ビクッ!!「ッ〜〜〜、そ、そちらも元気そうね……!」
何とも扇情的な衣装を身に纏いながら悠々と入ってきたフレイさんに声をかける。
……が、見るからにビクつかれてしまった。
ほかの魔王が見ている手前どうにか気丈に振る舞っているが、挨拶をしたこっちが申し訳なく思えるほどに怯えておられる。……いや、なんかごめんなさいねぇ?
早々に俺から視線を外したフレイさんは、俺より二個くらい席を空けた上で着席した。
……どうやら早くも次の入場者が現れたようだ。
「………」
やれやれ、来るとは分かっていたけれど……。
門の奥より現れたのは、長い金髪と青い瞳が特徴的な、シズさんにとって因縁の相手とも言える男。
俺に次いで新参の魔王であるレオン・クロムウェルだ。
「……お前がレイタロウか」
「そうだ。君がレオン・クロムウェルで相違ないか?」
「如何にも。……して、その者は?」
レオンは俺からリムルさんに視線を移す。
「俺はリムルだ。何か用でもあるのか?……魔王レオン」
「……いいや、その姿を見てふと懐かしく思っただけだ」
「彼女を覚えているんだな、安心したよ」
そう言ってリムルさんは、レオンと相対した。
「俺の姿を見て何も思わないようならこの場で殴っているところだった。……シズさんは生きているぞ、レオン」
「……そうか、だが殴られる
「シズさんはイフリートの肉体に受肉して精霊になったんだ。人間であることを捨てさせたのは俺達の責任だが、その自由意志までは縛っちゃいない」
「っ……」
レオンが僅かに動揺を見せたタイミングで、今度は俺のほうから口を挟んだ。
「そこまでだリムルさん。この場は堪えてくれ」
「っ、分かったよ……」
「レオン、もし気になるようならいつでも我が国を訪れるといい。何なら後日招待状を送るが?」
「……いいだろう」
いやはや、リムルさんの殴る発言はマジで洒落にならないからなぁ……。
「……どうやら、
「まさに、な」
レオンの発言に俺も同調する。
ひとりでに開かれた門の奥から、コツコツと足音を響かせながら一人の魔王が現れたからだ。
白髪に白い紳士服を着こなした貴族のような男。
……魔王クレイマンその人である。
腕にはグッタリした様子の子狐を抱えており、その表情には不敵な笑みが張り付いている。
「おやおやおやぁ?……ここに一人、魔王に相応しくない下賤の者がいるようですねぇ?」
えー、それは一体誰のことなんだろー?
俺はわざとらしく周囲をキョロキョロ見渡すフリをした。
「……チッ、まぁいいでしょう。すぐにでもその化けの皮を剥いでくれる……ッ」
さてと、これで魔王が全員揃ったな。
挙げていくと……。
……いやー、こうして並べると見事に差別化されてるね。
ていうか、これじゃ十大じゃなくて十一大魔王だよね。
これはつまり、一柱減らさないと釣り合いが取れないワケで……。
「……今宵は俺の呼びかけに応じてくれて感謝する。それでは始めるとしよう」
「異議あり!……私クレイマンはここに、魔王を僭称するそこな不届き者を制裁すべく、緊急の議題を提案させていただく!」
「……言ってみろよ、クレイマン」
「感謝します、ギィよ。……私の提案する議題はズバリ、その
イレギュラーだらけの魔王達の宴が、ここに始まった。
一方その頃。
「……降伏しろ、さすれば命までは取らん」
圧の籠もった〝鬼〟の声に、
クレイマンから居城の防衛を任されていた魔人達。
その誰もが腕に覚えのある実力者ばかりであったが、目の前に立つ真っ赤な〝鬼〟はあまりに別格であった。
相対した時点で分かるのだ、勝てないと。
「私の神ルミナスへの信仰は死にました。ですので新たなる神を得たく思うのです。是非シュナ様の信仰する御方に逢わせていただきたい!!」
「で、ですから、レイタロウ様のことは妻として深く愛しておりますが、信仰してはいませんよ?……何度も言っているでしょう」
「レイタロウ様!あぁなんと神々しいお名前であることか!」
「(ディアブロさんと同類……)」
何よりここまで敵の侵入を許した最大の要因は、拠点防衛を一手に任されている〝五本指〟が一人、示指のアダルマンがどういう心境の変化か敵の案内役を買って出てしまったことに尽きるだろう。
……当のアダルマンは、嫌がる桃髪の巫女姫に何かを頼み込むように縋っている。
「ベニマルさん!城の制圧は完了したぜ!」
「抵抗勢力は軒並み無力化しましたぞ!」
「スフィア殿、ガビル、ご苦労だったな」
「敬称なんていらねーよ!オレのことはスフィアと呼んでくれ、大将!」
クレイマンの配下である魔人達を睨むだけで降伏に追い込んだ〝鬼〟……もといベニマルは、
「(……やれやれ、負け戦など論外だが、
贅沢な悩みだと思いつつも、ベニマルはこの
強いて言えば、アダルマンを無力化した上で自陣に引き入れたシュナの活躍が光るが、それ以降は流れ作業的に状況が進展し、そして現在に至っている。
「(リムル様がその場で開発し、レイタロウ様が一瞬で劇的に洗練させたという
ベニマルはふと疑問に思ったが、まぁあの二人に常識を説くほうが無理だよなと納得することにした。
何でもありが、レイタロウとリムルであるが故に。
かくして、傀儡国ジスターヴは陥落した。
目標は帝国戦。
帝国との戦いで