クレイマンの戯言が始まるよ!って話です。
「……これよりお話しするのは、私の配下が決死の思いで伝えてくれた希少な証言です。お聞きください」
ふわぁぁぁ……ねむっ。
いかんいかん、うっかり寝てしまうところだったゾイ。
やぁ皆こんばんチー、俺はレイタロウだヨン。
ジュラ・スターモンズ連邦国(略して
……しっかし、ホントに退屈だ。
発議をした俺を差し置いて、横合いから魔王クレイマンが一方的に話を進めている真っ最中なんだけど、それのあまりのつまらなさにむしろ
あのミリムが終始困惑するくらいにはつまらない、そんなクレイマンの話を要約するとこんな感じだ。
……より詳しく説明すると、下記のような感じ。
・魔王ミリム・ナーヴァを賛同者に出来たのは実力故ではなく、美味しい食べ物によって餌付けさせたから。
・ほかの魔王の元に送られたであろう水晶に映っていた映像は幻覚魔法によって偽装されたものである。
・自分を真っ先に始末すると予告したのも、ほかの魔王に喧嘩を売るのが怖かったから。
・ミリムやカリオンと結託しつつ、その二人に自分の始末を任せて高みの見物を決め込むつもりだった。
・まさにそのタイミングでファルムス王国に領土をあっという間に侵略され、民共々殆どの配下を惨殺されるという自業自得な目に遭う。
・死と嘆きの中で絶望しきった俺の前に、なんと
・ついでに国も滅びた。
・今回のワルプルギスにノコノコ顔を出したのも、せめて自分を始末することで十大魔王の座だけでも死守しようという悪足掻きでしかない。
うーん、あながち間違ってはいないけど正確でもない。
このもどかしい気持ちよ。
「それを証拠に御覧くださいあの者共を!……
え、
ゴメンね、まだまだこの世界の常識に疎くてさぁ。
「この下賤なる黒トカゲに魔王を名乗るだけの力など最初から無かったのです!その詐術は魔王並みにあると言えますが、私の目は誤魔化せなぁぁぁい!!」
これこれ、人を指で指すんじゃないよ全く……。
「この一連の経緯を魔法通話で報せてくれたのは私の配下のミュウランですが、残念ながら彼女はもういません。何故なら……そこの黒トカゲに凌辱された末に殺されたからです!」
今やヨウム君の女になっているミュウランさんに手を出したら、俺はシュナに殺されてしまう。
その果てに子供が一ダースほど増えることだろう。
「………」
これにはダグリュールも呆れ果てている。
ミリムにいたっては半分寝てる。
「以上で私の話は終わりです。……魔王を僭称する身の程知らずな黒トカゲはこの場で始末するのが宜しいかと」
結局はそこに帰結するワケね。
あくまで自分の手は汚さず、ほかの魔王に俺を始末させようという魂胆なワケか。
……でもなぁ。
そのやり方には一つの大きな穴があるんだよなぁ。
「クレイマンだったか。……いやはや、どこからツッコミを入れたらいいか分からないが、君の話には明確な誤りがいくつかあるなぁ」
「何ぃ?」
「そもそもの大前提として、我が
「……ハッ、そんな出鱈目を誰が信じるというのだ!?」
「出鱈目、か。……まぁそんなことはどうでもいいんだ。君が言いたいのはつまりはアレだろ」
席からは動かず、視線のみでクレイマンを威圧する。
「俺が魔王にしては脆弱であることを
「ッ〜〜!!?」
ギィに酒の席で聞いた話だが、十大魔王という呼称自体は人間達が勝手に決めたものであるという。
九人以下になろうが十一人以上になろうがどうでもよく、要は強ければ魔王を名乗ろうが構わないということだ。
むしろギィは、十大魔王という自分達の預かり知らぬところで勝手に決められた名称に不服すら抱いていたな。
「っ、皆さん!いつまでこんな一介の魔人如きに話をさせるつもりですか!?こいつは栄光ある魔王の称号を貶めようとしているのですよ!?」
「……弱い犬ほどよく吠えるな」
「ッ〜〜!!」
「正直なところ、魔王の地位自体にさほど興味は無かったんだ。……俺と、俺が大切にする者達を守るための手段として最適だったから成ると決めたワケだが」
「な、に……!?」
「そして、そのためには人間の協力がどうしても必要だ。だから守る。何ならある程度繁栄させてやってもいいかもしれんな。まぁそれは置いておくとして……」
「?……ッ!!?」
そこで初めて席から立ち上がり、完全に密封していた
「俺の行く手を遮るのなら人だろうが魔王だろうが聖教会だろうが完膚なきまでに踏み潰す。あまり調子に乗るなよ、小物が」
「(な、な、何なのだ!!?さっきまで全く
クレイマンの動揺っぷりは目に見えて分かりやすかった。
まさに小物。
自分の策略で物事が全て予定通りに進むと思い込んでいた井の中の蛙の狼狽ぶりは、あまりに滑稽であった。
「……面白い、余興としては上出来だろう」
そう言ったのはギィ。
俺の破滅的な
「クレイマン、
「お、おぉ、感謝しますよギィ!共にヤツを―――」
「だが、やるのはお前とその従者だけだ」
「……え?」
「勿論レイタロウもだ。例外は一切認めん。……ミリム、くれぐれも横槍を入れようとするなよ?」
「え"っ!!?な、なんのことだかわからないのだー」
ヘッタクソな口笛をピューピュー吹きながらそっぽを向くミリムを横目に見つつ、俺はクレイマンと相対するように向き直った。
「っ、皆さん宜しいのですか!?下賤な黒トカゲの暴挙を許してッ、これは我々魔王に対する侮辱ですよ!?」
ギィには頼れないとばかりに他の魔王を焚きつけるクレイマンであったが、返されたのは沈黙のみ。
瞬間、ギィの足元を起点にエネルギーが地面を走り、円卓があっという間に消失する。
「クレイマン、お前も魔王なら自身の力でもってそいつを倒してみせろ」
……ギィが何を言いたいのか分かった気がするよ。
弱者に〝魔王〟の名は相応しくない。
そろそろ本物の魔王達による支配の時代が始まるべきだろう、とか考えてるんだろうなきっと。
っていうか、此処で戦えってことぉ?
「クッ……クックック、やれやれです」
すると、クレイマンは急に不敵に笑い出した。
「自分の手を汚すのを嫌ったばかりに、余計に面倒なことになってしまった。……本当に失敗でした」
「……来るなら来い」
「クックック、私としたことが、まさか
……見てられんな。
「私が劣るところなど一つも無いのだ、そうだ、私が負けるなどあり得ない……ッ」
「まぁいい、後がつっかえているんでな、悪いがサクッと終わらせてもらうぞ。……やれ、ゲルド」
「はっ」
「ほざくなよ黒トカゲが……ッ、貴様は絶望して死ぬんだぁぁぁぁぁぁあ"あ"!!?」
「
ブーメラン発言いただきましたー。
と思っている間に、真っ正面から堂々と突進したゲルドが渾身のぶちかましをクレイマンに炸裂させる。
秋に舞い散る木の葉よりも
「……俺のことを覚えているか、クレイマンよ」
「きっ、きさっ……!!」
傷がみるみる再生していくところを見るに、そういうスキルを所持しているんだろうが、それは
楽には死ねないよ、君。
「きさまぁ……貴様あぁぁああ!!!」
「っ!」
クレイマンの叫びに呼応するように、何処からともなく外套を身に纏った
そして、さっきまで腕に抱えられていた子狐が劇的にサイズアップを果たし、こちらに敵意を向けてきたのだ。
「いい気になるなよ……皆殺しにしてやる……!」
「……リムルさん、子狐のほうはなるべく傷付けずに無力化してくれ。ゲルド、人形のほうは壊してよし」
「分かったよ」
「はっ、かしこまりました」
「図に乗るなッ!
おーおー、こっちに迫ってきて怖いねぇ。
あんなのにブスリと刺されたり噛み付かれたら事だ。
「レイタロウ様より授かった渾身の一撃をその身に刻め。―――〝
そして、迫る人形に狙いを定めたゲルドは、タイミングを見計らって思いっきり平手を振りかぶった。
人形のほうはアッサリ片付いた。
「おわっと!!?」
……ゲルドの分厚く大きな平手を横顔に喰らった人形は、原型を留めないレベルで大きく破損し、横にグルグルと何回転もした上でディーノのすぐ近くの床に激突した。
ゲルド渾身のビンタによって、人形のほうはただのガラクタと化したワケだ。
が、これにはたまらずディーノが抗議の声を上げた。
「……ちょ、ちょっとこれ、流石に俺達のほうが危ないんじゃないの!!?」
「それぐらい我慢しろディーノ」
「せ、せめて結界くらいは張ってよ誰かぁ!!」
「全く、しょうがないな……」パチンッ!!
ギィの指パッチンとともに結界が展開される。
……なるほど、空間拡張の属性が付与されているなぁ。
内側から障壁を破るのは難しそうだ。
「案の定だったぜレイタロウさん。狐のほうにかけられてた支配の呪いは解呪完了だ」
「クォ―…ン」
「おぉ、仕事が早いなリムルさん」
とか何とか思っていると、元のサイズに戻った子狐を抱えながらリムルさんがやって来た。
やっぱりね、どうにもイヤーな雰囲気を纏っていたから、もしかしたらと思ったけど。
「(?……??……!??……ビ、ビオーラも
「俺のことを覚えているか、クレイマンよ」
「ひっ!!?」
「貴様の怠慢によって飢餓に見舞われ、そして『魔王誕生計画』によって一度は畜生にまで落ちぶれた元・
「き、きさま、まさか……ッ」
「だが今は、
そう言ってゲルドは、自身の身体特性である『生体武装』と『自己改造』を駆使し、その肉体を劇的に変化させていった。
身体特性と言うのは、
仮に魔素やスキルを封じられても、この身体特性を封じることは出来ないだろう。
話が少し逸れてしまったが、『自己改造』というのは文字通り自分の肉体を任意で改造するモノであり、どんなに劣悪な環境下に置かれても生存可能なしぶとさを発揮する。
そして『生体武装』だが、これは……。
「甚振ったりはせぬ。……だが、手足は全てもぎ取らせてもらうぞ」
「ッ〜〜〜、なめるなぁ!!!」
……自身の肉体、あるいは着ている衣服を自在に剣や盾のような武具に変形させるというもの。
等級に換算すると、脅威の
クレイマンの命はもはや、風前の灯であった。
レイタロウとリムルの魂の系譜に連なっている者であれば、誰もが身体特性を保有しています。