魔王達にも悩みがあるんですよって話です。
「やったなレイタロウさん」
「お見事で御座いました、レイタロウ様」
「……あぁ、そうだな二人とも」
みんな御機嫌よう。俺はレイタロウっすよ。
十大魔王の一柱にして、
んで、今さっきまで脳内で反省会をしていた真っ最中なんだけど、それはリムルさんとゲルドが声をかけてきたことで中断することとなってしまった。
「……どうしたんだよ、浮かない顔して?」
「ん、そう?」
「そう。なんか勝っても全然嬉しそうじゃないし」
「……勝って嬉しいと言える相手じゃなかったしねぇ」
「まぁそりゃそうだけどさ」
リムルさんの言いたいことはよーく分かる。
ここは無理にでも嬉しそうにするか?
……などと思っていると、突然横合いからパチパチと拍手が送られてくる。
拍手の主はギィであった。
「見事だ。改めてお前を魔王であると認めよう。……異論のあるヤツはいるか?」
「(い、異論を挟んだらアタシがレイタロウちゃんと戦う羽目になるってこと!?)……な、ないない!アタシはレイタロウちゃんのことを信じてたさ!」
「ワタシの答えは決まっているのだ!何ならクレイマンをボコボコに叩きのめそうと思っていたのだ!」
「……私は誰が魔王になろうが興味は無い。好きにすればいい」
「ま、いいんじゃないの?」
「うむ、従者の強さも申し分ない。ワシも構わんぞ」
「わ、私は良いと思うわよ?」
「……俺も異論はねぇ」
ラミリスやミリム、レオン、ディーノ、ダグリュール、フレイさん、カリオンが概ね同意してくれた。
後に残るは……。
「余としては―――」
「リムルよ!これは一体どういうことだッ!?」
「な、なんで此処に……!?」
「……ヴェルドラさん?」
ロイ・ヴァレンタインが何か言い切る前にヌルっと横合いから現れたのは、我らがヴェルドラさんであった。
その手には〝
っていうか、ヴェルドラさんどうやって来たんだ?
教えてシエル先生!
《解。
……何げに凄くね?
「どうしたんだよヴェルドラ、いま忙しいんだけど」
「リムルよ。貴様、我にあのような仕打ちをしておきながら、その言い草は酷いのではないか?」
「え?」
「用件はこれだ。カバーと中身が別物ではないか!最終巻にしてこの嫌がらせは悪質すぎるぞ!!いや、これも面白かったがッ!!」
「あ、あ―――……」
「結局読んだんだね、ヴェルドラさん」
リムルさんのイタズラもかなりアレだけど、それを楽しめたのなら別に良いじゃない……。
「全く、我のあの時の感動を返してほしいものだ……ん?そこにおるのは
ヴェルドラさんの目に止まったのは、ロイの傍らに控えていた銀髪のメイドさん。
……その彼女から段々と殺意が湧き上がってきている。
「私に話しておいでですか?……私は魔王ヴァレンタイン様の侍女に過ぎませんが」
「ん?……あぁそういえば、ミリムがそんなことを言っておったな!」
「そうなのだぞヴェルドラよ!メイド服を着こなしているくらいで正体を隠せていると思っているバレンタインが可哀想ではないか!」
「ッ……」ピキピキピキ…ッ
おぉ……怖っ。青筋をピキピキ立てておられる。
ドラゴンコンビの無自覚煽りに
「……忌々しい邪竜め、どこまでも妾の邪魔をする」
まぁ何なら俺も正体を知っているワケだし、どれだけ正体を隠しても意味なんか無いんだけどね。
そのことに思い至ったのかは知らないが、何とも忌々しげに彼女は愚痴を零した。
「それに貴様、妾の名まで忘れたか」
「……ミルスじゃなかったか?」
「ミルスでは無いぞ、ヴェルドラよ」
「……もう良い、妾のことはバレンタインと呼ぶが良い」
やっぱりね。
ロイ・ヴァレンタインも割りかし良い線いっていたけど、本物の魔王は別格だ。
彼女こそが神聖法皇国ルベリオスの唯一神にして
「よろしいのですか、ルミナス様」
「致し方あるまい。もはや正体を偽ることは不可能じゃ」
「え、知ってた……!?」
「ッ……」フルフル…
どうやら第三世代に名を連ねるカリオンやフレイさんは全く知らなかったようだ。まぁそれは仕方ないか。
「それもこれも全て、あの駄竜のせいでなッ」ギロッ
「っ、わ、我悪くないし、隠してるの知らなかったし、バラしたのミリムだし……」
「ヴェルドラお前なぁ……」
「ミ、ミルスじゃなくてルミナスか、そうそう、そうであったわ……」
都を滅ぼされた怒りは収まっていないようだけど、当然っちゃ当然かぁ……。
「……ロイ、気になることがある。貴様は先に戻っておれ」
「しかしルミナス様」
「
「……承知」
そう言ってロイは、吸血鬼っぽく全身をコウモリの群れに変えて去ってしまった。
……道化の格好をした、ねぇ。
「突然じゃがギィよ。少しの間だけ話し合いの時間を設けさせてもらうぞ。……妾と
「ん、俺?」
俺を指差してギィに確認を取るルミナス。
……あぁなるほど、そういうことね。
「……ゆっくりお茶の準備をさせよう。レイン、適当な部屋に案内してやれ」
「はっ、了解いたしました」
「妾が何を話したいかは分かっておるな?……新しき魔王レイタロウよ」
「……分かっているとも。お茶が冷えないうちに終わらせるとしよう」
そうして俺とルミナスは、レインの案内にしたがって別室に通された。
ルミナスとの話し合いは十分とかからず終わった。
再び円卓のある広間へ入ると、そこには俺とルミナス以外の魔王が既に席に座って待機している状態であった。
いの一番に声をかけてきたのはギィ。
「よぉ、早く終わったみたいだな」
「おかげで実りある時間になった」
「……フンッ、お茶は冷えてなさそうじゃな」
ティーカップに入れられたお茶の湯気は衰えることなく立ちのぼり続けており、時間の経過を感じさせない。
よく見ると、クレイマンとの戦闘で少なからずヒビ割れていた床も元通りになっている。
相変わらず、自分が認めた強者への心配りは完璧だな。
俺とルミナスはそれぞれに用意された席に座り、円卓に置かれたティーカップを手に取ってお茶を啜った。
……これもこれで中々。
「……さて、今回の
俺がクレイマンを始末したことで、少なくとも傀儡国ジスターヴはガラ空きの状態にある。
国境の線引や領土の割譲についても話し合いが行われると思うけど、ここは俺が声を上げて言わなきゃならんところかなぁ……?
「ちょっといいか?俺様から提案……というよりお願いがあるんだが」
「カリオン……なんだ?言ってみろ」
浮かない顔で席を立ったカリオンが、俺を横目に見ながらとんでもないことを口にした。
「今日限りで俺は魔王の地位を返上させてもらう。そしてレイタロウに仕えることを許してもらいてぇ」
「……いきなりだな、理由はなんだ?」
「理由?……そりゃあ俺が、魔王にしては弱いからだな」
不慮の事故であったとはいえ、クレイマン軍が解き放った
トドメに、俺が増援として向かわせたベニマル達がカリュブディスを苦もなく殲滅した場面を目の当たりにしたことでポッキリ折れてしまったとのこと。
「だがカリオンよ、カリュブディスの『魔力妨害』の影響を受けながら三日三晩奮戦し続けられる者はそれこそ少ない。そこまで自分を卑下することはないのではないか?」
「……いいや、民を逃がすことは出来ても、結局勝つことは出来なかった。圧倒的勝利を収めて民を安心させるのが魔王の責務なら、俺はそれを全うできたとは言えねぇよ。だから俺は、レイタロウの配下につくと決めたんだ」
「待て待てカリオン、魔王の地位を返上するのは君の勝手だが、俺は君を下に見るつもりは無いぞ?」
「レイタロウ……」
「
「そりゃあ……そうかもしれねぇが……」
「だからここは、領地が接していて尚且つ最古の魔王と恐れられているミリムの軍門に下るべきだろう」
「ぶふぉ!!?」
俺の提案にミリムが飲み物を噴き出すが、構わず俺は話を続けた。
「ま、待つのだレイタロウ!そんな話初耳だぞ!?」
「そりゃ初めて言ったからな。……この場にいる魔王達で俺とミリムの強さを疑っている者はいないだろうが、ぶっちゃけ俺としてはジュラの大森林以上の領土は必要ないと思っている」
「ワ、ワタシも似たようなものだぞ!?」
「だが、ほかでもないカリオンからの本気の申し出とあっては無下にすることも出来ない。……そこで
「な、にを……!?」
「俺のような素性の知れない新顔の下に付くよりも、誰からも畏敬の念をもって接せられる最古の魔王ミリム・ナーヴァの頼れる右腕として、引き続き
「っ、なるほど、その手があったか……!」
「ワ、ワタシは、ワタシは受け入れておらぬぞぉ!?」
「それにこれはミリムのためを思って言っているんだぞ?いつまでも領地運営を他人任せにするつもりか?」
「うぐっ……」
「竜を祀る民の人達は、君のために料理などを学んで生まれ変わろうとしているんだぞ?……君は、そんな人達のために変わろうとする気は無いのか?」
「うぐぐ……ッ」
ミリムは場の空気を読める娘でもある。
だからこそロクに調理もされていない生野菜を出されても拒否することなく無心で食べているのだとヘルメス君から聞いている。
そんな閉塞的な空気感を漂わせていた竜を祀る民の人達が外界の刺激を受けてミリムの悩みを知り、ミリムのために自分を変えようと必死になって努力しているのだ。
そんな彼らの努力に報いるためにミリムのほうも変わるべきだと説得していると、今度はフレイさんが立ち上がりこう言ってきた。
「私も魔王の地位を返上し、ミリムに仕えたく思うわ」
「フ、フレイまで……!?」
「一応、理由を聞いておこうか」
「カリオンと概ね同じ。私は魔王としては弱すぎると思うのよ。さっきの戦いを見て思ったけど、彼の従者にすら手も足も出ないと思うわ。……こうすれば勝てた、民を守れなかった時に魔王にこんな言い訳は通用しないわね。例え自分に有利な状況を整えようと、その全てを覆す者が相手ではどうしようもないと知ったのよ」
「だ、だが……」
「……だからねミリム、私は貴女の配下につくと決めたのよ。どうかしら、この提案を受けてくれないかしら?」
「そ、それならレイタロウでも……」
「か、彼のところにその席は無いと思うのよ!?私の頭脳ならきっと貴女の役に立てるわ、きっと!!」
……もしかしなくてもフレイさんに嫌われてるな、俺。
やれやれ、まぁいいさ、俺にはシュナがいるし……。
「おいおい、オレはお前らを気に入っていたんだぜ?あと数百年もすれば二人とも覚醒するだろうと期待していたんだがな」
「期待はありがたいが、身の振り方は自分で決めるさ」
「右に同じく」
「……まぁいいだろう。たった今よりカリオンとフレイは魔王ではない。ミリムに仕えたいというのなら自分達で説き伏せるがいいさ」
ギィの鶴の一声によって、カリオンとフレイさんは魔王の地位を剥奪される運びとなった。
……まぁ元気なうちに辞められたと思えば、それはそれで良いのかもしれないけどねぇ。
「……本気なのか、カリオン?」
「あぁ。
「いいと思うわよ。獣王戦士団は貴女の戦力として恥じない戦力だし」
「……ワ、ワタシは、民を持たぬ主義だ」
「「 ……… 」」
「……でも、ワタシのために変わろうとする者達がいるのなら、ワタシも魔王として応えねばならぬ」
「「 ミリム……! 」」
「ワタシの後を追いたいのなら止めはせぬ。だが、ワタシは領地運営とかサッパリ分からないから、遠慮なくお前達に頼らせてもらうぞ!それで良いか!?」
「おぅ!遠慮なく頼ってくれや!」
「決まりね。分からないところがあれば私が逐一教えてあげるわ」
……ミリムの心境に変化が起こったことがよく分かる。
きっと彼女にも、上に立つ者としての自覚が芽生えたんだろうねぇ。
ということはだ、今後ミリムの国と交渉をする場合、カリオンとフレイさんを相手取らないといけないワケだな。
手強そうだな、特にフレイさんが。
「領地運営の話になったら呼んでちょうだいね?」
そう言って、魔王の地位を返上した二人は退席した。
席に座るのは、俺を含め八人のみ。
八人、か……。
「そうか、
「「「「「「 ッ〜〜〜!!! 」」」」」」
「!?」
え、何?
急に空気が変わったんだけど……?
リムル「ベレッタさん、なんだねこの数々の武器は?」
ベレッタ「ハッ!?申し訳ございません。こちらを磨き上げて是非レイタロウ様に献上してこちらのお願いを聞いていただきたく……」
リムル「それってゲルドがぶっ壊した人形じゃん。勝手に持ち出していいの?」
ゲルド「オレは一向に構いません」
リムル「ヤダ、なにこのイケメン……!?」