命名のほうでごたつくって話です。
ある人物達の前日譚もあります。
「困ったのぅ。また新たな名称を考えねばなるまいよ」
「幸いにも今は全ての魔王が揃っておるのだ。良い知恵も浮かぼうというものよな」
や、やぁ、こんばんチー。
俺はジュラ・スターモンズ連邦国の国王にして十大魔王の一柱、いや、今は十大魔王と言わないほうがいいか。
ま、魔王、魔王レイタロウだよ俺は!
……なんで十大魔王と言わないのかって?
そりゃあアンタ、今まさにそのことについて槍玉に上げられているからなのよ。
「わはははは!ワタシは今回もお前達に任せたのだ!」
「押し付け早ッ、まぁ前回は散々だったもんねー」
「幾度
「そうそう、十大魔王ってのも結局は人間が呼び出したんだよな。せっかく俺達だって必死に考えたってのに」
「さも建設的な意見を出したかのように語るでないわ。貴様は文句ばかり言っておったであろうが」
「何言ってんだよバレンタイン。そういうお前はロイに任せっきりだったじゃねーの」
「……噂に聞く悪夢が始まるのか」ボソッ
……もしかしてだけど〜、もしかしてだけど〜。
それって、魔王は、メッチャ暇なんじゃないの〜?
そういうことだろ?(デデンッ)
「八人だしさぁ、もう単純に八大魔―――」
「それは認めぬ」
「なんでよ!?」
「落ち着けお前達、こんな時こそ普段は見せない協調性で乗り切ろうじゃねーか」
「俺寝る(。-ω-)zzz. . . 」
「アンタほんと協調性の欠片もないわね!?」
うわーやだやだ、エゴの塊が八人も寄り集まると全然話が進まないねぇ。
もーいいじゃん、八大魔王とかでねぇ。
「もういーじゃん八大魔王―――」
「いや、それはない」
「ギィまで!?」
八大魔王はナシ、と……。
やっべーな、まさかこんな下らないことで時間を取られちゃうのか?
以前俺が所属していた組織とどっこいどっこいじゃんか。
マジありえねー、命名くらいで時間取るなよ全くぅ。
……しかし、新しい魔王の呼び名かぁ。
俺だったらなんて付けるかな?
八大……なんてのは確かにありきたりだよなぁ。
こういう時こそ
この場にいる八人全員が(存在感的な意味で)大きいのはもはや当たり前なんだよなぁ……。
だから呼び名に魔王が付くのはほぼ決定で、八人いるから〝八〟を付けるのも殆ど決定なんだよな。
八■魔王……。
端的に纏めたとして、あともう一文字が欲しいところだ。
……そう言えば、今宵は新月だったな。
夜空に〝星〟が輝いて、とても綺麗だ。
む、星、星か……。
八つの星……八芒星。
八芒星は英語で確か――――――……
「「「「「「「 ッ……… 」」」」」」」
「……ん、あぁスマンスマン。適当に言ってみただけだ。水を差して悪かったな」
「ほほぅ……八星魔王」
「ふふん!ワタシは分かっておったぞ!」
「イエ――イッ!流石はレイタロウちゃんだねー!」
「オクタグラム……ふん、悪くない」
「一瞬かよ……今までの話し合いは何だったのぉ?」
「ふむ……」
ニヤッ「……決まり、だな」
この日より魔王達は新たな呼称で畏れられることになる。
その呼び名は〝
新月の夜、新たな魔王の時代が幕を開けた。
「……さて、
いよっ、待ってました!
もー遅いよギィってば、俺はそれだけが気がかりで気がかりで心配してたんだからねぇ!?
渡された地図を恐る恐る見て……ホッと胸を撫で下ろす。
酒の席の口約束とはいえ、ギィはしっかりと約束を守ってくれたのだ。
ジュラの大森林全域……ヴェルドラさんが封印されていたため不可侵となっていた一帯が、正式に俺の支配領域となったワケだ。
いやー、ホント、我ながら破格の待遇だよなぁ。
ちなみにミリムはもっと凄い。
フレイ領、カリオン領、そしてクレイマン領が統合され、その全てをミリムが支配することになった。
もっとも、実際の領地運営はミリムの仕事では無い。
頼れる配下も出来たことだし、心配いらないだろうねぇ。
「傀儡国ジスターヴは東の帝国と隣接しているわ。改めて防衛戦を築く必要があるわね」
「あぁ。まずクレイマンがどんな管理をしていたか調べねぇと」
「レイタロウぅ……クレイマンを倒したのはお前なのだから、ここは
「治安が安定するまでは兵を貸し出すけど、ジスターヴは今やミリムの領地だからね。……領地を拡げようとしていると誤解されるのもヤダだし」
「うぅ……分かったのだ」
まぁちょっと気になることもあるし、しばらくは共同管理という
「……そういえば、傀儡国ジスターヴは元々前の魔王の支配領域だったな」
「前の魔王……」
レオンの言葉に、俺は
「あぁ、そういやそうだ。……奴が死んでクレイマンがそのまま地盤を引き継いだってことは、アイツらは裏で繋がっていたんだろうな。二人とも
「前の魔王?誰のことだ?」
「お前と奴が俺を魔王に推薦してくれたんじゃねぇか!なんでお前が覚えてないんだよ!!」
かつての魔王もそうやって生き延び、現在は
それの名は
二百年前、レオンが殺した魔王である。
〝魔物の殲滅〟
それが西側諸国に広く流布するルミナス教が掲げる教義の一つだ。
……誰が予想できただろうか。
まさかその聖地である霊峰の奥の院で、
これは中庸道化連が一人、
西方聖教会。
その発端はルミナス信仰の国外布教を目的として、神聖法皇国ルベリオスの下に作られた組織であった。
現在、聖騎士団団長ヒナタ・サカグチの統率のもと、もはやルベリオスの下部組織とは言えないほどの影響力を得たが、ただ一人、神ルミナスの代弁者たるルベリオスの法皇の言には耳を貸すと知られていた。
所変わって、ここはイングラシアの自由学園。
「いやー、マジで死んだかと思ったわ……ん?」
生徒達が元気に野外活動を楽しんでいる……その裏で、血や土埃で若干小汚くなっていたラプラスがこっそりと窓から建物の中へ不法侵入をしていた。
……が、バッタリと女性に出くわしてしまったのだ。
「……誰やあんた?(なんやエライべっぴんさんやけど、なーんか懐かしいような……)」
黒いスーツを着こなした金髪のエルフ……そんな彼女にどこか懐かしさすら覚えて呆然としていると、彼女はそっと目を閉じ、含み笑いを浮かべながらこう呟いた。
「馬鹿が……」
「(え、今バカ言われた?)」
「こちらへどうぞ、主がお待ちです」
不審者感全開のラプラスを特に気にする様子もなく、エルフの女性は淡々と案内を買って出た。
「なぁアンタ、主が待ってる言うてたけど、ワイが誰だか知っとんのか?」
「……中庸道化連のラプラス殿でしょう?主より伺っていますので」
「……そか」
そうして、エルフの女性が主と語る人物の部屋までラプラスを案内すると、そこで〝
「やぁラプラス、大変だったみたいだね。……それで西方聖教会の正体は掴めたのかい?」
「いやぁ、それがなんと……警備が厳重すぎて無理やったわ!」テヘッ!!
「ふーん、それで?……ヒントくらいは掴めたんだろ?」
その声色に、特にこれといった感情は乗っかっていない。
ラプラスであれば必ず成果を持ち帰ってくると確信していたがために。
「なんや……苦労して手に入れた情報やから高く売りつけたろ思たのに」
「あはは、君は嘘つきだからね」
「ヒドイお人やなぁ。ホンマ同情してまうで。……知らずにあんさんの計画に巻き込まれとるあの
窓際にて〝聖典〟を読み込む青年を見やり、ラプラスは呆れ気味に口を開いた。
「流石、
「お褒めに与り光栄だけど、依頼料の引き上げはナシだぜ?」
「……ホント敵わんわ」
〝聖典〟をパタリと閉じて窓際に置いた青年……ユウキの抜け目の無さに、堪らず項垂れたラプラス。
「まぁそう言うなって。約束の報酬はもう準備できてるからさ」
「え!?ほな……ッ」
「あぁ。僕の中にいた君達の会長の魂は無事に
「(会長が……ついに……)どこや!早く会わせてーな!」
「落ち着けよ、さっきからそこにいるって」
「は、えっ……?」
ラプラスは後ろを振り返る。
この場には、自分とユウキ、そして―――エルフの女性しかいないはずだった。
で、あるならば……。
「まさか……このべっぴんさんが……?」
瞬間、ラプラスの感情は爆発した。
……爆笑とも言えるか。
「ぶわははははッ!!なんですのんその格好?趣味を変えはったんですか?似合ってる言うたらおかしいけど、前とイメージが全然違いますやん!?」
「うるさいぞラプラス。それが二百年ぶりに対面した会長に対する態度か。……十年もかけてようやく肉体を手に入れたんだ。多少の不便は我慢するさ」
「いやいや、道理で懐かしい感じがすると思ったんや」
馬鹿笑いを一旦やめ、ラプラスは最大級の礼儀をもってカザリームの帰還を祝福した。
「お帰りなさいカザリーム会長。中庸道化連一同待っとったでぇ。ワイもフットマンもティアもクレイマンもな」
「感動の再会に水を差すようで悪いんだけどさ、魔王カザリームの完全復活とは、まだいかないんだよね」
「まぁな。正直なところ全盛期の力には遠く及ばない。レオン・クロムウェル……忌々しい野郎だ」
「まぁまぁ、やられちゃったんは二百年前の話やん?今は
「その程度の年月で薄れる屈辱ではないがな。……だが、ボスに出会えたのは紛れもない幸運だった」
箱詰めにされていたシュークリームを大皿の上に移し終えたカザリームは、
「……十年前、俺の魂は本当に消滅寸前だったからな。肉体を失って消耗していたんだ。ボスに憑依できなければ確実に死んでいたわ」
「ボス……」
「新しい体の性能に文句言うのは勘弁してくれよ。結構高くついたんだぜ?」
「分かってるよ、魔導王朝サリオンの特注品だろ?脆弱だし俺の趣味に合う外見ではないが、自分で動かせる
「ッ〜〜〜、ぶふっ、ひ〜〜ひっひっひっ、ふひゃははははははははは!!」
「おい、いつまで笑ってるんだラプラスお前」
「いやいや、口調との違和感がキツすぎて笑えますよってに!」
「……分かったわよ。力が戻りきらない今は秘書のふりも続けなきゃならないのだし、当分はそれらしく喋ることにするわ」
「ブワハハハハ!!」
「ツボってんじゃねぇ」
「……ところで本題に入らせてもらってもいいかな?」
カザリームとラプラスの会話の間に割って入ったユウキは一番に聞きたかった報告を催促する。
「西方聖教会、なんか掴めたんだろ?」
ラプラスは、会長と仰ぐカザリームの顔を見やる。
その顔は、さっさと話せと物語っていた。
「……せやな、会長がボスと呼ぶなら、あんさんはワイにとってもボスや。駆け引きはナシで語らしてもらいまっさ」
そこで初めてラプラスは、あの夜自分が体験したことの洗いざらいをぶち撒けた。
神聖法皇国ルベリオスに隠された闇について……。
しばらくラプラス目線の話が続きます。