樺太アイヌの女の子、エノノカのおかげで私達はアシリパの情報を得ることが出来たけど。犬橇を借りても犬が足りなくなった。
「ん、仕方ない」
「仕方ないでオレにおぶさるのか」
よしよしと剣路の頭を優しく撫でてあげ、ワンちゃんと一緒に走るのは流石に疲れるという剣路の背中を降りて、カバンの中を調べて使えるものを探す。
「ん、着けて」
「汽車の煙突か?」
「これ食べて」
「……石炭は食えねえよ」
「剣路君、それ食べれる石炭よ。懐かしいですわねー、ギガゾンビを思い出すわ」
「「「「ぎが、ぞんび?」」」」
たまに紗那は変な事を言うけど。
どこか母様の話してくれたお話も知っているし、すごく発明品にも詳しい。ん、兎に角、色々と難しく考えなくても大丈夫だから食べていい。
渋々と食べてくれた剣路の口から、ガリゴリと音が聞こえたと思えば物凄い速さで走り出す。そんな剣路の腰に巻き付けた縄を掴み、私と紗那は橇に腰掛ける。
「あ、脚が止まらねえぇーーー!?」
「音之進様ぁーー!!!」
「ん、走りすぎだね」
そんな風に話しながら、全力で走り出す剣路を追いかけてくれる杉元達と月島達の橇に向かって伸び続ける縄を投げて、左手で剣路を抑える。
だけど、片手じゃ力が入らない。
「紗那、手伝って」
「えぇ、お安い御用よ!」
剣路の手綱を握ってくれたおかげで動きを制御することには成功した。あとは速度を落として、そのまま動けば問題なく動ける。
「しとりさん、行きすぎだ!」
「剣路に行ってほしい」
「もっと抑えろ、緋村一等卒」
月島の言葉に地面に刀を突き立てて止まろうとする剣路の背中に抱き着き、汽車の帽子を少しだけ外してあげると緩やかに足を止めていく。
ん、とても危なかったね。
「しとり、マジで危ないからやめてくれ」
「ん、いやだった?」
「嫌じゃねえけど。危ない」
そう言うと足を止めた剣路に月島が近付き、ベタベタと手足を触るも「なぜ、あんな岩に当たって怪我をしていないんだ?」と困惑していた。
糸色家の神秘だよ、月島。
深く考えなくてもいいんだ。糸色家の人に関わっているなら、これぐらい当たり前だと思えるようにならないと疲れることになるよ。
まあ、その糸色は私だけど。
「紗那!怪我はしていないな!?おのれ緋村、勝手に暴走しおって!!」
「しとりさん、大丈夫かい?」
「私は大丈夫だよ」
「そ、そうか?」
私の事を心配してくれる杉元から、私の事を引き離して抱き締める剣路に小首を傾げつつ、よしよしと彼の頭を優しく撫でてあげる。
あんまり、心配させないでね?