ロシア領まであるけど。
此処にはロシア人も多く居るらしい。
「なんか言ってるね」
「ん、お酒臭い」
杉元に掴み掛かっていたロシア人の男は殴り倒され、ピクリとも動かない。気を失っているみたいだけど、なんであんな直ぐに殴り合うのかな。
「ん、紗那。どうしたの?」
「いや、ムキムキの男を探してるのよ」
「むき?」
「筋肉質な男よ」
不思議な事を言う紗那に小首を傾げつつ、私も筋肉質な男の人を探すために歩いていると背広姿の男が見えた。けど、そんなに怪しくは思えない。
たぶん、違う人だ。
そう思いながら歩いていると、エノノカが「犬を盗まれた」と騒ぐ声が聞こえた。ん、ワンちゃんを盗むなんて許せない。髪の毛を毟ってやる。
「家族を盗むなんて最低ですわ。音之進様、そのロシア人を膾斬りにしてくださいな」
みんなで禿げそうになっている男を見下ろし、和鋏を取り出して、チョキチョキと少しずつ髪の毛を刻んであげると必死に喚き始める。
「待てッ、キロランケ達が来たと言っている!」
「ウソだな、全部切れ」
「ん、杉元も切ってみる」
「いや、毟ったほうが早い」
ブチブチと髪の毛は抜け、みすぼらしい頭になったロシア人に私達は満足する。
「Этот чертов ублюдок как он посмел делать мне прическу!!」
「月島、通訳しろ」
「早口で聞き取れません」
「『このクソ野郎、よくも俺の髪を』って言ってるだけだよ。」
「Если ты не явишься на Стенку, я, блядь, убью твою собаку!」
「スチェンカ?」
「拳闘だよ。ロシアの賭け事」
「糸色、随分とロシア語に精通しているようだが、何かあるのか?」
「ん、清国の言葉も喋れるし、アメリカもインドもドイツもモンゴルも喋れるよ。色んな場所を探検して冒険したから覚えてるだけだよ」
そう言って月島を見遣る。
私の事を怪しんでいるのは、いいけど。スチェンカに参加しないと情報もワンちゃんも手に入らないんだよね。すごく困った。
「けんちゃんは今回はお留守番だね」
「なんでだ?」
「ん、けんちゃんは素手だと弱い」
「お前よりは強いだろ」
「緋村、女性に暴力を振るうのはダメだぞ。況してやしとりさんは紗那の親友だ。あまり不埒な行為は控えるべきだろう」
「貴方もです、鯉登少尉」
ん、仲良くしてほしい。
「とりあえず、俺達で戦うしかないか」
「おれたち?」
「ん、がんばってね」
スチェンカは女は出来ないらしい。
頑張って勝って貰わないといけない。