杉元達の初陣。
その全身の筋肉を総動員した躍動的な豪快な拳の応酬に感心しながら剣路は自分の身体と杉元達の身体を見比べている。
そんなに心配しなくても筋肉はあるよ。
けど、そんなことよりも私は小屋の中に密集する男達の汗臭さに顔をしかめて、小屋の外に出て深呼吸する。あんなところに長くは居られない。
「いた?」
「いや、いなかった」
「ん」
もう離れたのか。
それとも隠れているか、まだ小屋の中に居るのかも知れないけど。杉元達の身体の傷や怪我を考慮しても長期間の滞在は勧められない。
「失礼。そこの青いリボンのお嬢さん」
「ん、私はもうマダムだよ」
日本語で話しかけられたことに少し驚きながらも後ろに振り返ったとき、私はとてもとても嬉しく思ってしまった。
ん、ん!
ん!!
んーーっ!!!!
「まいはるだーーー!!!」
「やはり、しとりさん!!」
背広の脇と背中が筋肉の大きさで割けるのも忘れて、私を力強く抱擁し、グルグルと回り始める岩息舞治に笑顔を向ける。
「大きくなりましたね。しとりさん、私が会ったときはまだ小さくて愛らしかった。今はもうすっかり素敵なレディになりましたね」
「ん!まいはるも大きくなった!」
「えぇ、鍛えてますからね」
キランと片目を閉じる舞治に剣路は物凄く怒った顔を向け、刀を抜こうとするけど。私が「父様の喧嘩友達だよ」と伝えたら、渋々と納得してくれた。
けど、なんで舞治が?
「拳の会話をするためです」
昔と変わらないね。
舞治に会えたのは嬉しい。また、母様のお墓参りに来てなかった人に会えたから、今回はしっかりと伝えるつもりだ。
「舞治、母様のやり残し。また開き始めている『地獄門』の封印を手伝ってほしい」
「! あの事件ですね。私も話だけは聞いていますよ。分かりました」
にこやかに頷いてくれた舞治に抱き着き、「ありがとう!」と伝えると彼はまた笑ってくれた。けんちゃんは鯉口を切って、今すぐ斬りかかってきそうだね。
「ん、じゃあ、またね」
「えぇ」
「二度とそのツラ見せるな」
「けんちゃん、ダメだよ」
「お前もオレの女だって自覚しろよッ」
ん、強引なのは好きじゃない。
「……とりあえず、杉元達を待つぞ」
スチェンカが終わるまで、ゆっくりと待つしかないのは暇だけど。チカパシとエノノカのふたりが、しっかりとワンちゃんを見つけてくれるといいけど。
「しとり、あのオッサンは親父さんの友達で良いんだよな?」
「ん、そうだよ。すごーく強いよ」
父様が吹っ飛んだの、初めて見たからね。