舞治と殴り合う予定の杉元達。
強さなら負けない。けど、舞治は強すぎる。打撃の威力だけなら和尚に近いし、身体の芯に残るから危ないって父様も言っていた。
私も舞治の拳は危ないと思う。
だって、当たると死ぬ。
「杉元達に教えるのか?」
「ん、教えてもいいけど。舞治は泣く」
「泣くのか」
「ん」
私の言葉に困惑する剣路の気持ちは分かる。でも、舞治は父様と戦っているときも相手してもらえないと泣いていたから、よく覚えている。
まだ、ひとえが母様のお腹にいたときだ。
「ところで、チカパシとエノノカは?」
「此処に、あれ?」
剣路に見ててって言ったのに目を離したんだね。仕方ないと探しに向かう私に着いてこようとする剣路に「杉元達の荷物を守ってて」と伝える。
子供の足だから遠くまでは行ってないはず。
「チカパ……なんで追われてるの!」
「А ну стой, мелкий сорванец!!」
「シトゥリ、助けて!」
「シトゥリカッケマッ!」
ロシア人の男に追われるチカパシとエノノカとすれ違うように駆け出し、向かってくる男に電光丸を引き抜いて斬り倒す。
……後ろ腰に佩いていたから、居合が使えた。けど、逆手一文字は邪道だって池波君は言ってたし、止めておいたほうがいいのかな。
「シトゥリ!裸の男だ!」
「ん、エノノカは見ちゃダメだよ」
サッとエノノカの目元を隠して、クズリに追われて小屋に逃げ込む舞治達の事を遠目に見つめる。クズリがいるから今は近付けない。
どうやって、助けよう?
「アレはロシアの蒸し風呂のバーニャっていうんだ。シトゥリも気に入ると思うよ!」
「蒸し風呂、あとでエノノカと入るね」
「うん!」
よしよしとエノノカの頭を撫でて、バーニャの方を見ると恍惚と顔を赤らめる舞治に裸の鯉登や月島、谷垣が群がっているのが見えた。
「音之進様…?」
「ん、紗那。どこにいたの?」
「宿屋の手配をしていましたわ。いや、それよりも何でサウナの中でヤってやがりますの?音之進様は私というものがありながら!!」
「落ち着いて、クズリに気付かれるよ」
「落ち着けませんわぁ!?杉元さん、杉元さん!こちらに居ますわよ!ホモホモしてる音之進様にお灸を据えて下さいませぇ!」
「ほも?」
なんだかわからないけど。
杉元を呼ぶ紗那の視線の先を見ると意識の朦朧とした怖い杉元が見えた。チカパシと、エノノカはバーニャを覗きに行っているし。
とても困ったことになった。
これから、どうすればいいのかな。
流石にこれは悩んじゃうよ。