最も手を伸ばすのは神威の花。   作:SUN'S

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前進 序

スチェンカを終えて、おかしくなった杉元を避けているとクズリが此方に気付いて走ってきているのが見えた。逃げないとチカパシとエノノカが危ない。

 

「生駒、ドンは?」

 

「寝てるわよ」

 

ん、すごく困った。

 

動物を斬るのは好きじゃないし、クズリはドンの仲間だから斬りたくない。もしものときは、いつでも右手を捨てるつもりだけど。

 

「きん、か、い!」

 

杉元もおかしい。

 

フラフラと動く杉元の手には鎌や金槌が握られ、目付きも悪くなっている。いつも悪いけど、今日は、とくに悪くなっている。

 

「しとり!エノノカと逃げろ!チカパシ、銃を!」

 

谷垣の言葉に私はエノノカを抱き上げ、逃げると同時にチカパシと一緒に銃を撃つ谷垣の姿が見えた。ん、剣路のほうが大きい。

 

そんなことを思いながら見ていると、杉元と舞治がまたスチェンカを始めて、みんなが止めに行ったら氷が割れ、みんな氷水に落ちた。

 

ん、寒そうだね。

 

馬鹿みたいに殴り合っていたみんなは、またバーニャに入っている。みんなの服を集めて洗い、モヂカラで乾かしてあげる。

 

「ん、汗臭い」

 

「蒸し風呂だもん」

 

あまり危ないことはしないでほしいね。

 

「エノノカ、手拭いある?」

 

「あるよ!」

 

「使い回すのはイヤだよね」

 

みんなで楽しく蒸し風呂に入っている剣路達と違って、私と紗那とエノノカは暇だ。裸の男達のいるバーニャに入ろうとは思わない。

 

「くっ。音之進様…!」

 

「紗那は大変だね」

 

「しとりはイヤじゃないの!?」

 

「私はけんちゃんを一番しってるし」

 

「……それもそうね」

 

納得してくれた紗那だけど。

 

鯉登に呼ばれて引っ掻き傷だらけのドアの前に立ち、色々と飲み物を差し出している。水分補給はとても大事だから当然だね。

 

けど、紗那は甲斐甲斐しすぎる。

 

「しとり、蒸し風呂あとで入る?」

 

「ん」

 

「ベネ。冬空のサウナ、楽しみですわあ」

 

「さうな?」

 

「独り言よ、はとり」

 

「しとりだよ」

 

人の名前を間違えて呼ぶのは悪いことだと思うから、やめてね?と電光丸の柄頭をグリグリと紗那の脇腹に押し付け、叱りつける。

 

「調子に乗っていますわね。鳳凰天舞」

 

「そっちが始めたんだよ、黄金剣」

 

ここで斬り合っても構わないけど。

 

エノノカやチカパシもいるから、危ないところも危険なところも見せたくない。子供に怖がられたり嫌われるのはすごくショックだからね。

 

チラリと偉そうにしている鯉登を話し合う紗那をまた見る。鯉登にはまだ黄金剣の事を教えていないのか。それとも見せるつもりはないのだろうか。

 

 

 

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