舞治と別れて、樺太を北上していたとき、杉元の荷物を持っていこうとする男の子を見つけ、手首をねじって押さえつける。
「離せ!この!」
ジタバタと暴れる男の子の腕と首を押さえつけているせいか。男の子のお尻が頭より上になった瞬間、杉元の怒りの張り手が男の子のお尻を貫いた。
甲高い悲鳴を聞きつつ、お尻を押さえる男の子。
「お仕置きは一発だ!」
「杉元、痛そうだよ」
「しとりさん、痛くしたんだよ」
そうなのかと納得しながら、お尻を押さえていた男の子は今度は剣路の雑嚢を掴み、走り出した。でもお尻が痛いのか、すごく辛そうに走っている。
「……?紗那、どうしたの?」
「いや、何でもありませんわ。まさか捕まえるなんて思わなかったわ。いや、しとりの目と手の速さなら捕まえるのは直ぐに理解できた。でも、いいわ。軽業師の音之進様が見れる!」
ん、また独り言を言っている。
そんなに独り言が多いのは何故だろう。
「あ、着いたみたいね」
「ん、曲馬団?」
「サーカスとも言うわね。パンタローネとか」
「……あいつ、嫌い…」
アルレッキーノも嫌いだ。
母様に悪いことしようとしていた。
だから嫌いだ。
そんなことを思い出していると杉元が「ハラキリさせろ」とおじ様に押し迫り、おじ様も杉元の顔にトキメキを感じているように見えた時、私達に視線が向いた。
「美しい…!」
「ん」「あら」
ガシッと手を掴まれながら褒められ、ちょっとだけビックリしていたそのとき、剣路と鯉登の拳が男の事を殴り飛ばした。
「私の妻に触れるな」
「オレの女に触るんじゃねえ」
「し、失礼。しかし、此方のお嬢さん達も出て頂けるのならハラキリショー、構いませんよ」
「しとりさん!紗那さん!」
「……音之進様が良いなら」
「私もけんちゃんが良いなら良いよ?」
私達の言葉にものすごく悩む二人。杉元は「アシリパさんを見つけるためだ!二人に出てもらおう!」と話してくれる。
だけど、私達は何をするの?
「少女団の演目に」
「私、28だけど。いいの?」
「ずるいわよね、その美貌で」
ん、私は母様に似てるから美人だよ。けど、ひとえも美人だから、きっと子供達も美人に育つ。そうなったら、とても嬉しいし、素敵だ。
「しとりに変な格好させねえなら」
「私もそれには同意だ」
「裸じゃないなら大丈夫だよ。私の身体に恥ずかしいところはないからね」
「めだかちゃんみたいなこと言いますわね」
めだかちゃん?
私の知らないお友達かな?と小首を傾げながら私達もサーカスに加わることになった。