公演に向けて練習を繰り返す。
「なにやってんだい、ゲンジロー!」
フミエの言葉に大きな身体を揺さぶる谷垣を応援しつつ、私は紅子先輩と一緒に、まだ踊り慣れていない女の子達に踊りを教える。
悪いところは見れば分かるから、こうして教えて私の経験や練習にもなる。紗那は客寄せのためにチラシを作り、いそいそと頑張っている。
ん、みんなで頑張っている。
軽やかにステップを踏む女の子達と動きのズレる谷垣に近付き、腰と太股を掴んで動きの所作を緩やかに教えてあげ、動きを補強する。
「動ける?谷垣」
「ありがとう、しとり」
昨日は「ブヒィー!」とか泣いてたから心配してたけど。危なくないなら私は安心だよ、でも、危ないことしないようにね?
「しとり、近すぎだ」
「んッ、谷垣にはインカラマッがいる」
私より胸の大きいインカラマッだよ、谷垣は胸の大きな女が好きなんだよ。確かに、私も胸は大きいけど、すごく不思議だね。
「誤解が広がる!」
「いや、お前は胸派だろ」
「谷垣、貴様も胸か」
「何故、ここぞとばかりに?」
杉元と鯉登の二人に攻められ、困惑する谷垣。
私としてはインカラマッの事を大切にしているなら、それで良いんだ。もしも怪我させたら絶対に許さないけど。谷垣は優しいから信じている。
けんちゃんは悪いことするかな?
「ん、私の家族も行こう」
「家族?って、クズリじゃない!?」
ワーキャーと逃げるみんなに見えるようにドンの首や背中を撫でてあげると、ドンは気持ちよさそうに目を細めて、私のお膝の上に乗る。
「……噛まない?」
「杉元も撫でる?」
スネコスリの親分でも良いんだけど。
スネコスリはとても大きいし、車のように変わったりするから狙われたりしたら可哀想だ。色々と大変になっているが、まあ、なんとなるはずだ。
「か、かわいい!」
「成る程、動物か」
「ん、教えれば芸も出来る」
ドンは二足で歩いたり、グルグルと独楽のように回ったりと色んな事をみせてくれ。その可愛さにキャーキャーと騒ぐ女の子達の反応に、ヤマダは何かを考えるように笑い、私も納得している。
元気に走るドンを追いかける子供の様子に杉元は「動物と触れ合える場所とかどうだ!」と提案し、あっさりと断られていた。
「杉元は混ざらないの?」
「しとりさん、俺は大人だよ?あんなにクリクリとした目で見られたからって抱き着いたりすることは絶対にしないに決まっているでしょう」
「そうなんだ。ん、ドン。そろそろ影の中に戻っておいで」
そう言ってドンを影の中に戻してあげると、杉元はものすごくショックを受けているように見えた。