「紅子先輩、ブヒィッ!!!」
グスグスと泣いて別れを惜しむ谷垣と少女団のみんなを遠目に眺める月島にチョコレートを手渡す。疲れているときは甘いものだよ、お食べ。
けど、サーカスをしたおかげで杉元達の名前は新聞に載る。アシリパの方にも情報は届いていると良いんだけど。キロランケとオガタ、二人は何をしようとしているのかな。
「杉元、見つけて貰えるといいね」
「ああ」
「見つかりますわよ、きっと」
私と紗那の言葉に頷く杉元。剣路と鯉登は近付き過ぎるなと言うけど、杉元は優しいよ?
ちょっと乙女さんだけど。そういうところもあるから面白いのかも知れない。ん、兎に角、杉元にそんなつもりはない。
「ん、がんばろうね」
そう杉元を励ます。
杉元にはアシリパがいるから、私や紗那に不埒な真似をしようとは思わない。鯉登も分かっているだろうし、谷垣は胸の大きな女が好きだ。
ん、つまり、紗那は危ない。
「今、不名誉な事を言われた気が」
「何も聞こえませんわよ」
「谷垣、また幻聴か?」
そんなことを話していると月島が谷垣に近付き、谷垣の体調を確認する。谷垣は気付いていないけど、インカラマッの無事を願う祈りを受けて、少しずつ吉兆に向かっている。
このまま進めばアシリパにも直ぐに会えると思いながら、ヤマダ達と別れて、エノノカのお祖父様の先導する犬橇を追う。
「けんちゃん、大丈夫?」
「なにがだ」
「神谷活心流、使ってたから。戻ったのかと思ったけど、違うんだね」
「……そう簡単には戻れないよ」
ん、そうだよね。
でも、ちょっとずつだけど。けんちゃんは人斬りから戻りそうになっているし、ゆっくりで良いから、また一緒に剣道をしよう。
「私もいるのだけれど」
「ん、紗那は問題ない」
「紗那は大丈夫だ」
「幼馴染みの信頼が強いですわね」
犬橇に座る私達の会話は向こうには聞こえていないのか。トホトホと叫ぶ声ばかりが聞こえる。ふと、剣路に言い忘れていたことを思い出した。
「剣路、言い忘れていたんだけど」
「忘れ物か?」
「ううん、赤ちゃん出来たよ。四人目」
「え?」
「あらまあ、おめでたですわ」
「お?あ?」
「ん、だから元気に帰ろうね」
そう言うと剣路は「浜の番屋か?」と呟いた。
「ラッコ鍋ですわね。美味しいと聞いたことありますし、私も音之進様と一緒に食べてみようかしら?」
「味は美味しかった」
杉元達が裸で抱き合っていたのは覚えているから、ちょっとだけビックリしたけど。ぅん、あれは杉元達の仲良しの証なんだろうと思う。
私は見たくなかったけど。