「キェエエェエエエエエェエッ!!!」
「ん、うるさいね」
灯台に入ったのに叫び続ける鯉登に抱き付かれ、顔を真っ赤に染める紗那の事を見つめつつ、カバンの中に「キャンピングハット」を仕舞う。
被っててもいいけど。
右手で持ってても落とすから仕方ない。
そんなことを考えながら、暖炉の上に乗っている杉元達を見上げる。杉元達もはぐれていたらしく、鯉登は単身でさなを探しに来ていたそうだ。
「しとりさん、無事だったのか」
「ん、杉元もチカパシも元気そうだね」
谷垣も元気そうだけど。
すごく寒そうにしている。
どうにかして、暖めてあげないと凍傷を起こすかも知れない。月島が見ているけど、隠さずにカバンを開けて荷物を取り出していく。
「ん、三人ともこれ貼って」
母様の発明品「ごきげんポカポカシール」。
服の上から身体に貼り付けると感情の強さで暖かくなる道具で、私は気に入っているし、たまに使ったりすることもある。
「……あったけえ」
「谷垣ニシパ、これも勃起?」
「多分、そうだ」
ん、科学の力だよ。
そう言いながらカバンに手を伸ばす月島を見ると「危険な物は無いか?」と言われ、チカパシを見ると彼は人差し指に「空気ピストル」を付けた。
「指鉄砲か?」
「杉元の本気の拳並みに痛いよ」
「それを私に向けるなァ!」
「シトゥリカッケマッ、すごいのあれ?」
「ん、ヒグマだって倒せるよ」
私の言葉に、みんなの視線はチカパシの右手の人差し指に集まり、月島が「吹雪が晴れたら試せばいい」という言葉に、みんなも頷く。
「谷垣ニシパのはスゴいよ!」
「嗚呼、これだ」
右腕に嵌めた「空気砲」を見せる谷垣に、鯉登と杉元の視線は僅かに輝いた。男の人はああいうものが大好きだって聞いている。
「月島、紗那、私も欲しいぞ」
「えっ」
「要りません」
「だが、あの砲身のごとき腕は役立つぞ!」
なんだか大変そうなことになってきたから、灯台のおじいさんとおばあさんにロシア語で「うるさくして、ごめんなさい」と謝っておく。
みんなも元気になってきた。
「ん、エノノカもカバンが気になる?」
「うん!ヘンケの話してくれた神様の袋みたいですごく気になる!」
「神様の袋じゃないけど。ん、確かに千種類以上はあるよ、私の母様はすごいんだ」
「シトゥリカッケマッのサポ?」
「ん、この世で一番綺麗で誰にも好かれて愛されていたのは私の母様だよ。神様にお酒を貰ってたりもしたんだよ」
「しとりさんったらすごいこと言うね」
「いや、霊能者に聞いたことがある。糸色景は和人でありながら、アイヌ民族のカムイの巫女を務めていたそうだ」