「紅茶、美味しいですわね」
「ああ、鶴見中尉にもお勧めしたい」
お茶請けのお菓子を食べている鯉登と紗那を残し、私はエノノカのヘンケを手伝い、橇に鉋を掛け、ささくれを取り除き、綺麗に整える。
「ん、どう?」
私の問いにヘンケは満足そうに頷きつつ、犬の身体が少し大きくなった理由を聞かれ、エノノカに「このご飯をあげたからだよ」と通訳してもらう。
樺太アイヌの言葉はまだ聞きなれない。
「シトゥリカッケマッ、どう?」
「ん、ありがとう」
よしよしと頭をなでてあげる。
エノノカはいい子だね。
私とけんちゃんの子供もすごく良い子だから、また樺太に来ることがあったらなかよくしてほしい。この子はどんな子に育つのかな。
そんなことを考えながら、お腹を擦る。
けんちゃんも私の事を心配してくれるけど。早く東京に帰って、みんなで過ごしたい。剣路もそう思ってくれていると嬉しいな。
「エノノカ、此方は終わったぞ」
「ヘンケ。終わったって!」
「ん、剣路もお疲れ様」
「ああ、しとりもお疲れ様」
私の言葉に頷いた剣路は壁に立て掛けていた刀を佩いて、ゆっくりと腰を落として私の顔に付いていた木屑を取ってくれた。
ん、大丈夫だけど。ありがとう。
「しとり!お湯はあるか!!」
「ん、ある……杉元、なにしてるの?」
「あ、いや、これは」
ズボンのベルトを外して、鯉登を追いかける杉元を冷ややかに見つめる。そういう趣味があるっていうのは、浜の番屋で知っているけど。
「無理やり迫るのは良くないよ。紗那もいるし」
「まさか、杉元さんが泥棒猫ですの!?」
「違う!!!」
なんだか面倒くさいことになった。
ズボンのベルトを締めずに近寄る杉元に紗那は慌て、私も目を閉じて溜め息を吐く。そういう趣味は認めるし、理解もするけど。
「浮気は悪い文明」
「そのとおーりですわ!」
紗那も同意する最中、思う。
「(やっぱりけんちゃんの方がおおきい)」
「違うんだよ!これは誤解なんだ!しとりさんも紗那さんも物理的に離れるじゃん!!」
「当たり前だ。この変態めが」
「オレの女に近付くな」
「ん、けんちゃんの方が大きい」
「音之進様も負けていませんわ!」
「「ちょっと黙っててくれ」」
なぜか怒られた。
本当の事なのに、なんで怒るんだろう?と小首を傾げていると、谷垣と月島もチカパシもやって来た。みんな、なんで普通にしているんだろう。
「しとりさん、誤解なんだよ」
「ん、私は理解ある女」
「ちがうってばもう!」
プンプンと怒る杉元にチョコをあげようかと思ったけど。手がばっちいからやめた。