【完結】最も手を伸ばすのは神威の花。   作:SUN'S

114 / 162
吹雪の中で 急

「紅茶、美味しいですわね」

 

「ああ、鶴見中尉にもお勧めしたい」

 

お茶請けのお菓子を食べている鯉登と紗那を残し、私はエノノカのヘンケを手伝い、橇に鉋を掛け、ささくれを取り除き、綺麗に整える。

 

「ん、どう?」

 

私の問いにヘンケは満足そうに頷きつつ、犬の身体が少し大きくなった理由を聞かれ、エノノカに「このご飯をあげたからだよ」と通訳してもらう。

 

樺太アイヌの言葉はまだ聞きなれない。

 

「シトゥリカッケマッ、どう?」

 

「ん、ありがとう」

 

よしよしと頭をなでてあげる。

 

エノノカはいい子だね。

 

私とけんちゃんの子供もすごく良い子だから、また樺太に来ることがあったらなかよくしてほしい。この子はどんな子に育つのかな。

 

そんなことを考えながら、お腹を擦る。

 

けんちゃんも私の事を心配してくれるけど。早く東京に帰って、みんなで過ごしたい。剣路もそう思ってくれていると嬉しいな。

 

「エノノカ、此方は終わったぞ」

 

「ヘンケ。終わったって!」

 

「ん、剣路もお疲れ様」

 

「ああ、しとりもお疲れ様」

 

私の言葉に頷いた剣路は壁に立て掛けていた刀を佩いて、ゆっくりと腰を落として私の顔に付いていた木屑を取ってくれた。

 

ん、大丈夫だけど。ありがとう。

 

「しとり!お湯はあるか!!」

 

「ん、ある……杉元、なにしてるの?」

 

「あ、いや、これは」

 

ズボンのベルトを外して、鯉登を追いかける杉元を冷ややかに見つめる。そういう趣味があるっていうのは、浜の番屋で知っているけど。

 

「無理やり迫るのは良くないよ。紗那もいるし」

 

「まさか、杉元さんが泥棒猫ですの!?」

 

「違う!!!」

 

なんだか面倒くさいことになった。

 

ズボンのベルトを締めずに近寄る杉元に紗那は慌て、私も目を閉じて溜め息を吐く。そういう趣味は認めるし、理解もするけど。

 

「浮気は悪い文明」

 

「そのとおーりですわ!」

 

紗那も同意する最中、思う。

 

「(やっぱりけんちゃんの方がおおきい)」

 

「違うんだよ!これは誤解なんだ!しとりさんも紗那さんも物理的に離れるじゃん!!」

 

「当たり前だ。この変態めが」

 

「オレの女に近付くな」

 

「ん、けんちゃんの方が大きい」

 

「音之進様も負けていませんわ!」

 

「「ちょっと黙っててくれ」」

 

なぜか怒られた。

 

本当の事なのに、なんで怒るんだろう?と小首を傾げていると、谷垣と月島もチカパシもやって来た。みんな、なんで普通にしているんだろう。

 

「しとりさん、誤解なんだよ」

 

「ん、私は理解ある女」

 

「ちがうってばもう!」

 

プンプンと怒る杉元にチョコをあげようかと思ったけど。手がばっちいからやめた。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。