「おばあさん、これでいい?」
「Спасибо. Я очень рад.(ありがとう。助かるわ)」
「ん、пожалуйста(どういたしまして)」
ロシア語で会話していると月島が私を見てくる。これぐらい普通だと思うけど、月島も話せるんだから問題なく会話に混ざれば良いんだよ。
「糸色、あまり仲良くするのはやめておけ」
「月島は何が怖いの?」
「は?」
「私の向こうに誰を見ているのか知らないけど。オガタも月島も私に何を思っているの?」
そう言い残して私はおばあさんと一緒に料理を運び、チカパシとエノノカの二人を呼ぶ。ワンちゃん達にご飯を食べさせていたのか、毛まみれだ。
元気なのは良いことだね。
「月島、ご飯を食べよう」
「…あんたに俺の何が分かる……」
ボソリと何かを呟く月島に小首を傾げつつ、私のお膝の上に座るエノノカの頭を優しく撫でてあげる。フクスーナフクスーナ。
「この葉の肉包み美味いなあ」
「ガルブツィーだよ。分かりやすく言うと肉の野菜巻きかな?」
ロールキャベツともいうけど。
私以外だと剣路や紗那しか知らないかと思い返し、フォークを使う手を止めて、ナイフでガルブツィーを切り分け、中に詰まったお肉を見せる。
「野菜巻き、ヒンナヒンナ」
「ん、ヒンナヒンナ」
「……紗那、あれは何かの祝詞か?」
「アイヌ語の食事に感謝する言葉ですわ。音之進様も是非言って差し上げて下さいませ」
「うむ、ヒンナ」
フクスーナとヒンナの言葉が木霊する食卓を楽しみつつ、私はおばあさんとおじいさんにチョコレートを渡すと嬉しそうに食べてくれた。
牛乳を貰ってポッドで温める。
温まった牛乳をカップに注ぎ、小さく砕いたチョコレートを入れ、混ぜる。ミルクチョコが出来たので、全員に飲ませてあげる。
「しとり、しとり」
「ん、なに?」
「媚薬用のチョコってありますの?」
「ん、あげるね」
「キャホーウッ♪︎」
紗那にチョコをあげると嬉しそうに笑い、鯉登の口に押し込んだ。ん、いきなり食べさせたらビックリするから少しずつ食べさせるべきだね。
「(紗那は今日も元気だ)」
「紗那、私に食べるタイミングが」
「食べてくださいませ、音之進様!」
楽しそうにやり取りする紗那と鯉登の二人を見ながら、私はミルクチョコを飲み、けんちゃんを見る。お腹の赤ちゃんの事、みんなには内緒なのかな。
それなら危ないときは逃げるようにしないといけないけど。自分より弱いヒトから逃げるのは、ものすごくイヤでムカつく気がする。
あとで聞こうかな。