最も手を伸ばすのは神威の花。   作:SUN'S

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三人称視点になります。




門倉利運 序

一方、その頃────。

 

樺太にてアシパ達を追うしとり達と離れた土方歳三率いる金塊を狙う第三陣営は阿寒湖周辺の炭鉱村に身を隠していたが、土方歳三と牛山辰馬、二人との連絡は途絶えていた。

 

「へっきし!あ゛ァ、寒いぜ」

 

「大丈夫か門倉?」

 

「少し冷えただけだ」

 

阿寒湖の氷上を歩く和人とアイヌの二人組。

 

網走監獄の元看守部長を勤めていた門倉利運と、しとりから姉畑支遁の監視を請け負ったアイヌ民族のキラウシはマス漁を行う漁師や釣り人に写真を片手に土方歳三と牛山辰馬の聞き込みを続けている。

 

「こんなところで聞いて見つかるのか?」

 

「少なくとも手懸かりは見つかった」

 

キラウシの疑問に、門倉はそう言うと外套の右ポケットに仕舞っていた繭を取り出す。

 

「コイツは蚕の繭だ。さっきのぽっちゃり坊主の話しと一緒に考えて、関谷輪一郎は土方さんに二択か三択の問題を押し付けて毒か薬を飲ませたんだろう」

 

「さっきのでそこまで分かったのか!?」

 

名推理───。

 

「あ?ああ、うん、まあな」

 

が、実際は思った事を呟いているだけである。

 

「キラウシ、向こうにいるアイヌに話し聞いてきてくれ。俺はアイヌ語は分からねえんだ」

 

「任せろ」

 

氷上を滑って移動するキラウシ。

 

「さて、どうするか」

 

ポツリと門倉は呟き、顎を擦る。

 

網走監獄に看守として勤め、犬童四郎助をも欺き、土方歳三一派に入った門倉利運。そんな彼には不本意ながらも通称が存在している。

 

────「黒幕」。

 

門倉利運は中央陸軍のスパイだ。

 

そんな根も葉もない噂が拡がり、証拠を掴もうとした同僚や上司、部下は挙って潔白の証拠を得るばかり。犬童四郎助が直接問うも本人は知らぬ存ぜぬ。

 

実際、彼は中央陸軍のスパイではない。

 

ただ、妖しく見える。

 

そして、尚且つ、凶運の持ち主なのだ。

 

「(まあ、何とかなるだろう。だって、糸色先生の本に『一度口から出してしまった言葉は、もう元には戻りません。言葉は刃物ですから。使い方を間違えると、厄介な凶器になってしまうんです』*1って書いてたし。)」

 

そう、この門倉利運という男は、何となく行けると思った言葉を発すると、意外とその通りになることが多いので、思った言葉を口にしているだけなのである!

 

「門倉~、チカ貰った~」

 

「おお!こりゃあデカいのいっぱい貰ったな。旅館でこれ食いながら二人の帰りを待つ……お?なんか臭せえな?虫でも詰まってるのか?」

 

ポンとチカが丸薬が飛び出た。

 

「ん?うんこか?」

 

「門倉、それトリカブトだ!」

 

「これ食って、このチカ死んだのか」

 

いいえ、違います。

 

 

 

*1
著者「糸色ひとえ」の「母の格言」より。

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