お風呂を借りて血を洗い流し、母様の作ってくれた洗髪剤を使って髪の汚れを取り、身体に付いていた血はドクトル・バタフライの作った汚れを根こそぎ吸い取る石鹸で綺麗に整える。
ポカポカする身体を着物で包み、舞袴を履いて帯をギュッと締めると帯に母様の作ってくれた撃盤用の抱具(ホルダーと言うらしい)を留め具で固定し、足袋を履いて、雪山でも動きやすい
ショドウフォンはひとえが持っている。
乾かした髪をリボンで締める。
「よう。待ってたぞ」
「ん、何かあったの?」
ドアを開けると壁に寄り掛かって待ってくれていた剣路から視線をずらし、廊下に転がっている打撲まみれの兵隊に小首を傾げながら、剣路に問う。
けど、剣路は教えてくれなかった。
「……ねえ、私の鞄は?」
「鶴見中尉が預かってる。一応、常識ある人だから簡単に見たりはしないんじゃないか?」
そう話しながら、剣路の横を歩いて駐屯所の廊下を歩いていると部屋の病室を見かけ、杉元に落とされた男が眠っているのが見えた。
まだ、回復していないのかな。
「……尾形には近付くなよ」
「おがた、あの人?」
「そう。しとりはオレと居てくれ」
「ん、一緒に東京に帰ろう!ひとえのところに子供は預けてきたから、あと剣路は戦争に行ってたからまだ次男に会ってないでしょう?」
「……次男?ちょっと待て、どういうことだ?」
「五年前に産まれた子だよ。父様に頼んで手紙を送ったのに読んでくれてなかったの?」
スッと右手の親指を口許に近付けると、慌てた様子の剣路に手を掴まれ、ブンブンと顔を横に振って止めるように言ってくる。
木気の妖刀は雷、私の愛刀・電光丸だ。
「うぉっほん」
わざとらしい咳払いに私達は視線を向けると、額当てを着けた鶴見が私と剣路の握り合う手を見つめていた。また、ドロリとしたものが彼の身体に纏わり付く。
「夫婦円満なのは構わないが、駐屯所の風紀を乱す行為は止めたまえよ、緋村。それから野間を助けてくれた貴女に少しばかり話があるのだが、緋村も同席して構わん」
その言葉に困惑するよりも私の鞄の留め金が壊れている事実に気付き、剣路の方を見ると物凄い早さで顔を逸らすのが見えた。
剣路、またウソ吐いたの?
スッと両手の五指を口許に近付ける。
けど、すぐに剣路に邪魔されて妖刀を引き抜けない。むう、母様は無闇に抜かないように仕掛けた法式は面倒。でも、ずっと母様が私の傍に居てくれるみたいで、私はとっても嬉しい。
ひとえも母様の物を持っている。眼鏡は一回取り合いになったけど、母様の持ってた神通力を使えるひとえが持っているほうが安心できる。
「しとり、個魔のヤツに逃げる準備させとけ」
その言葉に小首を傾げながら、頷く。