何故か無傷のまま関谷輪一郎を捕まえた門倉とキラウシの二人は近くに建つ番屋に入り、関谷を尋問しようとしていたその時、地面から這い出る牛山を見つけた。
「牛山さァん!?」
「おべ、おべんちょ…」
「ダメだな。混濁してる」
そう言うと門倉は番屋を出ていこうとする牛山の肩を掴み、刺激を与えないように動き、部屋の中に誘導する。あとは土方歳三だけだ。
「関谷、土方さんは何処だ?」
「教えろ、セキヤ」
「…………」
「チッ。だんまりか。大方、俺にも薬物で二択を与えるつもりだったんだろうが、下手こいた挙げ句、黙って逃げるつもりか?」
「聞きたければ俺と勝負しろ」
「門倉、こいつはダメだぞ」
「分かってるって」
関谷の言葉に悩む門倉。
地面から這い出る牛山の事を考え、土方歳三も同様に埋まっているという事実に門倉は気付いている。が、肝心の居場所を突き止めていない。
「(思い付かん!)」
肝心のタイミングで門倉は気付かない。
「(なんかケツが寒いな?隙間風か?)」
しかし、門倉は足元に違和感を感じている
そして、他の床板より妙に湿気ている上、張り替えたような色の違い。
長年の看守としての目利き(多分、気のせい)。
脱獄を企てた人間の牢屋に良く出来る床や壁の変色に似ている(多分、気のせい!)。
「キラウシ、此処だ。俺とお前の足元だ!」
その言葉に柱に縛られていた関谷は言葉を語ることもなく居場所を突き止め、迅速に動く門倉の背中に怒りを向ける。
────貴様は、神の裁きすらも見通すか!
「昼行灯の黒幕」。門倉を影でそう呼ぶものは多く、のらりくらりと場を乱し、己の手によって盤上を自由に変えてしまう。
門倉利運とは、そういう男なのだ。
バキバキと力任せに床板が剥がされ、土が部屋の中にかき出されていき、棺桶が見えるとキラウシの短刀を借り、棺桶の蓋に穴を作り、呼吸する場所を作っていく。
「見つけましたよ、土方さん」
「すごいぞ門倉!」
キラウシ、喜ぶ。
しかし、それだけすごいことなのだ。
「………門倉か…」
「お目覚めで」
「私の刀は何処に在る?」
「え?あー、キラウシ見たか?」
「見てない!」
「関谷、何処にある!」
「とっくに調べているんだろう」
「調べたよ!」
噛み合わない。
が、会話は成立していた。
門倉の「調べた」は「調べたけど、分からなかった」という意味なのだが、はたから聞いていると「調べてもう分かっている」という風に思われるのである。
───ただの行き違い。
その事実に誰も気付いていない、土方歳三も「門倉が分かっているのなら問題ないな」と黒幕フィルター越しに思ってしまっている。