少しお腹が膨らんできた。
そろそろ気付かれるかな?と思いながら、エノノカ達と一緒に進んでいると亜港二度監獄の見える高地に橇を止めたとき、地響きめいた爆発が見えた。
「キロランケの爆弾だッ」
「急ごう!」
走り出す杉元を追うように私達も駆け出し、亜港監獄を目指して動き始める。アシリパは元気にしているのかと心配する。
オガタにも右手を撃たれた事を伝えて、怒らないといけない。
そんなことを考えながら走っていたとき、銃声が聴こえてきた。高い音に混ざって、強い獣の唸り声が聴こえてきた瞬間、半分禿げた男達が走ってきた。
「ん、半分禿げてる!」
「囚人の見分け方だろう。糸色、貴女は下がって子供達を守っていろ!」
「紗那も下がっておけ!!」
「はい!音之進様!!」
そう言って笑顔を作った紗那は背負っていた刀袋の紐を解いて、ゆっくりと黄金色に耀く長刀を引き抜き、構える。
「ん、出したね。黄金剣」
「常人に振るうには強すぎますわよ」
にっこりとまた笑い、迫る男の胴体を薙いで吹っ飛ばす紗那の動きに私も笑顔が零れる。やっぱり、前よりも強くなっている。
すごく嬉しくて楽しみだ。
「杉元!アシリパを一緒に追え!!」
「助かる!鯉登少尉も死ぬなよ!!」
「私は死なん!!」
自顕流の構えを取った鯉登の一太刀は男を唐竹から真っ二つに切り裂き、キロランケ達の事を探し始める。けど、ここにはもういない。
「シトゥリカッケマッ!メコ!」
「ん、アレは虎だよ」
そうチカパシに伝えて、私は虎を見据える。
左手だけで倒すのは容易か否か───。
斬ることは出来るけど、命を断つ一撃を見舞う事は今の身体じゃ無理だ。子供に負荷を掛けるかも知れないし、チカパシとエノノカ、ヘンケもいる。
「(右手の妖刀は使えない……紅桜を使う?)」
僅かに考え込んでいると、虎は私達に見向きもせず、逃げるように出ていってしまった。ん、使わなくて済んだのは良かったと思う。
「Отдайте багаж!」
「うるさい」
金槌を振り下ろしてきた男の首に電光丸を振り抜き、意識を刈り取った。……ん、右手で振れた?と指の間に柄を挟んだ変な握りに小首を傾げる。
「チカパシ、取れない。手伝って」
「うん!」
「私も手伝う!」
指がかじかんでいるせいか。
刀を離さない指を動かして貰っていると、紗那の「流れの握りですわね!」と叫んでいるのが聞こえてきた。「流れ」。今の指の構え方かな?
「握力の代わりに指の力を?」
いや、そんなことしたら怪我するだけだ。