「よし、行こう!」
「アシリパさん、逆方向だよ!」
「あはは、アシリパちゃん焦りすぎ」
「黙れ、白石!」
オガタを橇に乗せて引っ張りながら吹雪の止み始めた頃合いに移動を開始する。オガタの銃は壊れているし、使えない。
「しとり、大丈夫か?」
「ん、大丈夫だよ」
「しとりちゃん怪我したの?」
「怪我してないよ?悩んではいるけど」
由竹の言葉にそう返しながら剣路達の事を探すように双眼鏡を使う、目に近づける前に手の熱で温めることで数秒は問題なく使える。
「ん、見つけた」
「アッチだな!」
ドスドスと走り出す杉元を、みんなで追いかける。
「(うっ、気持ち悪さがきた)」
みんなの後ろを歩いて追いかけていたその時、吐き気を感じて海の中に吐き出す。ツワリかな?とハンカチで拭い、袖から飛び出てきた機巧人形の手が白湯を差し出してきたから、受けとり、口を濯いで素早く着替える。
「ん、清潔にするのは大事」
そう言いながら近寄るとキロランケと鯉登が戦っているのが見え、剣路と紗那の二人も一緒にいることに安堵したけど。谷垣も月島も怪我をしている。
「キロランケエェ!!」
また怒る杉元を無視し、私は怪我人を診る。
「二人とも見せて」
谷垣は打撲と刺殺傷、月島は首と身体に裂傷が幾つかある。カバンを開いて医療器具を詰めた箱を取り出し、機巧人形に谷垣の事を任せて、私は月島の首に刺さった破片を丁寧に抜いていき、簡易的な縫合を行い、血止めの軟膏を縫って身体に埋まった破片を抜く痛みに耐えてもらうために、私の右手を噛ませる。
「グッ、ブガッ、グォ…!」
「ッ、もう直ぐ終わるから我慢して」
ピンセットを使って抜き取った欠片をハンカチの上に置いて、止血剤を塗る。簡易的な物ばかりだから、ガーゼと包帯を身体に巻き付ける。
「すま、な、い」
「ん、大丈夫。死んでない」
「しとり様、手術は終わりました」
「ん、ありがとう。谷垣も大丈夫?」
「あ、ああ……大丈夫だ」
キロランケ達の方を見ると、アシリパが倒れて動かなくなったキロランケに何度も呼び掛けているのが見えた。
まだ、最後まで理由を聞いていないのに。
「しとり!どうにかしてくれ!」
「……アシリパ、それだけはやっちゃダメなことなんだよ。人はね、生き返っちゃダメなの。一度きりの、たった一度だけの人生なんだよ」
「っでも!……いや、いい、すまない」
「私も割り込めなくてごめんね」
そうアシリパの頭を撫でながら、静かにキロランケの瞼を閉じる。どこかの未来でまたアシリパに出会ってあげてほしい。