犬橇をエノノカとヘンケの家族に返し、私と剣路は樺太の豊原にいる。糸色家の迎えの船を待っているのもあるけど。北海道に姿伯父様が封じた刀を探すためだ。
「本当にあるのか?」
「あるって伯父様は言ってたよ。剣路の逆刃刀や私の無限刃と同じく新井赤空の造った殺人奇剣の一振りがあるって言ってた」
「あの人の言葉だろ?ガセネタじゃないのか」
「ん、それは私も思う」
────だけど。
姿伯父様は母様を愛していた人だから、きっと何事もなく見つかるはず。無かったらビンタして母様のお墓に謝って貰えばいい。
「で、その刀ってのは?」
「ん、光線が出る」
「絶対、新井先生の剣じゃねえだろそれ」
そうかな?と小首を傾げながら、私の真横を歩く剣路に身体を寄せる。ちょっと過保護だと思いつつも大事にしてもらえると思うだけで嬉しくなる。
ゆっくりと歩いていると見覚えのある後ろ姿と赤い鉢巻きを巻いた頭、母様の眼鏡を胸元のポケットに入れた男の人の背中に思わず、私は笑ってしまった。
「父様、お迎えに来てくれたの?」
「ッ、しと……オイ、剣路てめえ」
「ん、喧嘩しちゃダメだよ」
「お久し振りです、お義父さん」
「ああ、久しぶりだな。お前らが樺太に向かったことも撃たれたことも終わった後に聞かされたオレの気持ちは分かってるんだよなァ?」
ゴキゴキと手を鳴らす父様の手を両手で握り、ゆっくりとお腹に近付けると動きが止まった。
「……四人目か?」
「ん!」
「そうか。なら、もっと稼がねえとな」
嬉しそうに笑った父様に頭を撫でてもらう。
「オレの嫁なんだけど」
「オレの娘でもあるんだよ」
「父様、けんちゃん、喧嘩しちゃダメ」
「「分かってる」」
「心弥は許したのに、なんでけんちゃんとはいつも喧嘩腰になるの?」
「アイツはアレだ。ひとえに酷いことしねえだろ」
「したら怒るね、ん」
「殺す」
みんなで頷く、ひとえは笑顔が一番。
神通力を使えるけど。母様と父様の子供で、私の大事な妹に酷いことするヤツは許さない。心弥も北海道で剣道道場を開いているけど。
門下生、ちゃんと来てるのかな?
「ところで、なんで豊原に?」
「此方の毛皮を買いに来たんだよ。まあ、景の墓に備える此方だけにあるっていう餅も気になってな」
「お餅?」
「樺太アイヌの秘伝らしい」
お髭を触る父様の言葉を聞きつつ、エノノカやヘンケに聞いておけば良かったと残念に思いながら、また来たときに聞こうと納得する。
「剣路、変なのいるよ」
「どれだ?」
「何もいないぞ?」
「…そう?」
気のせいだったのかな?