狙撃は止まった。
「よし、行くぞ!」
ドタバタと走り出すみんなを見送ろうとしたら剣路も走り出してしまった。父様は「アイツら、なにしてるんだ?」と不思議そうにしている。
ん、そういえば話してなかったね。
「宝探ししてるんだよ」
「軍人も一緒にか?」
「ん」
「景に似て面倒に巻き込まれてるなあ」
母様は自分から行っているようにも見えたけど。やっぱり巻き込まれてたんだね。私も気を付けよう。冒険はやめないし、世界は見てみたいからね。
あとで父様にも教えてあげよう。
けんちゃんはお義父様に教えたりしないだろうし、私か父様が教えてあげないと、けんちゃんは近況報告なんて全くしない。
「お義母様には連絡してるのにね」
「かかあ天下だな」
そう言いながら父様と一緒に杉元とオガタのいるであろう部屋に入るとロシア人がいた。初めて見る人だと小首を傾げながら、みんなを見る。
「しとり、コンニャクくれ」
「ん、どうぞ」
みんなに翻訳コンニャクを渡すとロシア語を喋り始める。やっぱり母様の発明品は偉大だと感心し、ヴァシリ・パヴリチェンコと名前を書く彼もロシア語で話して貰えて楽しそうだ。
「フンフン」
「? 私が何かしたの?」
サラサラと絵を描くパヴリチェンコ。
「『銃を撃つ自分』と『弾を斬る私』?」
「フンフン!」
「また勝負したいってこと?」
「フンフン!!」
「ん、ダメだね。私のお腹、赤ちゃんがいるから銃弾を受けたりしたくない」
「!? フンフン!!」
赤ちゃんがいることを伝えたら、慌てて頭を下げてくるパヴリチェンコに苦笑いを浮かべてしまう。遠目から見ると、着物は分かりづらいかな。
「ん、私の夫の剣路も出来るよ。ちなみに貴方の探しているオガタは、此方の杉元を狙っているからね。着いていっちゃダメだよ?」
「いや、それ着いていかせようとしてるよね?しとりさん」
「杉元、狙撃手相手だ。コイツも相手の居場所を察知する事は出来るはずだ」
剣路も私の言葉に続ける。
杉元もその言い分は分かるのか。すごく不服そうに納得してくれたけど。あんまり素直には頷けないって顔をしている。
「ところで、由竹。そのお米は?」
「ああ、口揉み餅を」
「お餅?」
「馬鹿者、白石!華族の女性に対し、あの様にハレンチなことをさせるつもりか!?」
「音之進様、アレはアイヌの伝統ですわ」
みんなで何を話しているんだろうかと困惑しつつ、私は月島の事を見ると目がまた荒んでいた。やっぱり、なにかあったのだろう。
あとで聞いてあげよう。