「誰か助けてぇえ!!」
砂金の夢を諦めていない杉元と由竹に付き合って移動していたその時、悲鳴と雪の崩れる音が聞こえ、上を見上げると男が宙吊りになっていた。
木の根を掴んで耐えている。
「あ、落ちてきた」
「見てる場合か!」
剣路は地面を蹴って飛び上がると落下していた男の人を受け止め、岩肌に刀を突き立て、地面に激突する事は防いだものの、刀は成人した男二人の体重を支えきれず、ギィンッ…!と音を立ててへし折れた。
「……チッ。オッサンも気絶してやがるな」
「剣路、刀どうするの?」
「逆刃刀がある」
そう言うと剣路は折れた刀を腰から引き抜いた鞘に納め、抜けないように鍔と鞘を紐で縛り、また腰に佩いて気絶している男の人を見下ろす。
「頭に傷があるな」
「おーい!剣路、しとりさん!大丈夫か!」
「ヒグマのオソマ踏んだのか!剣路ニシパ!」
「いや、オソマは踏んでねえよ」
由竹がいないな?と思ったら私のカバンを開けてチョコレートを取り出しているのが見え、私の傍に仕える忍者が現れ、由竹の事を殴ってカバンを綺麗に拭いて、私のところに来てくれた。
「ん、ありがとう」
「忍者だ」
「今のがニンジャなのか!」
ワクワクするアシリパに剣路が「しとりの家はでかいし、古いから色々な繋がりがあるんだよ。オレも知らないことあるし」と答えていた。
ん、そんなに難しいものはないよ。
「剣路、起きたら伝えるのか?」
「...そうだな。長靴履いてるし、砂金採りに来ているのは間違いないんだろうが、どうにも怪しさを感じるというか。コイツから人以外の気配がする」
「ん、狐憑きに近い状態だね。身体に深く絡まっているせいか、生成りに近いと思う」
「なまなり?」
「妖怪や悪霊の取り憑かれた人間が、妖怪に近付いている状態の事だよ。けんちゃんも再会したときは外道落ちしそうだったから」
外道落ち。
妖怪や悪霊とは違う。
人のままアヤカシに転じる事を示す言葉だけど、昔の不破信二は半分くらい身体がアヤカシになっていたのに力で捩じ伏せたそうだ。
ん、やっぱり信二は強くておかしい。
「で、どうするんだ?」
「祓うのは無理だね」
普通の狐憑きや狗神憑きなら形式に則って相手を変えて、供養することは出来るけど。この男は、自分の身体で妖怪を育てている始末だ。
本当に迷惑千万すぎる。
「うぅ、えお?」
「ん、起きた?」
「て、天女……?」
「分かる。オレの女は天女だ」
ん、私が綺麗で可愛いのは分かってるよ。
ひとえも可愛くて綺麗だから見惚れるよ。
けど、私はけんちゃんの奥さんだよ。