「ウェンカムイ?」
「そうです。もう何年も何年も何年もずっと私の事を狙って追いかけているんです」
平太の言葉に小首を傾げる。
そういうことなら姉畑に会わせてしまえば、問題なく終わるんじゃないかな?と考えつつ、またヒグマの事を話し始める平太は「たかにい」と呟き、ヒグマの毛皮を担いで何処かに行ってしまった。
「ん、
「ばさか?」
「狂った戦士のこと」
剣路にそう伝えると納得したけど。
どう見ても平太は戦士じゃなくて、砂金採りに来ているだけの普通の人間だ。ただ、アイツの口から人の血肉の臭いがした。
おそらく人を食べている。
「ねえ、けんちゃん」
「なんだ?」
「人って美味しいのかな」
「......少なくともお前は美味い」
「? どこも食べられていないよ?」
「そう思うのはお前だけだ」
どこを食べられたんだろうと不思議に思いながら、剣路の腕に掴まって歩いていると、平太の叫び声が聞こえてきた。ヒグマが出たのかと周囲を見渡す。
────だけど、ヒグマは見えない。
「止まれ」
「ヴオオオオオォォォォォッ!!!!」
「ん、すごい大迫力だね」
此方に向かってきた平太の顎を鞘で殴り、脳みそを揺らして素早く木の上に飛び乗る。木の幹を殴って私の事を落とそうとする平太の背中に片腕の折れた杉元が銃剣を突き立て、剣路も刀の鞘で平太の事を殴り、私の傍から引き剥がすと私を見上げてきた。
「しとり、電光丸を貸してくれ」
「いいけど。危ないよ?」
そう言って私は、腰に佩いていた電光丸を剣路に向かって投げ渡すと電光丸は怒ったように放電し、剣路は雷よりも早く平太の頭を殴り落とし、電光丸を鞘に納めた。
「じゃじゃ馬が」
すごく不満げに刀を投げ返してきたけんちゃんに「妖刀はそういうものだよ」と告げつつ、左腰に電光丸を差してようやく安心できる。
「それよりコイツだ。毛皮を被るなり、いきなり襲ってきた」
「ヒグマの毛皮を外しておいて。アシリパ、杉元の左腕の固定と添え木を用意してくれる?こんなに綺麗に折るなんて凄い腕力だね」
そう話しながら平太の身体を怯えながら縛る由竹とけんちゃんを応援しつつ、骨の継ぎ目を見極めて、骨折した場所を固定する。素早く包帯を巻いて三角巾の代わりに杉元は着物の内側に腕を納めている。
少し肩は不格好になるけど。
我慢してね。
「ありがとう、しとりさん」
「ん、大丈夫だよ。あと顔が近いかな」
「首を切り落としてやろうか」
「けんちゃん、杉元は怪我してるからね」
ちゃんと治ってから喧嘩して。