三週間が経過し、また移動する。
平太の刺青人皮を鞣して乾燥させた杉元は紙で皮を包み、雑嚢に押し込んでしまった。あれを私のカバンに入れようとか言われたけど。
汚れるのはイヤだから拒否しておいた。
しかし、困った。
お腹が大きくなってきたから戦えないし、みんなの足を引っ張っている。どこかで隠れて気長にみんなの事を待つべきなんだろうけど。
どこに隠れても難しい。
モグモグとチョコレートを食べるアシリパ。餌付けしすぎたかな?と思いながら、彼女の頭を優しく撫でてあげる。
サポみたいだと言われるけど。
サポってなに?
「ん、けんちゃん暑苦しい」
「町に着くまで我慢しろ」
即席の橇を用意してくれた剣路に苦言を言いつつ、馬に引いて貰っていると杉元の姿が消えた。また、どこかに行っているのかと小首を傾げる。
けど。杉元だから問題ないはずだ。
確かにちょっと大変だろうけど。
「ん、コンクフード渡したばっかりだった」
1ヶ月分の量だけど、足りるかな。
そんなことを考えながら、大きくなったお腹を撫でる。ん、もうすぐ生まれる予感がする。支笏湖の砂金から調べて、空知川に来ている。
札幌の近くだから病院に行けると言えば行ける。あとでけんちゃんと一緒に札幌の病院に行って、忍びに警護を頼むしか方法はないかな。
「アシリパ、少し先に行くね」
「わかった。剣路ニシパ、赤ちゃん守るんだぞ!」
「当たり前だ」
「ん、今は頼りにしてる」
そう言って私は橇を降りて、手綱を持つ剣路の足の間に座り、背中を剣路の胸に押し付ける。寒いからこうしておけば暖かくて赤ちゃんも安心できる。
ザクザクと雪の上を踏みつけて、歩く馬の足音を聞き、のんびりと街を目指す。札幌に着いたら、お風呂に入って病院に行こう。
札幌の街が見えたとき、イヤな気配がした。
嗅いだ記憶のある、イヤな気配だ。
「リッパー?」
「どうかしたのか?しとり」
「ううん、なんでもない」
気のせいだと思うけど。
イギリスで見た記憶のある、あの変なフランケンシュタインのことを思い出す。死んだから死んでも忘れられない存在になると言っていた。
あのいきものはなんなんだろうね。
「しとり、苦しくないか?」
「平気だよ、耳元で話すのはくすぐったい」
「...さっきの話し。札幌になにかいるのか?」
「......ん、昔に会った悪いヤツの気配だけど。すぐに消えたから気のせいだと思う…けど、やっぱり怪しいから周りは警戒していたほうがいい」
リッパーは、すごくうるさかったから。