最も手を伸ばすのは神威の花。   作:SUN'S

138 / 139
熊の平太 急

三週間が経過し、また移動する。

 

平太の刺青人皮を鞣して乾燥させた杉元は紙で皮を包み、雑嚢に押し込んでしまった。あれを私のカバンに入れようとか言われたけど。

 

汚れるのはイヤだから拒否しておいた。

 

しかし、困った。

 

お腹が大きくなってきたから戦えないし、みんなの足を引っ張っている。どこかで隠れて気長にみんなの事を待つべきなんだろうけど。

 

どこに隠れても難しい。

 

モグモグとチョコレートを食べるアシパ。餌付けしすぎたかな?と思いながら、彼女の頭を優しく撫でてあげる。

 

サポみたいだと言われるけど。

 

サポってなに?

 

「ん、けんちゃん暑苦しい」

 

「町に着くまで我慢しろ」

 

即席の橇を用意してくれた剣路に苦言を言いつつ、馬に引いて貰っていると杉元の姿が消えた。また、どこかに行っているのかと小首を傾げる。

 

けど。杉元だから問題ないはずだ。

 

確かにちょっと大変だろうけど。

 

「ん、コンクフード渡したばっかりだった」

 

1ヶ月分の量だけど、足りるかな。

 

そんなことを考えながら、大きくなったお腹を撫でる。ん、もうすぐ生まれる予感がする。支笏湖の砂金から調べて、空知川に来ている。

 

札幌の近くだから病院に行けると言えば行ける。あとでけんちゃんと一緒に札幌の病院に行って、忍びに警護を頼むしか方法はないかな。

 

「アシパ、少し先に行くね」

 

「わかった。剣路ニシパ、赤ちゃん守るんだぞ!」

 

「当たり前だ」

 

「ん、今は頼りにしてる」

 

そう言って私は橇を降りて、手綱を持つ剣路の足の間に座り、背中を剣路の胸に押し付ける。寒いからこうしておけば暖かくて赤ちゃんも安心できる。

 

ザクザクと雪の上を踏みつけて、歩く馬の足音を聞き、のんびりと街を目指す。札幌に着いたら、お風呂に入って病院に行こう。

 

札幌の街が見えたとき、イヤな気配がした。

 

嗅いだ記憶のある、イヤな気配だ。

 

「リッパー?」

 

「どうかしたのか?しとり」

 

「ううん、なんでもない」

 

気のせいだと思うけど。

 

イギリスで見た記憶のある、あの変なフランケンシュタインのことを思い出す。死んだから死んでも忘れられない存在になると言っていた。

 

あのいきものはなんなんだろうね。

 

「しとり、苦しくないか?」

 

「平気だよ、耳元で話すのはくすぐったい」

 

「...さっきの話し。札幌になにかいるのか?」

 

「......ん、昔に会った悪いヤツの気配だけど。すぐに消えたから気のせいだと思う…けど、やっぱり怪しいから周りは警戒していたほうがいい」

 

リッパーは、すごくうるさかったから。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。