一週間が経過しても、ベッドの上にいる。
1ヶ月か1ヶ月半は絶対に安静なんだよ。母様はひとえを出産して、5ヶ月はベッドの上で寝たきりだったけど。頑張ってリハビリしていたのを覚えている。
「ん、久しぶり」
「阿呆が。敵地のど真ん中だぞ」
「大丈夫だよ。強いからね」
「今のお前は死にかけだ。母親の事を近くで一番見ていたのはお前だろう。しとり」
斎藤の言葉は正論だ。
────だけど。今、私が聞きたくて仕方ない。好きな言葉は「赤ちゃんかわいい」と「元気な子供だな。おめでとう」の二種類だけだ。
「......だが、よく生きていた。お前が撃たれたと聞いたときは焦ったぞ」
「ん、大丈夫だよ。それに斎藤のおじ様が教えてくれた牙突と鷲塚の教えてくれた狼牙を極める、良いタイミングになるんじゃない?」
そう言って微笑みを向けると、深くて重たい溜め息を吐く斎藤に思わず、私は小首を傾げる。
「それとお前に伝えておくが不用意に出るなよ。今の弱った身体で出来ることはない」
「ん」
「それから、その坊主も長男のように成長したら俺が剣を教えてやる」
「フフ、ありがとう」
「阿呆が。お礼を言うことか」
それでも、ありがとう。
「で、お前の馬鹿な男は何処だ?」
「けんちゃんは刈羽君とオガタを見つけたから走っていったよ?」
赤ちゃんにミルクを飲ませてあげていると、「お前は本当に羞恥心が足りていないな!」と怒気を込めた言葉が向けられた。
「私の身体に恥じるところはないよ?」
「……ナルシストというものか?」
「違うよ。私は自分の努力して手に入れた身体を恥じるなんて酷いことをしないだけ。顔は世界で一番可愛くて綺麗だと思っているのは事実だけど」
「糸色に足りなかった自信の在り方だな」
「母様は恥ずかしがり屋さんなんだよ」
「あれが?ダイナマイトを作って船を破壊するようなヤツが恥ずかしがり屋なわけないだろう」
? 何を言っているんだろう?
「────ッ、おじ様、イヤな気配がした」
「切り裂き犯の気配か……つくづくお前達は良くないものを感じ取りやすいな。小樽にいるひとえに伝えておけ、夜間に出歩くな」
そう言い残して部屋を出ていく斎藤を見送りつつ、イヤな気配が広がっている。ずっと昔に嗅いだことのあるムカつく臭いがする。
ジャック・ザ・リッパー。
父様と戦っているところを見たけど。目付きの悪いお兄さんが一緒にいた気がする。電光丸もあの時ぐらいから使えるようになっていた。
地獄門。
おそらく、此方に来ているのかな?
そう考えるのが、妥当だけど。絃を産んだばかりの身体で黄泉還りを倒せるのか分からない。