最も手を伸ばすのは神威の花。   作:SUN'S

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三人称視点になります。

火災より少し時間は遡ります。

黒幕の門倉さんです。


ビール工場の火災 破

一方その頃、札幌ビール工場付近────。

 

切り裂きジャック(ジャック・ザ・リッパー)の模倣犯マイケル・オストログの刺青を確保するため、門倉利運は娼婦に扮し、件の殺人鬼を誘き出す囮役の一人を務めてていた。

 

わざと腰を曲げ、小柄な女性を演じる姿をキラウシと牛山辰馬は感心しながら、いつでも合図を送るタイミングを見計らっていたその時、彼の近くに人影が見える。

 

───宇佐美時重。

 

鶴見中尉に狂愛を捧げる上等兵が、千切れた地図を片手に歩いてきた。

 

「こんばんは、少し良いですか?」

 

「(いいわけねえだろッ!?)」

 

マッチの火を片手に話し掛ける宇佐美に門倉は顔を隠しつつ、逃げようと駆け出すも女装に慣れておらず、地面に眠るように倒れ込む。

 

───と、同時に宇佐美の腕を蹴り上げる(・・・・・・・・・・・・・・・・)

 

「ッと、何するんだこの女ッー!?……え、門倉看守部長!なんと中央に見捨てられたのですね、お労しい男娼に身を窶していたなんて!!ウハァーッ!!」

 

狂喜燦々の笑顔を向け、手を差し出す宇佐美の手を門倉は慌てて払いのけ、偶然にも歩兵銃の負い紐を弾き、歩兵銃を遠くに追いやった。

 

「きゃああぁあぁぁっ!!?」

 

「えっ、いきなり、ああ、土方歳三と結託していたんですから近くに味方がラアッ!」

 

「ホウ」

 

振り向き様に拳を振り抜く宇佐美の右こぶしを受け、感心する牛山は片袖と襟首を掴み、取っ組み、地面を踏み締めると宇佐美を真横に投げる。

 

「キラウシぃ!」

 

花火の炸裂する音と闇夜を照らす光の最中、門倉は走り出した。牛山とキラウシも同時に走り出し、門倉とは別方向に逃げる。

 

「待ってくださいよ、門倉看守部長~!」

 

「(なんで俺を追うんだよ!?)」

 

慌ててビール工場に逃げ込む門倉を追い、宇佐美もビール工場の中へと入っていった刹那、門倉の脱ぎ捨てた着物が足に絡まり、地面に倒れ、額をドアノブにぶつけ、肉が裂けて出血する。

 

「えひぁ!!」

 

鈍い音に門倉は驚くも階段を駆け上がる。

 

が、すぐにバテて嗚咽する。

 

「や、痩せるべきだな、うん」

 

「ようやく追い付きましたよ、門倉看守部長」

 

「う、宇佐美!クソ、あれでも気絶しないのか!」

 

その言葉に、宇佐美は「やはり全て計算して罠を仕掛けているのか」と警戒心を高めた瞬間、ずるりと階段を駆け上がっていた門倉が転び、宇佐美の顔面にお尻を叩きつけるように落下した。

 

ゴヅッンッ……!

 

「に、逃げよ」

 

またしても宇佐美は門倉の策略に嵌まり、鶴見中尉とは離れた場所で意識を失っていた。

 

 

 

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