「しとり、逃げるぞ!」
「ん、行こう」
馬を操って私の事を迎えに来てくれた剣路の手を取り、黄泉還りの新撰組を率いて第七師団の兵士達を蹴散らし、斬り伏せ、吼える土方達に混ざり、刈羽君はひたすらに前へと突き進んでいく。
子供の頃に二回だけ剣を交えた。
たったそれだけで、たまに遊んだりしていた男の子の姿を見据えて私は直ぐに視線を剣路に戻す。私の目的はお墓参りだけだったけど。
剣路の目的は変わっている。
オガタを捕まえて、殺す気だ。
私の剣士としての右手を奪ったオガタを許していないのは知っていたけど。ここまで執着しているなんて想像していなかった。
花沢勇作。
剣路や杉元に聞いたけど、恵まれて育った子供にオガタは羨望と憎悪を同時に向けている。私を狙っていたのも見ていたのも私と剣路が喧嘩しない、おしどり夫婦だったからなのかも知れない。
元気に楽しく子供の行く末を見て、自分の受けることの出来なかった愛情をいっぱい注いであげればいいのに、それもしなかった。
「あの列車に乗り込んでるよ」
「第七師団が乗ってるだろ、あれ」
「……ん、オガタの気配がした」
私の言葉に剣路の意識は列車から外れる最中、一緒に馬から列車に飛び移って、列車の中に入ると第七師団の兵士達の死体だらけだった。
「杉元達の仕業だな。しとり、お前はオレの後ろにいてくれ、塹壕での戦いに慣れてねえだろ」
「狭いところ苦手だけど。狭いところだからって戦えないわけじゃないよ?」
「違う。死体を見せたくないだけだ」
そう言うと剣路は次々と列車の車両を進んでいたそのとき、列車がものすごく揺れ、そちらを見る。毛皮に変な模様が見えた。
ここからだと煙が邪魔になるかな。
そんなことを考えていると悲鳴が聴こえてきた。ヒグマの雄叫びが聴こえたけど、どこかで聞き覚えのある声にも聴こえてきた。
「女神のために私は戦いますよぉーーーーーっ!!」
「ん、姉畑も来たんだね」
「ツガイで来やがったのかよ」
「けど、助けに来てくれたね」
私が笑顔を向けると「まあ、そうだな」と剣路は呆れながらも笑ってくれた。とりあえず、私に出来ることは出来るようにする。
それにしても、ヒグマが三びきも来たね。
「杉元達も死なねえか、あれ?」
「大丈夫だよ。由竹も笠原も頑張ってるよ」
剣路はみんなを信じているけど。あまり無茶してほしくないから、いつもぶっきらぼうに答えている。子供にはあんなに優しくしてくれるのに不思議で仕方ない。
けど、けんちゃんのそういうところも好きだよ。